手分けして追撃しよう
「呪詛販売サイトの捜査はどうなりました?」
帰宅した私たちは早速田端氏に電話してせっついてみる事にした。
『サイトの運営者を特定する為に捜査中ですが、プロバイダーの方に提出された住所は架空のものだったので逃げられない様にまだサイトを閉鎖させてはいません』
と言うのが田端氏の解答だった。
まあ、ウェブサイトに載せてある住所が本物かなんてプロバイダーは調査しないんだろうねぇ。
大体、プロバイダーが海外の企業だったら閉鎖申請の手続きも面倒そうだ。
呪詛関連だから即座に閉鎖してくれって海外の企業に要求しても通るのかね?
まあ、違法な商品(?)を売り出しているって警察が申請したら後で裁判所に異議の申し立てをされて取り消される危険はあるにしても、即座に閉鎖出来るのかも?
そこら辺は一般市民の保護と当局側の権力の濫用や検閲防止に関するスタンスによってプロバイダーの対応が違うのかもだね。
それはさておき。
「ちなみに、私たちが通っている大学でかなり流行っている様ですけど、他にどこが集中的に被害者が出ているか、分かりますか?」
まだ運営者を特定出来てないならあまり何も分からないかもだけど。
ある意味、人海戦略で大学とか駅とか、被害者が多い場所を確認したらどう言うルートで運営グループが情報を流しているかを確認出来るのかも? 被害者を見分けるのに特殊技能が必要なところが難易度を上げてるだろうけど。
単にサイトを作っただけではお金を取る怪しいオカルトサイトがそうそう流行りはしないだろう。
何処かのSNSやサークルなんかでサクラが情報を拡散していなければ有料なサイトにお金を払おうとする人はあまり居ない筈だし、サクラが雇われたならそこから運営者の方へ伝っていける筈だよね?
『大学や高校で情報が拡散しつつある様ですが、被害者が多いのは関東ですと六大学や国立大学が多い様ですね』
へぇぇ。
二流大学よりも一流大学の方が呪詛を欲しがる人が多いんだ? まあ、六大学って言っても古いだけで一流と言うのかどうか、微妙なのも含まれている気もするが。
高校生は資金的自由が少ないせいでそこまで流行っていないのかもだけど、大学に関しては却って良い大学に入る様な頑張る人が、嫉妬とかライバル心で軽い呪詛を周囲の人間に掛けたくなるのかね?
人を呪うと返ってきたら倍なんだよ?
相手を貶める行為をするよりも、自分で頑張って己を高める方が良いと思うよ〜?
大学生になるとバイトも色々とし易くなるから資金的余裕が出来てついイラっとした思いを気軽に呪詛で晴らしているのかもだが。
今回は倍返しの半分が運営者に行くからちょっとはマシだけど、自分が呪った効果が戻ってくるのだ。今後苦労するだろうね。
しかも一人じゃなくて複数に呪詛を掛けてたら、それらが混ざり合って効果が高まりそうだし。
まあ、有名大学出だと就職した際に昇進も早い可能性があるから、安易に呪詛なんぞ使う人間はここで躓いておく方が世の為人の為になるのかもだけど。
「ちなみに、弱いながらも複数の呪詛が重なると変質した瘴気を垂れ流すみたいなんですよ。それが碧に頭痛を齎したので、あのサイトを運営している集団に白龍さまが天罰を下せました。
天罰によって呪詛が返った際の倍返しの半分が運営集団の方に行く事になったので、犯人達の目処が付いた場合は体調が悪そうとか変な行動をしているっぽい人はグループの仲間である可能性が高いかもです」
田端氏に伝えておく。
うちの大学の被害者からの呪詛返しだけでどの程度効果があるかは不明だけど。
先日の受験会場に碧が設置した浄化結界は流石にもう無くなっちゃってるんだろうなぁ。
『参考にさせて頂きますね』
田端氏が言い、呪詛に関して二、三点聞かれた後に通話が終わった。
「よし、都内の残りの六大学とこないだの国立を回って、浄化結界を追加で設置してこよう!」
碧が立ち上がって拳を握りながら言った。
どうやらあの呪詛を薄利多売するサイトがかなり許し難い様だ。
「取り敢えず、こないだの国立と池袋のは私が行くよ。
浄化結界を設置し終わってまだ魔力に余裕があったらもう一つぐらいやれるかも?
と言うか、考えてみたらどの大学もキャンパスが二つか三つあるけど、都内の一番便利なところだけで良いよね?」
郊外とか駅から遠い不便なキャンパスの方が土地が安いお陰で大きいだろうけど、生徒の人口密度的には便利なキャンパスでの授業に人が集まりやすいと期待しよう。
大きなキャンパスじゃ出入り口も沢山ありそうだし。
「そうね。
まずはやれる範囲でやっていこう。
そのくらいできっと運営者達に返る呪詛が十分に蓄積して身動き取れない様になるでしょ」
にっこり笑いながら碧が言った。
どんな感じになるのか、犯人が捕まった後に田端氏に教えてもらえるかな?