ヤバいサイト?
「あれ?」
新学期が始まり、今年受ける講義を決める為に大学に来たのだが、何か違和感を感じる。
……なんだろう?
普段よりも明らかに構内を歩いている学生数が多いと言うのはあるが、毎年4月はそうなのだ。
いい加減慣れている筈。
ちょっと目を細めて周囲を見回し、何に違和感を感じたのか思い出そうとする。
目の前を歩く若い女性が目に入る。
薄っすらと弱い呪詛が頭の周りに漂っている。
周囲を改めて見直したら、呪詛の黒い煙っぽい瘴気が取り憑いている学生が妙に多いのに気付いた。
極弱い、普通に当たりな神社へ初詣に行く程度でも返せそうな程度だが、呪詛ではある。
普段から妬みや執着や憎悪の対象にされたり、本人がそう言う感情に囚われていて瘴気塗れになっている人はそこそこ居るのだが、呪詛を掛けられている学生というのはそう多くは無い。
普通なら。
社会人も含む電車とかラッシュアワーに駅を歩いている人を確認したってそこまで多く無いし、学生だったらもっと減る。
そう考えると、先日悪霊探しに行った一流大学の受験生や学生は呪われている人は多かったかも?
そして今、見回した構内にいる生徒の中での被呪詛率が……妙に高い。
去年の新学期はここまで酷くなかったと思う。
呪師は減ってる筈だと思っていたんだけど。
と言うか、なんかかなり薄くて弱っちい呪詛だから呪師が掛けた本格的な呪いと言うよりも、素人が何処かでやり方を知って試した系?
一体何が起きているんだろうと思いつつ、取ろうと思って確認に来た講義の教室に入る。
最近は授業もオンラインより実際に受けに来る事を大学側が推奨する様になったし、なんと言っても実際に教室に来ないと知り合いが同じ講義を受けているかも分からない。
ノートの融通なんかの為にも知り合いがいる方が望ましいので、教室を見回していたら後ろから声を掛けられた。
「あ、お久しぶり〜。
凛もこの講義を受けるの?」
去年他の講義で一緒になった横山萌だ。
しかも薄っすら呪詛付き。
どんな呪いを掛けられているのか、丁度いいから確認しよう。
「お久しぶり〜。
そう、面白そうかなって思って。
萌も?」
流石にここで何か体調不良があるかは問い詰められないし、突然手を取ったり肩に触れたりして呪詛を調べる訳にも行かないから、ランチにでも誘うかな。
「そ〜言えばさ、最近なんかヤバいオカルトサイトが流行ってるって話、聞いた?」
適当に空いていた席に座ったところで、萌が隣に座ってノートを取り出しながら聞いてきた。
「オカルトサイト?
聞いて無い〜。どうヤバいの?」
オカルトサイトなんて単なる悪趣味な詐欺だと思っていたが、怪しいウェブサイトでクリックさせる事で呪詛返し転嫁を承認扱いさせて成立させちゃうようなサイトもあったらしいのだ。
それは流石に潰されただろうが、似た様なのがあっても不思議はない。
「なんかねぇ、現代版不幸の手紙というか、呪いを送る方法を教えますっていうサイトらしい」
マジか。
いや、詐欺サイトだって山ほどあるだろうから、関係ないかもだけど。だが今日見た妙に多い呪詛被害者の数ってそのサイトのせい??
「萌もそのサイトを見た事あるの?」
「いや、噂で聞いただけだからね〜。
オカルトなんて信じてないし、実際にあるとしてもヤバい廃病院とかならまだしもウェブサイト経由っていうのはあり得ないでしょ」
あっさり萌が返す。
「その噂って誰から聞いたの?」
まあ、萌を呪った本人がそのサイトの事を萌に言ったとは思えないが。
そうだとしたらアホ過ぎる。まあ、愚かな人間だからこそ安易に呪詛を試そうとしたのかもだが。
「恭輔だったっけ?
いや、恭輔と一緒にいたサークルの知り合いとかいう女性だったわ」
ちょっと考えながら萌が答えた。
恭輔って確か萌の幼馴染で、半ばボーイフレンドっぽい関係の相手だった筈。
公式にはボーイフレンドじゃないせいか、時々他の女性も一緒な場面で萌と会っているらしいんだよねぇ。
女たらしなのか、押しの強い肉食系女子の扱いが下手なのか。
萌の話だと微妙にボーイフレンド的な独占欲っぽい行動を取ってくるらしいのだから、もっとまともに女性関係の管理をしろよと思うのだが、相談されている訳でもないので口出しはしていない。
と言うか、こう言う場合って相談されたところで上手くいく可能性は低そうだから、何を言っても泥沼だよねぇ。
私としては、そんな男はさっさと見捨てればと思っているんだけど。
まあ、萌自身ももっと良い男が居たら乗り換えたいと思っているっぽい行動を取る時もあるので、どっちもどっちなのかな?
どちらにせよ。その女性って言うのが怪しい気がするけど、萌自身が呪詛を信じてないしとなると掘り下げるのも難しそうだなぁ。
呪詛その物の解明も出来てないし。
ランチで何とか出来ないか。頑張ろう。