因果応報を狙いたい
「碧ったら意外と英語が得意なんだね」
ジェームス達と分かれて帰りながら碧に言った。
最後のキャロルとの言い合いでジェームスが言ったセリフ、理解していたっぽい。
私は何かがgoodだとしか聞き取れなかったが、多分あれってその後の碧の言葉から推測するに碧の為なんだって主張したんだろうね。
「昔は白龍さまの背中に乗って海外旅行しよう!と思ってそれなりに熱心に英語の勉強してたからね〜。
密入国が不味いと分かった頃に、海外へ行ったらそのまま拘束されて帰れなくなる可能性が高そうとも理解したから、海外旅行の夢は捨てたけど。でも折角だから語学の勉強はそのまま続けて海外ドラマとかを見るのに活用してきたの」
改札で携帯を翳して出ながら碧が答えた。
白龍さまの背中に乗って海外旅行かぁ。
「コンテナハウスとかを買って、白龍さまにそれを掴んで飛んでもらうのって出来ないかな?
そうしたら源之助のベッドやトイレや私らのベッドごと北海道とかまでも旅行に行けそう」
やっぱキャンピングカーで北海道まで運転するのはちょっと厳しそうだから、丸ごと空を飛べたらそれが一番理想的だよね。
『まあ、不可能では無いが……空を飛んでいる飛行機などが衝突しない様に管理している奴らが驚くのでは無いかの?』
白龍さまがふわっと現れて指摘した。
あ〜。
確かに?
幻獣である白龍さまはレーダーとかに映らないかもだけど、金属で出来てるコンテナハウスだったら確実に何かにひっかりそう。
そうじゃ無くても、多分目立つよねぇ。
今だったら空港とか飛行機の空路の側に寄らなくても、衛星からの画像にふらふら浮いているコンテナが写ってどこかの情報局とかがあわてて軍のスクランブル発動(発進?)を引き起こしそう。
戦闘機と龍との戦いに興味がないとは言わないけど、それはやらない方が良い争いだよね。
白龍さまだって、それなりに重いコンテナハウスを動かしている上にそれまで隠蔽しなきゃならないとしたら、ちょっと魔力消費量が多くなり過ぎて辛そうだし。
「風の抵抗とかも凄いから、辞めた方が良いよ。
白龍さまに乗せてもらった事があるけど、空気抵抗が凄かったし、それを消そうと力をこめてもらったらペシャンコになるかと思ったしで中々コントロールが難しかったみたいだから」
碧が教えてくれた。
やっぱ飛んではみたんだ?!
良いなぁ〜。
でも確かに、上空でつるりとした龍に捕まって飛ぶのは怖そうだな。
落ちない様になんとか固定はしたんだろうけど。
「それはさておき。
あのジェームスは黒魔術師の適性持ちだね。
さっきもさらっと私の感情を読もうとしていたから、碧の事も読もうとしていると思うよ。
流石に洗脳とか露骨な意思誘導をやる程アホでは無いと思うけど」
碧が国を出るなんて言い出したら、その前に絶対退魔協会からチェックが入るだろう。
そうなった時に変な力の痕跡があったら大問題だ。
だからこそ、金や栄誉で釣ろうとしていたんだろうし。
「私が危機感を感じるぐらいに真面目に脅してくるとか、意思を曲げるぐらいな強度で意思誘導を使おうとしてくれたら天罰であいつとその上をなんとか出来るのにねぇ。
相手が良識を持って行動している事が、本当に残念だわ〜」
碧が溜め息を吐いた。
「万が一、ジェームスがうっかり天罰デフェンスを引き起こすぐらいバカだった場合、どんな天罰を頼む?
ジェームス本人はどうでも良いけど、もしもマジであの国のトップが関与しているなら折角のこの機会は有効利用したいなぁ」
どうせだったら大統領選挙の前であれば、それこそ当選できない様に自爆する様な天罰を頼めたんだけどねぇ。
まあ、大統領選挙に勝ってなきゃ中国からアメリカの情報機関が抜き取った情報へアクセス出来なかっただろうしジェームスを寄越す権限も無かったと思うから、嘆いてもしょうがないけど。
「う〜ん……。
嘘をつけない様にするって言うのもアレ相手じゃ大して効果は無さそうだよねぇ」
碧が悩ましげに首を傾げる。
国にトップとしてはあるまじき事に、行き当たりばったりに思いついた事を言っているっぽいから嘘をつけなくしてもあまり行動に変化がない可能性がそこそこ高そうなんだよねぇ。
「こう、法令違反が全てメディアにバレちゃう様な天罰ってないのかな?」
色々と法を無視した行動をしていそうだから、そう言うのが全部公になったら大問題になって少しは行動に制約が掛からないかね?
『本人が法律違反だと分かって行動をしている場合にそれがバレる様にするのは可能じゃが、大丈夫だと確信していたり、知らずに犯している法律違反は儂にも把握のしようがないからのう』
白龍さまが困った様に言った。
確かに。
しかもあっちってなんか色々と揉めてるけど全部裁判所に訴えているっぽいから、法律に反しているかすらはっきりと白と黒に判別出来ない気もしないでもないからなぁ。
それの見極めは、幾ら神様だとしても白龍さまには難しいか。
「人に苦しみを与えたら、それが同じだけ返ってくる様にするのはどう?
こう、因果応報的に」
碧が提案した。
「え、人を殴ったら痣が自分にも出てくる感じ?」
八つ当たりで苛立った時に部下に物を投げつけるぐらいはやってそうだけど、流石にそれ程頻度は高くないんじゃないかなぁ?
「いや、それだけじゃ無くて、敢えて意図的に補助金をカットして苦痛を与えたり、軍事支援を切ると脅迫して無茶な利益を奪い取ろうとするような、精神的苦痛も含めて」
碧が言う。
うわ、それは政治家としての判断で精神的に苦痛を受ける人はいくらでも居そうだから、不味いぐらいな反撃にならない?
『ふむ。
まあ、其奴の命令で誰かが死んでも其奴のが死ぬ程の痛みは無理だが、ある程度は苦痛が跳ね返る様にするのは可能かの?』
白龍さまが頷いた。
マジ?
うわぁ、これは是非ともジェームスにやらかして貰いたいところだね。
上手くいけば、それこそウクライナとガザの死者や苦しみのフィードバックで心臓麻痺でも起こしてくれないかね?