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君の為?

「何を言っているの。私は日本人で女性なのよ?

 アジア人な見た目をしているだけで、街を歩いていて老婆が後ろから頭を殴られる様な事件が起きる様な人種差別が激しい国なのに、それを反省して法で差別を数値的に規制していたのが逆差別だと主張して、政府との契約や補助金を切ってしまう様な白人男性至高主義な男がトップな国になんて行きたいと思わないし、絶対にそいつやそいつの部下を助けたいとも思う訳がないでしょ!」

 碧がジェームスに強く言い切った。


 そう言えば、碧の知り合いの女性が向こうの大学院で研究者として働いていたのに、白人に対する逆差別をしているって政府がいちゃもん付けたせいで研究資金を打ち切られて今度帰国する事になったってこないだ怒ってたっけ。


 ある意味、アメリカとあの国のトップに対するヘイトがめっちゃ高い今の時期にハニトラか説得であっちに勧誘しようなんて、アホ過ぎるというか、運が悪いと言うか。


 つうか、隠す気も無く男尊女卑でセクハラで何度も訴えられている様な男の元に、国を捨てて日本人女性が働きに行く訳無いじゃん?

 あれだけ露骨に白人男性優遇を謳っているのに、日本人女性を勧誘しようとして上手くいくと考えているなんて、同盟国の人間として将来が怖くなるほど頭の中がお花畑だね。


 第1期の時は心臓麻痺で死んで副大統領が後を継いでくれれば良いのにと思っていたけど、今回は副大統領も同じぐらい酷いか更に無能そうで、マジでこれから4年間が心配だ。

 二人が一緒に居るところに雷でも落ちて、両方再起不能になってくれないかなぁ。

 キリスト教の神様、マジで世界を救う為に雷の一個や二個、惜しんでる場合じゃないよ?!


「だけど、この国の組織じゃあ、君のことを守れないよ?

 今回我々が勧誘に来たのだって、中国に情報が漏れているのを知って君が誘拐される危険性も危惧しての事なんだから」

 危険に晒された女性を助けようとしているんだとドヤ顔で言われた。


 中国に碧の情報が漏れてて、それを更にアメリカが入手したんだね〜。

 と言うか、中国は碧だけでなくて若い退魔師を手当たり次第に狙っていたようだけど、アメリカはその中から白魔術師として利用価値が高そうな碧に目をつけて、『この国にいたんじゃ危険だよ』と善意の押し売りに来たのかな。


 中国の大規模ハニトラ作戦は天罰デフェンスで壊滅的なダメージを受けた(多分)事は、把握してないんかね?

 それとも勧誘に不都合な事実は確認が取れていない不確定情報ってことで無視しているのか。


「ちゃんと私は守られているから大丈夫よ。下手に国外に出る方が、よっぽど危険だわ」

 碧が返す。

 そうなんだよね〜。

 白龍さまの幻獣としてのパワーは別に日本だろうとアメリカだろうと違いはないだろうけど、氏神さまとしての天罰デフェンスの権能はキリスト教圏ではかなり落ちそうだから、碧の安全性はぐっと下がるだろう。


 思う様に碧が説得できない事にジェームスが苛立ってきたようだが、彼はキレる前に深く息を吸って落ち着きを取り戻した。

 ここで上手くいかないからって考えなしに意識誘導とかを使うアホだったら、流石に世界1の大国からハニトラ要員として派遣されてこないか。


「ちょっと色々と誤解があるみたいだから、また今度会って話をできないかな?

 君の知り合いの誰かが補助金を失ったか政府の契約が切られたのかだったら、なんとか出来るかも知れないし」

 穏やかな微笑みを見せながらジェームスが言った。


 いや、下手にこれに頷いたら、碧の知り合いが全員人質モドキな感じにクビにすると脅されたり、反対に変に優遇されて金銭感覚を狂わせたりしそうじゃん。

 つうか、変な条件をほいほい出してくる時点で信頼性が更に落ちるよねぇ。


「ナンノ話、シテルの?

 日本で会う人にステイツでのPositionをofferシナイッテpromiseシタノニ、ダメでしょ?!」

 キャロルが不機嫌そうに口を挟んできた。

 どうやらジェームスが碧を執拗に勧誘しているのに気付いたっぽい。


 しかも、今回の留学に際して日本人を勧誘しない約束になっているんだ?

 まあ、当時そうだよね。

 白龍さまの愛し子を勧誘されると分かっていたら、どれ程政治家から圧力を掛けられようと退魔協会も協力しなかっただろう。


 それをこんだけオープンにやっているんだから、どれだけ日本が舐められているのか良く分かっちゃうよねぇ。


「This is for her own good!!」

 ジェームスがキャロルの言葉を切り捨てる様に腕を振って答えた。


「私の為って言うならセクハラ男のそばに行こうと誘うのをさっさとやめて頂戴。

 不愉快だから、もう帰るわ」

 碧が言い切り、キャロルに軽く手を振って別れを告げ、駅の方へ歩き出した。


 おお〜。

 切り捨てるか。

 まあ、元々キャロルはまだしもジェームスは大学の構内の詳細なんぞに興味は無いだろうしね。


 とは言え。

 天罰デフェンスを使えなかったのは残念だなぁ。

 でもまあ、1回で諦めるほど聞き分けが良くは無さそうだから、また接触してくるかな?


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― 新着の感想 ―
あの国は未だに根強い差別意識があるからこそ 反動でポリコレのような極端な発想に走ってしまうんでしょう
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