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呪詛は悪霊も嫌い?

「なんか映画とかで、現在がカラーで過去が白黒な画面を見てるみたいな感じだね」

 庭の清めが終わり、ちょっと休憩ということで庭にあった大きな岩の上に腰掛けて亜空間収納から取り出したペットボトルのお茶を飲みながら碧がコメントした。


 ちなみに岩は白龍さまがちゃちゃっと綺麗に水洗いしてくれた。

 ちょっと固くてゴツゴツしてるから新聞か雑誌でもクッション代わりに敷ければよかったんだけど、最近じゃあそう言うのは基本的に電子書籍形態で読んでるからどっちも物理的に持ってないんだよねぇ。


 ゴミ捨て場から拾うかなぁ。

 でも、何かの虫の卵が産み付けられているかもと思うとねぇ。ちょっと躊躇われる。


 ……今度、適当なアウトドア用の折り畳み椅子でも買って亜空間収納に入れておこう。

 うっかりどこか結界付きのセキュリティチェックがある様な所に行く様なことがあった場合に『ちょっと鞄に入っていました』とは言い辛いから、適当なエコバッグに入るサイズのにしておいて、エコバッグと一緒に入れておけば良いだろう。


 それはさておき。

「映画だと白黒って言うよりもセピアっぽい感じが多い気がするけど、確かにこの家はセピアというよりは白黒……いや、灰色と黒って感じだね」

 ちゃんと世話をしていなかったせいでかなり侘しい感じになっている庭はそれでも一応所々緑があるし、何と言っても碧による浄化の影響でキラキラした感じがまだ残っている。それに対し、家の方はねぇ……。

 おどろおどろしい。

 絶対にノスタルジアっぽいイメージのあるセピアじゃあ無いわ〜。


「そう言えば、庭を綺麗にしたら周囲から吸い寄せられてたっぽい穢れの流れは止まった感じだね」

 碧が周囲を見回しながら言った。


「だねぇ。

 穢れが穢れを呼び込むなんて知らなかったわ。

 穢れてるところを放置するとヤバくなるのって、てっきり穢れの元の悪霊が穢れを生み出すとか集めたりするからだと思っていたけど、それだけじゃ無かったんだね。

 まあ、ここみたいに穢れまみれだったらそのうち近所の悪霊も呼び込んでどちらにせよ益々ヤバイことになってたかもだけど。

 と言うか、考えてみたらここの持ち主が複数の呪詛返しを一気に喰らってあの状態になった後、何度か所有者が変わるだけの時間があったんだからそれまでの間に悪霊がここに集まらなかったのはちょっと意外かも?」

 悪霊も自分に関係ない呪詛塗れな穢れは嫌なのかな。


「穢れってある意味人間の生きる上での副産物みたいなモノだから、ある程度は神様も許容している感じなんだと思うんだ。

 祝詞で助けを求める時も、神様を選ばないと穢れを清めるのにあまり手を貸してくれない感じがするし。

 だけど呪詛は自然の理を歪めた許されないモノっぽい感じがするから、悪霊でも忌避する事が多いのかも」

 碧が言った。


「なるほど?

 私らにとっては呪詛だって穢れだけど、悪霊にとっては呪詛の穢れと普通の穢れは違うんかもね」

 どちらにせよ、生きる存在には過ぎたら害があるモノである事には変わりはないから、迷惑だ。


「さて!

 家の方も清めちゃおうか」

 碧が立ち上がりながら言った。


「大丈夫?

 何だったら家の中も結界で幾つかに区切ってやる?」

 それこそ1階と2階で分けるとか、リビングとそれ以外で区切るとか。


「いや、家の中は一気にやる方が、変な取りこぼしが無くて良いと思う」

 碧が首を横に振った。


 じゃあまあ、頑張ってという事で碧について玄関の中に入ったら、濃厚な穢れに迎えられた。

 マジで凄いよなぁ。

 一体ここの持ち主は何人呪ったんだろ?


 殺傷力がある様な呪詛を掛けるのだってお金が掛かるんだから、それだけお金を稼げたんだったら自分のことを認めなかったらしき本家の人間をそこまで恨まなくても良かったんじゃない?

 今時の日本でそこまで一族全員を恨む様な関係って、一体何があったんだろうね?


 前世だったらそれこそ領主一族が贅沢をする為に課した重税のせいで家族が餓死したとか、娘が貴族や王族の若いのに集団で手籠にされて殺されたとか自殺したとかってちょくちょく聞く話だった。

 だが。今時の日本で誰かが悪事を働くのは不思議じゃないにしても、一族全員(じゃないにしても複数)を呪おうとする程個人ではなく集団が恨まれる状況なんて、想像がつかない。

 それとも恨みではなく単に遺産相続目当てで片っ端から殺そうとしたのかね?

 呪詛の費用を出せるほど稼いだなら、欲張らなくても良いだろうに。


 気にはなるが、態々碧の浄化の祝詞から死霊を隔離して、昇天させずに地上に繋ぎ止めておいて原因を確認したいほど興味がある訳じゃあないけどね。


 そんなことを考えている間に碧が祝詞を唱え始めた。


 カーテンが開いているのに薄暗いリビングの空気が徐々にキラキラしてきて、灰色と黒だった周囲がカラーに戻り始める。


 呪詛には意識がないらしく、悪霊と違って清められるのに抵抗している様子もなく、やがて碧が祝詞を唱え終わって柏手を叩いたらスパンと光が溢れ、綺麗になっていた。


 蹲っていた真っ黒な悪霊も一緒に浄化されて、消えている。

 やっぱ昇天したかぁ。


「取り敢えず、これで今回の事故物件絡みの案件は一区切りって感じだね。

 お疲れ様〜」



 取り敢えず、これでこの章は終わりです。

 また明後日から続けますのでよろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
霊感のない人にはどんな風に見えたり感じたりしてるんでしょうね
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