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これは酷い

「ちょっと降りて見てきます。

 ちなみに、この物件では誰か亡くなっていますよね?」

 今回の物件は車からでも問題ありまくりなのは見てとれたが、一体何がどうなったらこんな状況になるのか気になったので、車を降りて確かめることにした。


「ええ、以前の持ち主が血を吐いて亡くなったそうです。

 娘さんが居たそうですがその方も相続手続きが終わる前に交通事故で亡くなったので、夫の男性が中の物も全部要らないと一度も見る事なく売却したそうなんです。色々と持ち主が変わった末に投資ファンドが買ったらしいですがリフォームしようにも何度も事故が起きてどの業者もやってくれなくなり、底値でも借りる相手が出てこなくて、結局別のファンドに売り払いと言うのを何度か繰り返した挙句、ウチの知り合いが買っちゃったらしく。

 今回は委託契約で何とかしてくれと泣き付かれた形です」

 青木氏が説明した。


 流石に土下座されてもここは買わないよねぇ。

 つうか、買ったりしたら運気がダダ落ちするんじゃない?

 亡くなった持ち主の娘さんはここのとばっちりで死んだ可能性が高そうだし。


 車から降りて敷地の中に一歩入る。

「うげぇ……」

 濃厚な穢れと呪詛の気配に思わず呻き声が溢れた。


「呪いって人間じゃなくて敷地にも掛かるんだ?

 知らなかった……」

 後ろからついてきた碧が呟く様に言った。


大量虐殺ジェノサイドされた民族が、殺した民を呪いながら死に絶えたなんて惨事があったら土地が呪われるって事も起きうるって昔読んだ事があるけど、流石に今の日本でそれは無いだろうからねぇ。

 ちょっと中の霊から確認してみるけど、出て来たら清めて欲しいから碧は外で待っていてくれる?」

 自分の周りを薄い浄化結界で囲み、そっと敷地の中に入っていく。

 変なとばっちりはごめんだからね。

 霊の情報を読む際に浄化結界を解除しないといけないかもだから、このヘドロもどきな呪詛が染み込み兼ねない。

 碧が外ですぐに清めてくれると分かっていなかったら立ち入るのは拒否したね、こんな場所。


 一応玄関の鍵を受け取っていたが、ここは鍵なんぞ掛けなくても誰も入らないんじゃ無いかなぁ。

 まあ、鈍い子供が肝試しに入って大騒ぎになる可能性もゼロでは無いかもだけど。


 靴下でこんな所を歩きたく無かったので、靴も脱がずに家の中に入らして貰った。まあ、靴にだって穢れに対する耐性がある訳じゃないけど、気分的にねぇ。

 どうせ何年かは誰も入っていないんだろうから、使える様になる前に大掃除…‥と言うかリフォームが必要だろうし。


 意外にも、中はあまり汚れていなかった。

 Gや鼠ですら、ここには近寄らなかったのかな?

 誰かが死んだのだったら死体を持ち出した警察なり救急車の人?なりが居たんだろうと思うけど、ここに入って大丈夫だったんかね?


 そこそこ広い家の廊下をまっすぐ進んだら庭に面したリビングに辿り着いた。

 血を吐いた跡なのか、フローリングが変に黒ずんでいる場所にドス黒い穢れの塊が蹲っていた。


 うわぁ。

 穢れが濃すぎて霊に見えないんだけど。


『痛い、苦しい、横川達のせいだ』

『呪ってやる』

『一気に呪いが返るなんて、誰が裏切った』

『苦しい』

『痛い』

 ボソボソと何やら穢れから念が漏れてきているが……直接これと接触するのは嫌だなぁ。


 うん、呪詛返しを喰らったのが原因みたいだね。一気に返されたせいでこの男(多分)が死ぬだけで呪詛を消費しきれなくて、変な感じに呪詛が敷地に充満しちゃった感じかな?

 考えてみたら誰がどうやったら一気に複数の呪詛を返せたのかなんてこっちの霊は知らないんだから、話を聞こうとしても意味はないよね。


 これでもう良いや。


 確かに呪詛って自分一人分の死でカバーしきれない程の呪いを掛けまくるのも可能ではある。

 死んだ人間から掛けられた呪詛を返した場合って、転嫁されてなかったら空気に消える感じに呪詛が散るんだけど、多すぎる呪詛返しが同じタイミングで起きると散るんじゃなくてこんな風に一人に集中して、土地に溢れ出るんだねぇ。

 知らんかったわ。


 と言う事で。

 そのままクルリと向きを変え、玄関から出て鍵をかけた。


「どうだった?」

「何か、呪詛を一気に返されて死んだっぽい滅茶苦茶に穢れ塗れな霊がリビングに居た。

 どんな感じに起きたのか知らないけど、呪詛返しの変則的な効果みたい」

 意図的だったのか、偶然なのか知らないけど。

 意図的だったとしたら、人間は一度しか死なないんだからある意味失敗だったかも?

 普通に一回呪詛返しをして死なせた方が、死んだ相手が変に周囲へ呪詛を漏らさなくて私らが呼ばれなかっただろうに。


 これじゃあこの敷地と一緒にあの霊も浄化されるから、復讐もその時点で終わりだ。


「呪詛返しって人間だったら自業自得です、耐えてくださいって話になるけど、土地だったら力技で清めるしか無いのかな?」

 碧が首を傾げながら周囲を見回した。


「だと思うけど、それこそ碧クラスの白魔術師か、複数の退魔師がやらないと無理だろうねぇ」

 と言うか、下手しなくてもこれって藤山家のノルマ相当な案件じゃ無い?


 上半期分のノルマはあのマッチングアプリで熟したことになっている筈。そうなると、これは今年の下半期分のノルマになるんかな?


 他にこんな呪い塗れな敷地を清められる人がいるならそっちに回すだろうけど。

 ある意味、碧に依頼が来るか否かで退魔協会のリソースが分かるかもだね。

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― 新着の感想 ―
虫も寄り付かないって強烈ですね Gとか蠅とか、むしろ好みそうなのに
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