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更にお代わり?!

「これって祓っちゃ駄目なんだよね?」

 碧を振り返って尋ねる。

 はっきり言って邪魔なんだけど。

 こう、エレベーターの後方に居るけど壁際じゃないから、一人ならまだしも二人乗ったらどちらかは部分的とは言えこの地縛霊の上に立つ羽目になる。


「誰にも知られずに通りすがりの地縛霊を祓っちゃうならまだしも、退魔協会に依頼をするか否かを誰かが考えている案件で勝手に祓うと煩いからねぇ。

 三階だし、私は階段で登るよ」

 碧が言った。


「う〜ん、付き合うよ。

 私もあまりこんなのと一緒に密室の中に居たくない」

 エレベーターがしょっちゅう故障するとか言う話は青木氏から聞いていないが、私に認識されていると気付いた地縛霊が張り切って霊障を起こしてエレベーターを故障させたりしたら面倒だ。


「エレベーターでこんな状態で死ぬなんて、一体何が起きたんだろうね?」

 碧が廊下を横の方のに行ったところにある扉を開けながら言った。


「青木氏が調べれば分かるんじゃない?

 もしかして、共用部での事故死って賃貸人とか購入を考えている相手に開示する義務が無いのかなぁ。

 他の階の廊下とかならまだしも、ゴミ捨て場とかエレベーターに変な地縛霊が居ると嫌だね」

 碧の後ろに続いていたのだが、碧が動かなかったので後ろから覗きこむ。


 おっと。

 ゴミ捨て場ですか。

 しかもここにも地縛霊がいるし!!

「何なの、このマンション??」


「ヤクザでも暮らしていて、カチコミでもあったのかしら?」

 碧がため息を吐きながら扉を閉めて周囲を見回す。


 廊下の奥にある扉は道に続きそうだけど、非常階段も外にあるんかな?

 少なくともオートロックの内側には残りは管理室に行く扉しか無い。

「流石にヤクザの事務所がこんな普通のマンションにあるとも思えないから、ヤクザの愛人でも暮らしていたのかも?」


「ヤクザの愛人が住んでいたせいで会いに来たヤクザへの襲撃があったりしたら、住民やオーナーには良い迷惑だわね」

 碧が扉を開けて左右を見回す。

 予想通り道に出たが、階段は見当たらない。


「非常階段が無い??」

 そんなのは建築法的に許されないと思うんだけど。


「オートロックの入り口の横に駐輪スペースがあったから、そっちかも?」

 碧が言いながら、外へ出た。

 マンションの外縁を回ることにしたようだ。


 非常階段が外にあるなんて構造もありなんだねぇ。

 ちょっと意外かも。


 歩道沿いに戻る感じに歩いていたら、角を曲がってすぐにオートロックと宅配ボックスのスペースがあり、その向こうに小さな自転車置き場のスペースが見えた。

 よく見たら、一番向こうの壁際にひっそりと扉があった。

 あれかな?


「ヤクザの事務所とかに部屋を貸したり売ったりするのは断れても、愛人なんて分からないよねぇ。

 と言うか、ヤクザの愛人用のマンションって誰名義で買ってるか借りてるかしてるんだろ?」

 考えてみたら、最近はヤクザよりも半グレみたいな中途半端な悪人が色々と悪事をやっているみたいだけど、そう言う連中も愛人とか囲って闘争とかもするのかね?


「借金のカタに部屋を取り上げるなんて事もあるのかも?

 もしくは借金のカタに遠海漁業船へ放り込んだ債務者の部屋をそのまま占領するとか?」

 碧がアイディアを投げかけながらオートロックの鍵を駐輪スペースの奥にあった扉に差し込んでみた。


 お。

 開いた。


 ぐいっと開いた扉の向こうはコンクリの普通な階段だった。

 以前の大規模再開発のところみたいに鳥の糞とGだらけと言う事もないようで、一安心だ。


 と言う事で階段を登り始めたのだが。

「うげげ」

 二階の踊り場を曲がったところで碧が声をあげた。


 覗き込んだらそこにも地縛霊が。

 まじで何なの、このマンション!?


「面倒だから、これはもう祓っちゃおう。

 ついでに何だってこんなに沢山人が死んでるのか教えてもらいたいし」

 ある意味Gがうじゃうじゃ居るよりはマシだが、面倒すぎる!


 第一、共用部のあちこちに地縛霊がいるなら全部で何人分を想定すべきかを知っておきたい。


 と言う事で、碧を追い越して階段に蹲っていた地縛霊のところに行き、手を伸ばして触れてみる。

「お、やっぱヤクザだった」

 と言うか、ヤクザの襲撃なんて今時あるの??

 なんかこう、昭和の時代な存在っぽい気がしていた。


 時代背景を確認しようと更に魔力を与えて霊の記憶をハッキリさせたら、昭和では無かったけど十年以上前の事件だったっぽい。

 リーマンショックの後のガタガタで資金繰りが苦しくなった組を、中国の組織マフィアの息が掛かった連中が襲撃して来たって記憶にあるから。

 うわぁ。


「で、愛人が暮らしていたの?」

 碧が聞いてきた。


「離婚した妻に引き取られた息子を跡継ぎにするって話し合いをしている最中に中国マフィアと繋がったヤクザに襲撃された地元のヤクザみたい?」

 息子が本当にここに居たのか、囮のダミーだったのかは死んだこの霊は知らない様だが。


 リーマンショックの時代って言ったらまだ私は幼稚園とか小学生低学年だから、ニュースになっていても知らなくて当然だね。

 とは言え、ニュースになっていたら人が死んだことを青木氏だって把握してるだろうから、事故物件っぽいってなったらさっさと退魔師を手配しそうなもんだけど。


 もしかして、襲撃の痕跡とかその時の死者とかをどちらかの組の方で掃除して無かった事にしちゃったのかね?

 霊の安寧を祈るとこまでしなかったのは片手落ちなのか、ヤクザってそう言う事はしないポリシーなのか、知らないが。


「この霊側の人間は四人ここに来ていて、息子さんと付き添い一人を逃す為に残り三人が戦ったらしいから残った方が全滅したとして三人で数が合うんだけど、襲撃して来た側の死者が居たらそっちは分からないなぁ」

 息子さんの部屋が五階だったらしいから、一応そこまで階段を登って確認するか。




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― 新着の感想 ―
事件にならなかったということは 襲撃したほうが証拠隠滅したんでしょうから 逃げた方も全滅かも
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