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魔石?!

「この部屋を調べるの?!

 鼻がもげそうなんだけど!!」

 碧が涙目になりながら悲鳴を上げる。


「窓を開けよう!

 玄関も開けっぱなしにしておけば少しは臭いが抜けるかも?!」

 口呼吸でもこのカビ臭い空気を吸うのも嫌だが、鼻での呼吸は無理!

 出来るだけ息を吸わない様に廊下で大きく息を吸ってからまずはリビングの窓は飛びついて開け、隣の寝室の方へ碧が駆け込むのを見ながら台所に行って換気ファンを動かした。


 あれ?

 そう言えば、空き家(空き部屋?)なのに電気が通ってるんだね。

 夜に内覧しに来る人用?


 と思ったがよく見たら台所に除湿機が置いてあり、ガンガン吸収した水をシンクに垂れ流していた。


 え〜〜?

 除湿機を使っていてもこれだけカビ臭いってどんだけ〜?

 上の階の水道管から水でも漏れてんじゃない??

 冬の一番乾燥している時期にこの湿気は異常でしょう。


 寝室の窓と扉を開け、トイレの換気ファンもオンにした碧がリビングに戻ってきた。

 玄関から流れている風で少しはマシになったかな?


「酷いね。

 特にどこの天井にも水漏れの跡とかは見当たらないんだけど、絶対なんか異常だよね、これ?」

 碧が言った。


「だね。

 霊障にしちゃあ悪霊っぽいモノは視えないけど」

 亜空間収納からクルミのピンバッジ型躯体を取り出す。

「どっかに霊か何かが居ないか、ちょっと探してみてくれる?」


『そこのなんか変なのは抜かして?』

 クルミがシンクの方を動いて示しながら確認してきた。


 うん?

 確かに何かある?


「ちょっとこっちは私らが確認するから、更に他に何か無いか、探してちょうだい」

 部屋の他の部分をクルミに任せ、魔力視で台所のシンクを確認する。


 うん。

 パイプがU字になってる所に何かあるね。

 感覚的にはちょっと魔石に近い感じ?


 でも前世の魔石は基本的に魔力源でしかなく、単なる電池の異世界版に近かった。なんかこれは変な渇望っぽい方向付けがある感じだなぁ。


 と言うか。

 パイプから取り出さなきゃだけど、この中に手を突っ込むの??


「何か落ちてる?」

 碧も覗き込みながら言った。


「多分?

 でも、どうやって取り出すのか微妙に不明。

 この中に手を突っ込みたく無いんだけど」

 カビで真っ黒になっている様に見えるシンクの排水管を覗き込みながら呻く。


「いや、パイプの部分は手が入るほど太くは無いでしょ。

 青木さんにこのパイプを外す道具を持ってきて貰うしか無いんじゃ無い?」

 碧が指摘した。


『その魔石を取り出したいのか?

 押し出せば良かろう』

 白龍さまが現れたと思ったら、突然排水管の水が噴き出し、直径3センチ程度の石っぽい何かがそれに押し流されてシンクの上に飛び出してきた。

 そっか、排水管のU字の部分って水が溜まっているんだっけ。

 あれで下水からの臭いが上がってくるのを防ぐんだよね?

 カビの臭いが強烈すぎて下水の臭いが入ってきていても分からなそうだけど。

 流石、白龍さま。水の扱いは少量でもお手のものなんだね。


 ティッシュをバッグから取り出して、飛び出てきた石っぽい物を拾い上げて汚れを拭けるだけ拭いてから人差し指で直に触れてみる。


「結局、何それ?」

 碧が尋ねた。


「魔石に、死んだサハギンの霊の一部が取り憑いている感じ?

 魔物が悪霊っぽい感じに残るなんて初めて見たけど」

 前世では魔物は死んだら死ぬし、場合によってはゾンビになる程度で、悪霊っぽいレイスになるのは人間とかある程度以上の知性がある存在だけだったからなぁ。


「サハギン?!」

 碧が思わずと言った同じで魔石に手を伸ばたが、触れたら驚いた様に手を引っ込めた。

「なんか変な感じ??」


「どこかの異世界の境界門からうっかりこっちに来ちゃって、魔素が足りなくて死んだっぽいけど普通に殺されるんじゃなくって魔素が足りなくて餓死と崩壊の中間みたいな変な死に方したせいで微妙に死ぬ前の苦しみや渇望が魔石にへばり付いてその方向性に影響を与えちゃってるみたい?」

 前世では魔石からその履歴とか元の魔物の情報なんて読み取れた事なんてなかったのだが、この魔石はある意味悪霊の依代的な感じになっているせいか、少し無念とか願いとかが読める。


 どうしてそれがこのアパートの台所のシンクに落ちていたのかは読み取れないけど。


「珍しい石だと思って拾ってきて、台所で洗おうとして落としたとか?」

 碧が少し首を傾げながら推測する。


「かも?

 一応排水管の中で水に浸かっていたんだけど、元のサハギンにとっては水と魔素と両方が必要だったから単に水が掛かるだけじゃ足りなくて部屋全体に水を呼び寄せようとしてこの異常な湿度になったのかも?」

 あと5年もすれば魔石の魔力が枯渇したかもだが、その前にカビで壁か床がダメになっていたかな?


「ふうん。

 じゃあ、他に何も問題がなければこの魔石を撤去すれば湿気とカビ臭さは普通に換気すれば何とかなるかな?」

 碧が部屋の中を見回しながら言った。


「多分ね。

 だけど、この魔石をどうするかが問題かも」

 川や海に投げ捨てたらそれで何とかなるかもだが、何とかならなくて氾濫の原因とかになったら困る。

 ただでさえ最近は異常気象っぽい豪雨で川の氾濫とかが多いのだ。

 災害に加担したかもなんて言う心配は要らない。


『なに、儂が食ってしんぜよう』

 そう言ったと思ったら、白龍さまがパクりと碧がカウンターの上に置いていた魔石を飲み込んでしまった。


「「え?!?!」」



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白龍様にとってはおやつ? 飴玉みたいなもの?
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