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オンライン詐欺じゃあねぇ

授業が終わって直ぐに学食へ駆け込んだが、教授がキリのいいところまで話を止めようとしなかったせいで既に殆どの席は埋まっていた。


取り敢えず相席でも良いから・・・と見回して、奥の方に二人掛けの席の片方が空いているのを見掛けて急いでそこを確保する為に急行。

ごく弱い人避けの術を席に飛ばして他の人が来ないようにしたお陰か、無事に他の席を探して徘徊している学生より先に席にたどり着けた。

「ここ良いですか?」


「どうぞ〜」

ノートとジャケットを席に置き、一応盗まれたりしないように人避けの術はそのままにしてランチを取りに行く。


相席になった女性の食べていたランチプレートは中々美味しそうだったが、残念ながら既に売り切れていた。

ここは無難に親子丼にしよう。

下手に麺類を頼んで席に着く前に知り合いに声を掛けられたりすると悲惨な事になるので、学食では冷めたり時間が経ったりすると劣化が酷い物は頼まない。

最初はそこら辺が分かっていなかったせいでかなり切ない思いをしたが。


基本的に学食では食べ終わって暇そうにしている人以外に声を掛けるのは顰蹙ものなのだが、空気を読まない人間と言うのはどこにでもいて、そう言う人に限って『探し人がいる可能性が高いから』と昼食時に学食で人を探しに来たりするのだ。


それはさておき。

親子丼を手に席に戻ったら、相席の相手は殆ど食べ終わってメールを手に、財布を出して居た。

混んでいるんだからさっさと食べ終わって出ていけば良いのに・・・と思いつつ相手の顔を見たら、知り合いだった。


「あら、近藤さんじゃん。

気が付かなかった。最近はどう?」

実はクラスメートだった。


圧倒的に男性が多い法学部なので私のクラスは30人中女性は5人しかいない。なので最初の書類配布の時しか顔を合わせて居ない相手だが記憶に残って居たのだ。


他の必須科目でも同じ授業を受けている筈だが、何分大学の巨大な教室である。

サボって過去問だけで試験対策を済ませる人も多い為、前もって待ち合わせでもして居ない限りクラスメートでも殆ど顔を合わせる事はなかったのだ。

流石に人数が少ない必須の第二外国語だったらもう少しクラスメートと話すのだが、高校で1年間交換留学をしていたとか言う近藤さんは第二外国語は免除されているので久しく会っていなかった。


「え?

・・・あら、長谷川さんじゃん。

お久しぶり〜。

意外と大学の中って知り合いに会わないよねぇ。

それなりに楽しくやっていたんだけど、なんか最近変なメールが多くって・・・」

溜め息を吐きながら近藤さんが答えた。


おやま。

『最近どう?』は単なる社交辞令だったんだけど、1、2度しか会って居ない相手に愚痴りたくなるほど大変な事になっているのかね?


「変なメールって?」


「例えばこれ。

私のクレジットカードの不正利用があったっぽいから使用を止めているので連絡下さいだって」

携帯のスクリーンを見せられた。


聞いた事があるメジャーなカード会社のヘッダーがついたメールが開いている。

連絡下さいの文言の下には何やらリンクがあり、そこにアクセスしろと言う事らしい。


「・・・クレジットカードが本当に不正利用されてそうだったら、電話が掛かってくるんじゃないの?

迂闊に変なメールのリンクにクリックせずに、カードの裏にある番号に直接電話した方が良いんじゃない?」

携帯電話には色々と重要な情報が入っているのだ。

うっかりクリックしてウィルスに汚染されたりして、私への連絡先まで漏れたらどうしてくれる。


今だったら殆ど接点の無い大学の知り合いには電話番号なんて教えずに大学用のメッセージアプリのIDを渡すのだが、大学に入って直ぐはクラスメートと殆ど接点が無いなんて状態を想定して居なかったから携帯電話の番号を彼女と交換したんだよねぇ。


アプリのIDやメールアドレスなら直ぐに変更できるが、電話番号が変な所に漏れたら面倒だ。


「・・・確かに、何をすれば良いのかとかも説明してもらった方が良いか」

近藤さんは頷きながら手に持って居たカードを裏返し、携帯で電話を掛け始めた。


冷める前にさっさとランチを食べてしまおう。

しっかし。

携帯に変なウィルスが入っていないかとかってどうやって調べればいいんだろ?

近藤さんじゃ無いけど、どっかからメールアドレスが漏れて変なメールが大量に来るようになったら、そのうちどれかに引っ掛かって携帯が汚染されそうだからなぁ。

食べ終わったらちょっと調べてみよう。


人間の詐欺師だったらそれなりに悪意を感じられるし場合によっては被害者からの恨みが穢れになってこびり付いているんで騙されにくいんだけど、オンライン系の詐欺ではそう言うのは全然見えないから私が詐欺に引っ掛かる可能性は普通の一般人と同じだ。


覚醒して暫くは精神や魂に関連する事に適性がある黒魔術師だったらPCやインターネットと言った意志のネットワークの様な存在に対して何か特効があるかと期待して色々と試してみたのだが、結局何一つ成功しなかった。


大学に入って知り合いの輪が広まった事を考えると、巻き添え被害を食らわないよう一般的な自衛手段を調べておいた方が良いかも。




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