そっち?!
「ええ?!
孫は輝んところに期待した方が良いから、高木さんと仲良くする様にねって年末に態々言っていた凛にお見合い??」
取り敢えず、お見合いモドキをする事になった相手の事を事前に聞けるだけでも確認しておこうと実家に帰ったら、母親は聞いていなかったらしく目を丸くしていた。
「つうか、それ以前に今時お見合いなんてないし、カジュアルな『良い人の紹介』にしたって大学生だったらまだ早いよね??」
母親に同意を求めたら、ブンブンと力強く頷かれた。
「第一、凛は天邪鬼なんだから紹介なんかしたって上手くいく訳ないじゃ無い!」
おい。
「そうだったなぁ。
まあ、別に俺としては最初から上手くいくとは思っていないし、取引先の家族と上手くいって欲しいとも特に思っていないし。
一度会って義理を果たしてくれればそれで良いから、凛も変に気を遣わなくていいぞ?」
父親が母親の言葉に頷きながら言った。
ええ??
天邪鬼判定は合意してるの??
私、15歳で覚醒してからはちょっと隠し事が多かったかもだけど、天邪鬼って言われる様な事はしてないよ??
「天邪鬼だからお見合いモドキが上手くいかないんじゃなくて、単に現時点で交際相手を探してないだけだよ?!」
「いや、凛はそれこそ小学校に入る前位の頃から誘導したかったら反対方向に話をすれば面白い様に引っ掛かったわよ〜。
あれで天邪鬼じゃなかったら世の中、天邪鬼なんて居ないから。
最近はそれなりに大人になってうっかり何か勧めてもプラスとマイナスを考えて合理的に判断する様になったけど、子供の頃は本当に天邪鬼って言葉がピッタリって思うほどこっちが勧める事に反抗したじゃない」
母親が冷静に指摘した。
あれ??
「そうだっけ??」
前世の記憶が覚醒した後ではなく、もっと子供の時の話??
「まあ、それはさておき。
今回の取引先は新規開拓の営業で話していた相手なんだが、急に前回会った時に凛がもしかして退魔師なんじゃ無いかって聞いてきてね。是非とも自分のとこの甥を紹介したいって言い出したんだ。
紹介してくれなきゃ今まで進めて来た商談も無しにしましょうって言われたから凛に電話したが、元々新規開拓の取引が成立するかなんて五分五分以下だし、娘を餌にしなきゃ取引してくれないところなんて長期的に付き合っても良いことは無いから、凛は嫌だったら今からだって断ってくれても良いし、当日も気が合わなきゃさっさと切り上げて帰っていいからな」
父親が説明し始めた。
へぇぇ。
じゃあ、昨日の電話はダメ元程度だったんだ?
もしかしたら父親が洗脳されてるとか意思誘導を受けてるかとも心配していたんだけど、そっちは大丈夫っぽい。
「ちなみに、相手はなんだって退魔師だったら私を甥に紹介したいの?」
退魔師の存在を知っている人なんだろうが、知っているなら退魔協会も知っているだろうから別に若手退魔師と縁を繋ぐ必要は無いだろうに。
やはり碧狙いかねぇ?
「なんか、その取引先の妹さんが結婚したのが古くからある退魔師の家系らしくて。
大学で出会って恋愛結婚したものの子供に退魔師の才能が無かったからちょっと肩身が狭いらしくて、出来れば息子の妻は退魔師かせめて退魔師の家系の人を探しているんだって御涙頂戴な苦労話をされてね」
父親が言った。
うわぁ。
そっちか。
そう言えば、以前昇級祝いのパーティで会った男性も退魔師の適性持ちで許容できる性格な若い女性をかなり切実に探してたね。
でもさぁ。
「聞いたんだけど、古い退魔師の家系って子供に退魔師の才能持ちが欲しいから、妻との間に思う様なのが生まれないとそう言う家系の女性を愛人にして、庶子を産ませまくるのが推奨されるらしいよ?」
退魔師の家系の人間だったら共通の話題はあるかもだけど、はっきり言って誠実さファクターがどん底すぎて選択肢から大きく外れるんだよね。
「なに?!
愛人推奨だなんて、ありえん!!!
そんな奴とは会わなくて良いぞ!!」
父親が激昂した。
「ありがとね。
まあ、一応何か他にも下心があるかは確認したいから、一度だけは会ってみるよ。
でも、今後は娘さんが退魔師ですか?って聞かれたら、全く何もそう言った方向に手を貸していないし話も聞いていないから、違うと思うとでも答えておいて」
碧狙いでなくても、退魔師の妊娠可能年齢な女性狙いな話までくる様じゃあ面倒すぎる!