どうすっかなぁ
「碧はお見合いみたいな、異性との出会いモドキを設定されたりした事ある?
ああ、勿論退魔協会の『酒で潰せば女は言う事を聞くだろう』接待は別として」
電話が終わり、パタンと炬燵に寝転がってリビングで源之助と遊んでいた碧に尋ねる。
なんかもう、お守りを作る気も失せたわ〜。
面倒くさい。
うちの父親って娘とのコミュニケーションが下手な代わりに、あまり自分の考えを押し付けた口出しとかしてこないタイプなんだよねぇ。
それが突然お見合いモドキって……一体その取引先とやらにどれだけ圧力を掛けられてるんだろ?
場合によっては天罰デフェンスが発動しなくても、私が出張って痛い目に合わせてやろうかなぁ〜。
今までにそれなりに善行を積んできたから、ちょっとぐらい私的自己防衛に力を使ってもきっと来世への悪影響はそれ程無いんじゃ無いかと思うんだよねぇ。
「せいぜいが親族で集まって遊ぶ場に知り合いの子供が男女両方混ざっていた程度で、私一人の出会いというよりも、退魔師の血を引く子供達の間で相性が良いペアが出来ないか試してみよ〜って感じ程度だね」
碧がふにゃふにゃと源之助の肉球をこねながら答えた。
最近、源之助は真昼間だと遊ぶよりも寝る方に傾いていて、オモチャへの反応がかなり鈍くなった代わりに肉球を弄っても然程嫌がらなくなったんだよねぇ。
流石にお腹当たりを猫吸いしようとすると嫌がられるけど。
猫吸いをさせてくれる猫ってどうやって説得してるんだろ?
まあ、あまり猫のお腹に顔をつけ過ぎると顔が毛だらけになりそうだから無理にやる必要はないけどさ。
でも、たまにはやりたいなぁ。
それはさておき。
「藤山家とかその知り合いの退魔師だったらネットワークが広そうだねぇ。
ちなみに、そっちら方面に私の情報って流れてるのかな?」
まあ、今回の見合いモドキは最終的には碧狙いだとしても、碧の周辺の人ではないんだろうが。
態々私を釣らなくても、親族として付き合いがあるなら普通に碧パパや碧ママを頼れば切実に必要がある時は碧へ話をつけて貰えるだろう。
「私がペアを組むようになって依頼先での変な誘いが減ったって話はしているし、美帆さんとこには二人で何度も行っているからそれなりに知られてはいると思うよ?」
そっと源之助の肉球を押して爪を確認しながら碧が答える。
「その子供での集まりって大学生になってからもやってる?
なんかこう、会社で私とどこぞの取引先の甥と『お見合い未満近所での立ち話以上』的な出会いを父親が強要されたっぽくって。
何を着ていけば良いかな?
あと、気が合わなそうだと思ったらどの程度の時間で、何と言って捨てて来たら良いんかな?」
元々人と会った時にお暇を乞うのが苦手なんだよねぇ。
話題が尽きて気不味い雰囲気になった時にどのくらい早く抜け出して良いのかも、聞いておきたい。
「おやま。
まあ、近所とか親戚のお節介な人は色々と両親の方に『紹介したい若い子』の話をしているらしいけど、全部そこでストップして貰っているから私の方はお見合いモドキはないね〜。
着るものはジーパンでさえ無ければ良いんじゃない?
下手に着飾ってもなんか自分をよく見せたがっているみたいで嫌だけど、カジュアルすぎる格好だと場違いで自分が居心地悪くなるから、適当にバイトの面接に行くような感じで行けば?
見切りをつけて帰ってくるのは、普通に食事を食べ終わったらで良いんじゃない?
どうしてもアレだったら、トイレ行くふりしてそん時にSOSの連絡をくれたら、こっちから10分後ぐらいに電話して家で水道管が破裂したとでも言って緊急で帰る口実を作ってあげるよ?」
碧が提案した。
「う〜ん、水道管の破裂ねぇ。
まあ、考えてみたら会ってみて、特に裏が無いのが判明したらお互いにさっさと食べ終わって帰ろうって思うように意思誘導すれば良いか」
あまり意思誘導を個人的な利益のために使わないようにしているけど、半ば強要されたウザい見合いモドキでどうしても相手が耐えられなかった場合ぐらいはいいだろう。
裏があった場合は……記憶をガッツリ読ませて貰ってそれなりに対処するけど。
ああ、マジでなんか面倒。
と言うか、ある意味碧関係の裏がある方がまだ撃退すれば良いだけだから楽かも。
変にお見合いみたいな出会いをセッティングするのが好きなお節介なお見合いオジサンみたいのだった方がよっぽど面倒な気がしてきた。