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体調不良?

『それでは個別除霊はしていないと言うことでいいのですね?』

 依頼完了の知らせの電話をした私達に、遠藤氏が確認してきた。


「ええ。

 池の脇の石碑に憑いていた悪霊を祓いましたけど、個別除霊の条件って誰かに憑いているのを祓ったらですよね?

 態々見張っていて合格祈願に来た受験生が憑かれるまで待っているのも面倒だったからさっさと祓っちゃったので、構いません」

 碧が応じる。


 契約内容は微妙に曖昧っちゃあ曖昧な言い回しだったんで、私らが強硬に『祓った』と主張したら10万円貰える可能性もあるけど、証明できない主張って誰かに詐欺っぽく受け取られる可能性が高いから、面倒だしもういいやって事にしたんだよね。


 たとえ武下さんを現場に呼んでから祓ったところで、彼女が何かを感知できる可能性は限りなくゼロに近かったし。


『まあ、お二人がそれで良いのでしたら構いませんが。

 ちなみに契約外になったとは思いますが、入り口に設置してあった浄化結界ではどれだけ祓いましたか?』

 遠藤氏が思いがけない質問をしてきた。

 思わず飲んでいたお茶で咽そうになったのを、必死に意志の力で止める。


「え、何のことです?」

 碧が素知らぬふりをして聞き返した。


『今年受験する娘がちょっと体調が悪かったので車で送ったのですが、入り口の横を通る際に思わず二度見して前の車に突っ込みそうになってしまいましたよ』

 遠藤氏が言った。


 え、マジで娘が受験してたの?

 妙に依頼を受ける事に感謝していたからもしかしたら〜なんて話していたんだけど、本当にそうだったとは。


「試験要綱に試験会場へ車での来場は遠慮する様、書かれてませんでした?」

 思わず尋ねる。

 自分の大学受験の時の詳細に書いてあったか覚えてはいないが、下手したら何千人も集まる会場へ車で来るのは絶対にやるなって書いてあるだろう。


『体調が悪かったのだから、しょうがないのですよ。

 ただでさえ受験日は痴漢し放題なんて話がSNSに流れているのに、体調不良な娘が痴漢になんてあったら、試験で実力を発揮できないでは無いですか!』

 遠藤氏がかなりヒートアップしてきた。


 あ〜。

 そう言えば私が受験した時も、大学側でちゃんと再受験とかの対処をとるから被害届をしっかり出す様にって送られてきた試験要綱のどこかに書いてあったなぁ。


 まあ痴漢なんぞされたら被害届を出すかどうか以前に気分が滅茶苦茶になって、とてもじゃ無いけど実力なんて発揮できないんじゃない?


 そう考えると、開門前から並ぶぐらい早く来れば痴漢被害に遭う可能性は低そうだね。

 私相手に痴漢なんぞしようとしたら相手の社会的生命を潰すような報復をしてやるつもりだったけど、実は今まで一度も狙われた事が無いんだよねぇ。

 やっぱ、やられたら報復する気満々なオーラみたいのが出てるんかね?


 それはさておき。

「娘さんの体調は大丈夫ですか?」

 碧が親切に尋ねる。


『試験当日に鼻をかんでいたのですが、結局その後体調は悪化せず、今は試験も終わってストレスが無くなったせいかすっかり健康体です。

 もしかしたらあの浄化結界も健康効果があったかも知れませんね』

 遠藤氏が答えた。


 え?

 鼻をかんでいたから体調不良だろうって車で送ったの??

 確かに風邪を引くと鼻水が出やすくなるけど、鼻水が出始めてから本格的に体調不良になるまで数日掛からない??


 まあ、遠藤氏の口振りだと、体調不良は口実で本音としては痴漢被害を危惧していたみたいだけど。

 大人しくて痴漢に遭う様な娘さんなのかね?


「そうですか。

 取り敢えず、依頼は無事完了という事で問題ないですね?

 結界に関しては私の記憶にはありませんので何とも言えませんね」

 碧が話を切り上げた。


 そうだよねぇ。

 下手に報酬無しなお祓いを結果的にしちゃったってばらしたら五月蝿そうだ。


『承知しました。

 今回は面倒な依頼を受けて期待以上の対応をして頂き、ありがとうございました』

 遠藤氏が礼を言って通話を終えた。


「ちなみに除霊とか呪詛返しをした数って分かるの?」

 私ならそれなりに分かるけど、碧の場合は触れたら祓われちゃう特効ありだから却って分かりにくいんじゃないかと思うけど。


「受験生に取り憑こうとして近付いてうっかり昇天しちゃったらしい霊も何体かいたっぽいし、はっきりとは分からないね〜。

 それよりも何回かガッツリかなりな呪詛を返した感覚があったから、呪詛返しで死んじゃった人がいるかも。

 変な転嫁がされてないと良いんだけど」

 碧がちょっと心配そうに言った。


「うわぁ。

 大学の教員狙いかね?

 流石に学生程度で命に関わる様なヘビーな呪詛を掛けられる程憎まれることはないと思いたい」


 返しちゃった呪詛はもう分からないからねぇ。

 武下さんに機会があったら体調崩した職員や教員で亡くなった人がいないか、聞いてみたいところだね。


 取り敢えず、問題なく依頼が終わり、依頼主側も満足したようだから良かった。






 これでこの話は終わりです。

 明日はお休みしますが、また明後日から宜しくお願いします!

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― 新着の感想 ―
その娘さんが呪われてたとしたら 犯人は遠藤氏の同僚かも?
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