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基本的人権!

「取り敢えず試験が終わるまで、定期的に試験会場になっている校舎やその周辺を回ってみますね。

 何か見つかった場合はこの名刺にある番号へ連絡すれば良いですか?」

 武下さんに尋ねる。


 一応試験会場の全部の部屋を回るつもりだけど、考えてみたら試験中の生徒が取り憑かれていた場合、問答無用で部屋から引き摺り出す訳にはいかないし、私らが側に寄って行くのも駄目だよね?


 突然大声を出して暴れ出すとかする様子が無さげだったら試験が終わるまで待つべきだろうし、なんか明らかにヤバい方向へ傾きかけているなら試験官にその受験生を部屋の外へ誘導してもらう必要があるだろう。

 そこら辺の判断は武下さんに任せた方が無難そうだ。


「そちらはデスクに掛かる番号だから、一応のため今日はこれにお願いします」

 武下さんが名刺に携帯の番号を書き加えてくれた。


「構内図の赤で囲った場所が試験会場に使われている校舎です。休憩する時用に職員室の横の相談ルームを一つ確保してあるから、今案内するわね」

 武下さんが廊下の方へ身振りしながら言った。

 あら。

 私たち用に部屋を確保してくれたのね。

 助かる。


 まあ、相談ルームってそれこそ就職相談とか留学相談とかの際に使う部屋なんだろうけど、この時期は入試で職員側が一杯一杯で部屋を使う需要もないんだろう。


「では、早速見回りに行ってきますね」

 部屋に案内され、鍵も渡されたので荷物を一部置いて武下さんに挨拶して校舎から出た。

 勿論、私らの携帯番号は教えてある。


 事務局がある校舎を出てまだ受験生が続々と入ってくる敷地内をフラフラと歩いていたら、碧が急にちょっと目が虚ろな感じだった学生にぶつかっていった。

「あ、すいません」

 そんな事を言いながら相手の腕に触れた時に魔力が動いたようだが……悪霊は憑いてないよね??

 ぶつかられた受験生はちょっとびっくりした様に碧を含めた周囲を見回していたが、すぐにそのまま受験会場(多分)へ進んで行った。


『どうしたの?』

『ちょっと熱と風邪薬とで朦朧としてたから、少し体調を整えてあげた』

 念話で尋ねたら碧が教えてくれた。

 うわぁ、親切〜。


 まあ、体調管理も自己責任の一つとは言え、アホな家族やクラスメートに風邪を移されて人生を台無しにしたら可哀想ではあるけどさ。


 実力を発揮できても試験に落ちるかもだが。でも、少なくともちゃんと実力を発揮できれば後悔は残らないだろう。

 いや、落ちたら後悔するだろうけど、それは自業自得だね。


『なんかさあ、校舎全体で試験中にうたた寝しないような術を掛けてあげたり出来ない?』

 碧が更に聞いてきた。


『どうしたの、なんかめっちゃお人好しなこと言ってるけど。

 ちなみに校舎全体で目を覚まさせるのは無理かな。

 興奮してハイテンションになるような結界を張って眠らないようにするのは出来なくはないけど、そんな事したら試験で寝落ちしない代わりにケアレスミスを連発する可能性が高まるから、やらない方がいいでしょ』

 つうか、受験の本番で寝る人なんているの??


『なんかねぇ、近所の親しかったお姉さんが一度受験で失敗したんだよねぇ。

 東京まで受験に行ったんだけど、泊まったビジネスホテルのエアコンが壊れてたか何かで死ぬほど寒かったらしくて、朝起きたら熱が出てたんだって。試験はそのまま受けたものの、午前中は熱で朦朧としてて、薬を買って飲んだ午後は今度は眠くて朦朧としていたらしくて、結局落ちちゃったの。

 私がそこに居たら治せてあげたのにって思ったのを思い出しちゃって』

 碧が妙に親切過ぎる行動をしている理由を教えてくれた。


 へぇぇ。

 ビジネスホテルのエアコンかぁ。

 そう考えると、受験を受けるのにホテルへ泊まるって中々怖いね。

 変な人が同じフロアに居るせいで睡眠妨害を受ける可能性だってあるし、そうじゃなくてもエアコンがボロくてガタガタ音がするだけでも眠れなくなりそうだし。

耳栓は必須かな?

 でも耳栓していると目覚ましの音が聞こえないかもだから駄目だよね。スマートウォッチを持っていて、それの振動アラームで起きれる自信があるなら大丈夫かもだけど。


『そう考えると、風邪避けのお守りとかあったら良いのにねぇ』

 碧のお守りは痛みを緩和する効果はあるから肩こりや腰痛には効くけど、風邪をひかないようにようにする効果は無いからなぁ。


『それを言うなら、受験生用に寝ちゃわないお守りを作ったら?

 不眠用のを逆の効果で作ったら可能じゃない?』

 碧が提案してきた。


『確かに受験生用に湯島神社とかで売ったらバカ売れするかもね〜。

 でも試験日当日に寝ないように使うだけなら良いけど、毎日の勉強時間を増やすために睡眠時間を削るのに使われたりしたらヤバいから、売るのは無しかな〜』

 人間は寝ないとそのうち幻覚を見たり妄想するようになったり、最後には死ぬ可能性だってあるから迂闊に眠気を散らす魔道具は世に出せない。


『まあ、変に噂が流れてブラック企業の社畜な人に買われたりしたらマジで過労死の原因になりそうだし、やめた方がいいか』

 碧も頷いた。


 寝るのは生存権に繋がる人間の基本的人権なんだから、会社の為にそんなもんを買おうと思うほど洗脳されているなら、とっ捕まえて会社を辞めさせるかせめて労働監督局に通報すべきだよね!




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― 新着の感想 ―
凛が他人に厳しいのは つらかった過去生の影響が大きいんでしょうね
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