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目がヤバい

「うわぁ。もう行列が出来てる」

 異常事態が起きたら対応と言う依頼だが、下見の段階で取り憑かれて準備してきていたら周囲への危険性がぐっと上がる。なので大学の入り口へ浄化結界を設定して、最初から憑かれていたら除霊出来るようにしようと入門時間の20分前に来たのだが……。

 既に門の前にそれなりな数の受験生が並んでいた。


 うわぁ。

 試験そのものまでまだ1時間以上あるのに。

「電車が止まったりしたら困ると思って早く来てるんじゃない?

 私は試験会場の側のビジネスホテルに泊まったから関係なかったけど、電車で行く場合はもしもの時に渋滞した都心をタクシーで行く羽目になっても大丈夫なぐらい早く行くって予備校の友達が言ってたわ」

 碧が指摘した。


 そう言えば、そんな話もあったか。

 私はどうせ卒業後は魔術を利用する為に何らかの形の自営業に進むつもりだったから、大学そのものは第一志望がポシャっても特に問題は無いと思っていた。だから普通に試験時間30分前で行動してたわ。


「まあ良いや。

 取り敢えず、さっさと中に入って結界を張ろう」

 一応学生証モドキを送ってもらったので、受験生の行列を無視して中に入れる筈。


 と言う事で、門の前で立っている警備員さんに学生証モドキを見せて中に入り、碧が門柱の脇にある植木の陰に立って浄化結界を設置する。


 普通の人が通る分には影響はない筈で丸1日ぐらいは余裕で保つ結界だけど、それこそ憑かれていたり、呪われている人が通って浄化してたら後で魔力を補填する必要もあるかもなので、一応試験が開始になったら見回りと言う名目で確認に来る予定だ。

 帰りの頃にはどうなっていても良いけど、昼食時に敷地を出る受験生も居るかもだからね。


「これって予備校のライバルを呪っているようなのがいて、ここで呪詛返しを喰らう羽目になったら騒ぎになりそうだね」

 なんかヤバい目つきでノートを見直しながら行列に並んでいる受験生を見ながら思わず呟いた。


 ある意味、余裕があるような天才肌な子はこんな時間から並ばないんだろうなぁ。

 今ここにいるのは、マジで必死なタイプで、ノイローゼ一歩手前でちょっと霊に囁かれたらあっという間に取り込まれても不思議じゃないぐらいな感じな子も多い。

 取り敢えず見える範囲には憑かれてるのも呪われてるのも居ないけど。


「まあ、呪詛返しはどうしようもないから、自業自得って事で」

 碧が肩を竦めながら設置が終わった浄化結界から離れて来た。


「さっさともう一方の門もやろう」

 何故か有名な正門は使われていないらしく、最寄駅二つ分の2ヶ所に入り口があるらしいんだよね。


 知る人ぞ知る脇道もどきな入口は他にもあると言う話だが、そこまでは付き合い切れない。


「こう言う形で依頼のついでに関係ない霊を除霊しちゃうのは退魔協会も何も言わないの?

 それとも気付いてないのかな?」

 古くからあるせいか大きな樹木の多い構内を歩きながら碧に尋ねる。


「多分口に出したら文句を言われるんじゃないかな。

 何と言っても、霊を憑けてきて入り口で浄化した場合は追加報酬を貰えないし」

 碧が応じる。


 そうなんだよねぇ。

 1除霊10万円の報酬は『異常行動をしている』と警備員に呼ばれるとか、私らが『この人憑かれてる』と職員に知らせて除霊した場合だから、入り口で自動的に誰にも見られずに除霊している分はカウントされない。


 とは言え、まあ待機するだけでも3日間でかなりの報酬になるし、出来ることはやってあげようという優しい碧の判断で、何も言わずにこれはやっている。

 やっぱでも、退魔協会に知られたら対価なしな除霊扱いで文句を言われるのか。

 沈黙は金ってやつだね。


 二つ目の入り口にも既にかなり長い行列が出来ていた。

 碧が浄化結界を設置したすぐ後ぐらいに入門時間になったので脇道っぽい場所から見ていたら、かなりな勢いで受験生たちが中に入っていく。

 流石に百貨店の初売りバーゲンセールじゃないから走る人は居なかったけど、殺気立ってるね〜。

 早く席に着いたところで試験結果は変わらないだろうに。


「これじゃあ事前に見つけるのは不可能だね」

 続々と入ってくる生徒を見ながら思わず溜め息が漏れた。


 私の受験時だって人が多かったけど、ある意味緊張でちょっと視野狭窄状態だったからか、こんなに人が多いとは気付いてなかった。


 それにこの大学の方が選りすぐりのエリートを集めるってことでマンモス校な私らの大学よりは生徒数が少ない筈だから、受験生の数も少ないだろうと思っていたのだが。

 記念受験と言うかワンチャン狙いなダメ元受験も多いのか、人数が想定以上に多い。


「これだけのストレスマシマシな人が集まると、霊が変な感じに活性化しても不思議は無さそうだね〜」

 碧も周囲を見回しながら言った。


「コンサートホールとかスポーツ会場みたいな明るい熱狂じゃないからねぇ。

 普段だったら大人しい霊まで吸い寄せられて悪戯をし始めても不思議は無さそう」

 と言うか、退魔協会の調査員はこんな状態になる前に来たのに、何を視て霊障の可能性が高いって判断したんだろ?


 下見に来て憑かれた人を確認でもしたんかね?

 でも、その時点で霊は居なくなっていたせいで簡単な除霊で済まなかったんだよね?


 まあ、良いけど。

 取り敢えず、依頼の担当をしている大学の職員さんに挨拶に行くか。




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― 新着の感想 ―
それだけの人数がいたら 呪われてる子や呪ってる奴とかがいそうですね
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