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躾け

『藤山さんの通報のお陰で厄介な放火魔を早期に逮捕できて、大変助かりました。

地元の警察の皆も、感謝の意を伝えてくれと言っていました』

放火魔が捕まった翌日の夕方、田端氏から電話があった。


てっきり朝一に電話があるかと思っていたので、無かった時点で電話は数日後になるかと思っていたのだが、どうやら色々と放火魔の部屋の捜査や尋問で忙しくてちょっと後回しになっただけなのかな?


「ちなみに犯人は何件くらいの放火を自供したんですか?」

碧が興味深げに尋ねた。


考えてみたら、私は放火そのものが何件あったかも知らないから、自供に数も想像つかないな。


『自分からは情報提供しないのですが、この近辺であった火事に関して一件ずつ聞いていったら自分でやったと5件ほど認めました。

もっとある可能性が高いだろうと思われるので、被疑者の部屋にあった放火用の道具と整合性のある火事も関東圏で確認しています』

田端氏が教えてくれた。


「関東圏とは随分と広く見てますね。

そんな遠出して放火していたんですか?」

と言うか、母親が家を売ると言い出したからストレスが限界突破して近所で放火を始めたんじゃ無いの?

もしかしてここらで放火してなかった夜は遠出して放火してた??

でも、あの横田家には車は無かったが……電車で遠出して放火するほどのエネルギーがあったんかね?


『被疑者の母親に尋ねたところ、被疑者はオンラインで時折働く様になる前は派遣社員として働いていたらしいのですが、数ヶ月働くと喧嘩別れ的に契約を切られると言う流れを繰り返していたようで、十年以上の期間に渡ってあちこちへ派遣で行っているのです。

被疑者と話した心理カウンセラーによると、その様な派遣の仕事でもストレスが溜まって周囲に攻撃的な報復として放火していた可能性はあるかもとの事なので、火事の発火詳細に加えて時期と場所と派遣先の情報を合わせて確認しているところです』

田端氏が言った。


うわぁ。

派遣で来たおっさんに注意して険悪な雰囲気になったら残業帰りに放火していた可能性があったかもってやつ??

ヤバすぎじゃん。


とは言え、途切れ途切れではあっても一応派遣社員として今まで働いてはいたんだね。

完全に親に寄生していた訳じゃ無いのは良かったが……オンラインで働ける様になって、家から出なくなったら母親の引き篭もりに対する危機感が高まっちゃって追い出しを喰らうことになった?


まあ、家の中のことを全部母親に頼っているんじゃあ老齢な親が要介護になった時に何も出来なそうだから、自分で動けるうちに家仕舞いしてさっさと高齢者用施設に入るのが正解だとは思うけどね。


寝たきりになった自分の周りをGが徘徊しまくるような家で人生の最後を迎えるなんて、誰だって絶対に嫌だろう。


「ちなみに母親の方は息子の放火癖に関して、疑惑を感じていたんですか?」

碧が尋ねた。


『はっきりとは認めていませんが……自分も後数年しか息子の面倒を見れないだろうから、ここで一度しっかり刑務所に入って規則正しい生活習慣を叩き込まれるのも良いことだろうと言ってましたね』

微妙に苦笑混じりな声で田端氏が答えた。


うわぁ。

自分じゃあもうそんな体力も気力もないから、躾けと職業訓練でもやって貰え!って感じ??

中々思い切った考えだねぇ。


こう言う時って犯人の家族も身バレしてネットで叩かれまくって実生活にも支障をきたす事が多いらしいけど、大丈夫かね?

まあ、近所の火事はまだニュースで報道されてはいない気がするから、逮捕のニュースも報道されなければワンチャン大丈夫?


出所後に関しては、犯罪歴があったら仕事を見つけるのが難しそうな気もするけどね。それこそオンラインのフリーランスで働ける様なシステムエンジニア系の訓練でも刑務所で受けられたらなんとかなるのかも?

たとえ誰も亡くなっていないにしても何件も放火をしている場合に、懲役がどのくらいになるのか知らないけど。


「まあ、取り敢えずこれでうちの近所で消防車のサイレンが鳴り響く頻度は下がりそうですね。

どうなったか教える為に連絡していただき、ありがとうございました」

碧があっさりそう言って、電話を切った。


「ニートな息子を躾け直すのに刑務所も悪く無いってすごい考え方だね」

中々シビアな見方だ。


「まあ、寄生する息子を追い出して高齢者施設に入ったら息子が浮浪者になったなんてことになるよりは余命が長そうだから、そう考えると悪く無いと割り切ったのかも?」

碧が指摘した。


確かにねぇ。

浮浪者になるよりは刑務所入りする方が長生きするかも?

と言うか、これに味をしめて、出所した後も住む場所に困ったら放火して捕まろうなんて考えないと良いんだけど……。


私らに出来る事はもう無いのだ。

気分を切り替えて、ハネナガの巣に使う古くて手触りの良い布の選定に取り掛かろう!




微妙な終わりからになってしまった気もしますが、これで今回の話は終わりです。

明日はお休みしますがまた明後日からよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
>数ヶ月働くと喧嘩別れ的に契約を切られる それはもう社会人としてやってけないレベルですね 灯台守でもするしか……
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