火事
「うわぁ、ハリウッドの辺、山火事で物凄い事になったみたいね。
以前のも山火事で大騒ぎになったと思ったけど、あれって今回に比べると規模が小さかったのか、場所が違ったのかな?」
ネットで焼け野原になったハリウッドの高級住宅地の残骸の写真を見て、碧がうげぇと声を上げた。
「3億円でも凄いのに、3億ドルの家が燃えたって人のコメントがこっちの記事にあったけど、結局あの高級宅地の豪邸ってどれもウン億ドルもする様な屋敷だったんだろうねぇ。
どれだけ保険でカバーされてたんだろ?」
と言うか、保険会社が破綻しないかね?
日本の地震保険みたいに国が一部負担している上に補償額に上限があるなら一気に被害が出ても保険会社が破綻しない様になっているのだろうけど、普通の個人宅の不始末からの出火を想定している火災保険がこう言う大規模な山火事に適用されると保険会社的にはヤバそう。
「アメリカ人って日本人ほど保険を掛けてなさそうなイメージだけど、住宅ローンがあるなら保険は必須だよね、多分」
碧が言った。
「そう言えば、フロリダとかハリケーンがよく来る地域では水害をカバーする民間の保険が無くなっちゃったって新聞で見た気がする?
カルフォルニアもしょっちゅう山火事がある上に補償金額が大きな豪邸が多そうだから、それこそあっちも山火事の場合はカバーしませんなんていう火災保険ばっかりになってたりして」
そんなのが許されるのか知らないが。
「まあ、地震で発生した火事は補償しない火災保険が許されるんだから、山火事で発生した火事は補償しない火災保険があっても不思議はないかもね。
そうすると一度山火事が起きたら破産する人が大量発生しそうだけど」
碧が相槌を打った。
「考えてみると、去年から一昨年ぐらいにハワイの山火事でめっちゃ被害が出てたし、同じ年かその翌年には東海岸側の山火事が凄くてマンハッタンが何日も煙かったって話だったし、カルフォルニア州の山火事は今回だけでなく何年か前にも大規模に起きてるよね?
アメリカって温暖化の被害と思われる異常気象のせいで悪化した山火事の被害をかなり定期的に受けている筈なのに、温暖化を否定する政治家を大統領に選ぶんだから現実逃避が凄いねぇ」
ちゃんと現実を見つめるトップを選ぶ方が、災害を防ぐシステムをしっかり構築してくれて良いだろうに。
「自分が不便を我慢したり、炭素排出を削る為に高い費用を払うよりは温暖化なんて無いって主張して、実際に災害が起きたら誰かの陰謀だって主張する方が楽なんじゃない?」
碧がかなり救いのない指摘をした。
身も蓋もないが、そうなのかもねぇ。
元々貯蓄よりは借金が好きな国民性だって話だし。
現実を否定する方が気楽で良いのかも?
「そう言えば、炎華みたいな炎系の幻獣だったらああ言う山火事でも鎮火できるの?」
ふと碧が窓際に日向でふくふくと暖かい日差しを楽しんでいる炎華に尋ねた。
『私らはああ言う炎を食べるので、丁度いい感じに制御するのは得意ですが完全に鎮火までするのは苦手ですね〜。
でもまあ、自分の傍の火だったら山から離れて住宅地まで燃え広がらない様にするのは可能ですよぉ』
炎華がのんびりと答える。
そっかぁ、あっさり炎を全部吸い込んで鎮火って訳にはいかないのか。
「ちなみに、白龍さまだったら嵐を呼んで雨で鎮火出来ますか?」
碧が尋ねる。
『地域で雨が長らく降っておらんから火事が広がるのじゃろ?
海から水を呼んで降らすのは可能だが、塩水をばら撒くと人はそれなりに困るのでは無いかの?』
白龍さまが尻尾で軽く新聞を叩きながら聞き返してきた。
あぁ、確かに。
塩害はヤバいよねぇ。
家が丸焼けするよりは庭の塩害に対処する方がマシだろうけど、頭が痛い問題にはなるんだろうね。
「そう言えば、最近乾いているせいかここら辺でも火事が多いですが、あの程度なら隣で火事になったりしても鎮火出来ます?」
ふと気になって尋ねた。
近所が火事になると飛び火したら困るし、そうじゃなくても煙いのは迷惑だからさっさと鎮火出来るならして貰いたいよね。
『ここら辺の家や建物に火が付いた程度なら消せますよ〜。
でも、火事が迷惑なら火をつけて回っている人間を止めた方が早いかも?』
炎華が言った。
「不注意からの火事はどこに出るかは不明ですからねぇ…-。
うん??」
適当に答えてから、炎華の言っている事が頭の中に入ってきた。
「え、ここら辺で最近よく起きてる火事って放火なの?!?!」