今後の為
「凄いよ、言う事を聞きやすくなる薬を碧に飲ませて、どこぞの自動車メーカー元社長顔負けに箱に入ってプライベートジェットで違法出国するのを納得させるつもりみたい。
青森の方でハニトラに成功してパスポートを申請させた人間が既に誰か捕まってるらしいから、苦肉の策ってヤツだね」
マンションに帰り、ハニトラ男のやり取りから抜き取った情報を碧に伝える。
男が誰かと落ち合って悪事の相談をしたら知っておきたいので、クルミはそのままハニトラ男に付けてある。
バイト以外先の普通の客や同僚以外と会ったら知らせてくれとクルミには頼んでおいた。
「マジ??
でも、薬で言う事を聞かせる程度なんだ?
ぶん殴って誘拐するかと思ったけど」
碧がちょっと意外そうに聞き返す。
「碧が幻獣と契約していると言う話もあるって言ってたね〜。
ちなみに、薬を出してきた時点で天罰を下せますか?」
最後の方は横に現れた白龍さまに尋ねる。
「あと、どの程度の範囲まで天罰が行き渡るかも分かるなら教えてもらえます?」
碧が付け加える。
『殺そうとしたならばそれなりに報いを受けさせる事が出来るが、形だけでも納得した形で連れ去ろうとする程度じゃからのう。
本人と相談した直接の上司はどうとでも出来るが、もっと上の今回の騒動を決めた人間まで遡るとなると程度か期間が限られる事になるじゃろうな。
この国に来ているならばもっと力を及ばす事も可能だが、異国となると氏神としての権能が薄れるから下せる天罰も限られてくる』
白龍さまが答えた。
「外国だとダメなんですか?」
碧が尋ねる。
『儂が龍として飛んでいって異国の都市を焼き尽くすとか嵐で押し流すのならば日本だろうと異国だろうと関係ないが、天罰と言う人に祀られて得た権能を振るうには人の総意と言うか、信仰心の一致と言うかが重要になるからの。
日本国内ならばそれなりに龍の氏神に対する畏れと信仰があるが、大陸ではないじゃろう?』
「え、じゃあもしかしてキリスト教圏だと天使とか悪魔っぽい存在として畏れられたり信仰されている幻獣とか神族が居るんですか?」
畏れも力を齎すなら悪魔としても力を得られそう?
『昔はおったのう。
元々は多神教の神として遊びながら人にちょっかいを掛けていたのが、その信仰が廃れてからは適当に新しい宗教に当てはまる存在だと誤認させて信仰心や畏怖を得ていたのもおったの。
異国も日本と同じで最近は境界門を閉じてこの世界を去った者が多いが』
白龍さまが言った。
最近ってどの程度の年数か知らないけど。そっかぁ、白龍さまの欧米バージョンが海外には居たのかぁ。
少数は今も居るだろうし、そう考えると益々海外に出るのは危険だね。
でも、考えてみると中華圏内ってそれこそ遣唐使の後ぐらいから仏教も廃れて儒教が盛んになったんだっけ?
あれは偉い人とか家長に従えって言う権力者に都合の良い考え方って感じだから、氏神さま的な存在は生み出さないよね?
いや、他にも仙人とか道教とかって考え方も中国原産だったっけ?
となるとそっち系の現地神的な存在もいるのかも。
どちらにせよ。
「取り敢えず、力が及ぶ範囲で加担した人間は嘘を付けなくなる様にでもして下さい。
これって期間限定にした方が強度が高まりますよね?
だとしたら、1年間は嘘をつけないって感じで」
碧が言った。
どのくらい上の政治家が関与しているか、興味がわくところだねぇ。
それこそ国家元首とか大臣クラスが1年間嘘を付けなくなったら権力の場から蹴り落とされそうだけど……中国の国家元首だったら馬鹿正直に『こいつ殺す』みたいな事を部下にだったら言ってもOKかも。
他国との外交は流石に出来なくなるだろうけど。
「取り敢えず、碧が薬を出されるまで私も着いていって、出された瞬間に相手は昏睡状態にさせて遠藤氏か田端氏を呼んで逮捕させれば良いかな?」
嘘をつけなくする天罰だったら相手を無力化は出来ないから、白魔術か黒魔術で昏倒させないとだね。
「かなぁ。
何回か会わなきゃ流石に嘘くさいよねぇ。
ああ、めんどい〜〜!!」
碧が嘆きながらソファに身を投げ出した。
考えてみたら、ハニトラ男はどうやって碧とそんだけ出逢いの場を作るつもりなんだろ?
下手をしたらその前に政府の公安とか退魔協会に捕まりそうだけど。
天罰パワーを知らしめた方が多分今後の為には良いよねぇ?