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時効前だと?

「帰りにその右の方にあるとか言うもう一つの慰霊碑も見て行こうか」

碧の祝詞で清められた空気を深呼吸して胸一杯吸ってからゆっくり吐き、もう一度深く息を吸って気分を清めてから碧に提案する。


さっきまでここは穢れで重苦しい感じだったのが、すっかり綺麗に澄んだ雰囲気になっている。


別に新年だろうと空気が綺麗って訳じゃないんだけど、何とは無しに碧が清めた後だと寒いけど澄んだ空気が凄く清廉な感じがする。

やっぱ新年は穢れマシマシ状態よりも綺麗な状態で過ごしたいよね〜。

正直言うと、新年だけじゃなくていつでもだけど。


まあ、新年だとまだトラックとかがあまり動いていないから空気が綺麗なのかも。

私たちは4日に電話を受けて5日から仕事始めになっちゃったけど、通常のビジネスは月曜日の明日までお正月休みな所が多そうだし、今日はまだ日本中の空気が比較的綺麗な状態な可能性が高そう。


とは言え、もうそろそろ帰省ラッシュで高速とかは車の交通が増えるんだろうけど。

が、お盆とは違って冬だと地域によっては積雪の危険があるから、夏よりは電車で移動する人が多いかも?


「そうだねぇ。

まあ、あっちの奥のがここを清める余波で綺麗になっちゃうぐらいだから、残っているのも大したことないかもだけど。

それよりも、本家の蔵の地下って言うのが気になるわ〜。

今って殺人に時効が無いってどっかで聞いたけど、流石に先祖の殺人だったら関係ないよね?」

碧が霊に示されら方向へ歩き始めながら応じた。


「殺人犯が既に死んでいれば関係ないでしょうね。

生きているぐらい最近の事件だったら、時効が廃止された時点で25年経ってなくて時効前だった殺人事件はずっと刑事罰の対象になるんじゃないかな?」

詳しいことは知らないけど。


あの教えてくれた霊に、いつぐらいの死体なのかもう少し詳しく聞くべきだったかなぁ。

でも人の死とか苦しみとかの話題を掘り下げて話している間に怨みとかが思い出されてきちゃったら不味いかと思って遠慮しちゃったんだよねぇ。


「まあ、悪霊が本家の近くに封じられているならその霊に詳細を聞けばいいか。

あまり人様の家の闇を暴くのも微妙だけど」

碧がため息を吐きながら言った。


「確かにね。

古くから続く金持ちの家なんて、敷地内に一つや二つの骸骨が埋められてそう。

それこそ高度成長期ぐらいになるまでは、日本でも人の命って軽かったんじゃないかな?」

じゃなきゃ意味もなく戦争で若い少年たちを特攻隊として木製の飛行機モドキに乗せて自爆しろなんて真面目な戦略として考えないと思う。


前世でも貴族が指揮官になっている隊に付き添いをする羽目になると、平民の雑兵が使い捨てに近い形の任務を命じられているのを時折見た。


まあ、そう言う指揮官はさっさと引退するか任務中の不幸な事故で死ぬことが多かったけどね。


「でも、高度成長期直前の殺人だとしても1970年から25年で時効って考えると、今は起訴出来ない事件になってる可能性が高いね。

だとしたら、悪霊が人に害をなしそうなぐらいヤバい状態じゃ無い限り、言及して波を立てる必要は無いかも」

碧が言った。


そっか、時効が撤廃されたのが2010年ぐらいって読んだ気がするから、それから逆算して25年って言うと1985年?

流石にその時期だったら人の命の重さも今と大差ないぐらいの扱いになっていて、殺人を犯したとしても蔵の地下に埋めたりはしないだろう。


「依頼人に会った時や杉原拓海氏の部屋に行った時に特に近くで穢れを感じなかったから、かなり昔の話な可能性が高いよね。

流石に本家の蔵で死体を埋めたら穢れが出てきたって退魔師や宮司を呼んで鎮魂させたり悪霊を封じさせたりは出来ないでしょうから、時間経過で悪霊が弱るほどってなると大分と前になりそう」


表立って争っていた昔の跡継ぎ争いだったら負けた方の人たちの霊が悪霊化したから慰霊碑を作ってくれって依頼するのは可能だろうけど、家でこっそり愛情の縺れとか借金の取り立てとかで人を殺して埋めてた場合、悪霊祓いに人を呼んだら悪事がバレて不味いだろう。


そう考えると、きっと蔵の下に埋められた死体って言うのもめっちゃ古いんだろうなぁ。

と言うか、古いにしても死体を蔵の地下に埋めるよりは普通に山とか森の中に埋めれば良いのに。

イマイチ蔵の地下に誰が閉じ込められていてそのまま埋められちゃったのか、想像するのも怖いなぁ。


そんな事を考えながら教わったもう一つの慰霊碑に来たら、こちらの霊は深く眠っている様子で瘴気も無かった。


「これだったらそれこそ慰霊碑を壊されても起きないかも?」

碧がちょっと首を傾げながら言う。


「だね。

と言うか、慰霊碑が無くなる方が自然に還ってスムーズに来世へ渡れるかも?」

まあ、私らが慰霊碑を壊す謂れはないけど。

岩も苔に覆われて殆どそこら辺の岩と同じような見た目になっているし、こっちは何もしなくても良いかな。


「そんじゃあまあ、最後に本家の蔵の下とやらをサラッと確認してみますか」

碧がパンっと手を叩いて本家の方へ向い始めた。


さて、何が残っているかなぁ。



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― 新着の感想 ―
碧さんのお清めは特別料金を貰いたいですね
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