自分で情報を広めてるなんてバカじゃん
『お正月の間に一族が集まった際に子供が敷地内を探検していて慰霊碑を見つけて落書きをしたら悪霊に憑かれたとの事で、除霊の依頼が来ているのですが・・・お願いできますでしょうか?』
三が日が過ぎ、4日目ものんびりお守りを作って過ごしていたら退魔協会の遠藤氏から電話があった。
お正月に古い本家の敷地へ一族皆で集まるのってかなり危険一杯なようだね?
ヤバい慰霊碑がある様な旧家は子供がいる親戚は招かないか、慰霊碑そのものを前もって浄化しておいたら??
後から慌てて退魔協会に依頼を出すより安全そう。
もっとも、うっかり慰霊碑だと思って除霊させようとしたら実は大槻家みたいな守り神だったなんて事があったそれはそれで不味いだろうけど。
祓おうとなんてしたら怒って家を見放しそう。
まあ、真面目に祀っていなかったら近いうちに見放されていた事に変わりはないだろうから、祟り神になる前に平和に道を分つ方が良いかな?
別れた後は没落しそうだけど。
「構いませんよ」
頷いて見せた私を確認して、碧が応じる。
神社でお祓いするんじゃダメって事は、強い悪霊なのか守り神系なのか。
それともちゃんと祓える神社を知らないとか?
ヤバい慰霊碑が本家の敷地内にあるような旧家だったらちゃんとした寺社とも伝手がありそうなもんだけどねぇ。
もしかしたらやらかしちゃったのを地元の人間に知らせたくないって言うのもあるかも?
まあ、どうでも良いんだけど。
『そう言えば、ご実家が鎌倉大槻家の若奥様から突撃を受けたらしいですね。
あちらは大丈夫でしたか?』
明日向かう事になり、詳細を決め終わったところで遠藤氏がさり気なく聞いてきた。
うえぇぇ。
何で知ってるの??
あと、『あちら』って藤山家の事、それとも大槻家の事?
「一般の方が参拝にいらっしゃる神社ですから、来訪者は断れないので」
碧が漠然とした答えを返す。
『大槻家の当主から、三が日だと命に関わる緊急事態でも対処してもらえないのはどうかと思うと苦情を頂きまして。
最終的には諏訪神社を頼ったと仰っていましたが』
遠藤氏が情報源を教えてくれた。
マジか・・・。
これから守り神を失って没落一直線な事実を自分から広めてんの、大槻家の当主??!!
アホじゃん!
それこそ、大槻家の事業とかに関連する株とかがあるなら、今こそ売り払うべきだね。
運が下向くだけでもヤバいのに、一族全員が救急車で緊急搬送されるぐらいの力を持つ存在を失ったって言うのを身をもって体験した筈なのに、その反動がどうなるか分かっていないなんて・・・。
信じられん。
マジで大槻家関連の上場株が無いか、調べて空売り取引できないか確認してみようかな。
これだったらインサイダー取引にならないよね?
企業のビジネスでも人事でもない情報なんだから。
単に大槻家の上層部の人間がどうしようもないアホだって事実を知っただけだ。
まあ、ワンチャン事業が傾いてどっかに買収される事になったら株価が上がる可能性もあるかもだけど。
そう考えると、変に株取引なんぞに手を出さない方が良いかなぁ。
「昏睡状態にあるお子さんの命に関わると言う話でしたし、実家の社務所で大騒ぎして退去するのを断固として拒否したらしいので、特に予定も入っていなかったので行ってみました。
幸い、白龍さまとお顔見知りだったので特に拗れる事なく解決できましたよ」
碧が少し情報を足す。
流石にこれ以上は依頼主のプライバシーにも関わるから言えないよね。
と言うか、事件があった事自体が秘匿すべき情報だと思うんだけどねぇ。
大槻家の当主はかなりうっかりなのか、死にそうになったのが余程腹立たしくてどうしても文句を言いたいと言う欲求を抑えられなかったのか。
退魔協会も態々こっちへ確認してくるって事は、日本各地の氏神さまとか守り神のデータベースでも作って情報を管理しているんかね?
悪霊だと言われて出向いたら祟り神だったなんて場合に心の準備が出来ているよう、そこら辺の情報収集は頑張っているのかな?
最近は跡継ぎが居なくて旧家の本拠地が売り払われるなんて事もあるしねぇ。
うっかり氏神さまの居る土地が外国人に買われたりしないように、情報収集はきっちりやっているのかも?
日本の民を見守ってきた氏神さまが外国人に『こんにちは〜、今度ここを買った者です!ちょっとご相談なんですが、大陸の方へ引越しなんてどうでしょう?』と相談されてブチ切れるとか、頷いて国を出てしまうとかなんて事があったらもどっちも困るからねぇ。
共産党が何よりも至高だとする国に氏神さまの御神体を持って行ってもちゃんと祀ってもらえるとは思えないから、祟り神化は待ったなしな気がするけど。
と言うか、氏神さまって長距離移動が出来るんかね?
まあ、どうでも良い事だけど。