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これからが大変だよ

「一族へ守護を与えていた白蛇さまはここ数年放置されていた契約違反の上に、御神体を投げ壊されるなどと言うとんでもない行いに怒り狂って祟り神化していましたが、なんとか説得して一族を祟り殺すのだけは思いとどまって頂けました。

『契約は大槻家側から破棄されたので、この地を離れる』と出て行かれましたので、契約破棄の反動でしばらく体調は悪いでしょうが、自然に回復するでしょう」

本邸に戻り、離れへの廊下をウロウロしていた大槻さんに碧が説明した。


「契約違反、ですか?」

大槻さんがちょっと呆気に取られた様に聞き返してきた。


「氏神と氏子の関係も、守り神と守られる一族の関係も、大元は人間側がお供えと感謝の祈りを捧げる代わりに神から守ってもらうギブアンドテイクの契約関係ですよ。

人間側が最初の約束を守らないのに、神の方が加護を与え続ける訳がないでしょう?」

碧が指摘する。


本来ならば、その義祖母が入院して祈りやお供えが絶えた時点で契約終了だったんだろうけどね。

それなりに先祖から長い年数を共にしてきた一族への情があったし、祈りから得た力の蓄積がまだあったから白尾さまは完全には見捨てずに、契約破棄の反動がない程度には加護してやっていたらしい。


とは言え、祈りがないのに加護を与え過ぎたら白尾さまの方が弱ってしまうから、今まで一族に与えられてきた幸運が反転しない程度の必要最低限だったらしいが。


幸運が無くなったせいで益々白尾さまへの感謝の念が無くなり、悪循環でお互い関係が悪化したんだろうねぇ。


と言うか、ちゃんと真面目に祈っていた大奥様とやらが入院した途端に今まで通りに上手く事業とかが行かなくなったんだったら、何が原因か気付けよって気がするけどねぇ。


マジで自分達一族の繁栄は自力で成し遂げたと思っていたんかね?

まあ、大昔からちゃんとお供えと感謝の念を忘れずに続けてこられた律義さは『自力』の一部と言えなくもないけど、それを投げ捨てたからねぇ。


これからの没落は自業自得だ。


「え、じゃあ白蛇さまは本当に実在したんですか?!」

呆気に取られた様に大槻さんが声をあげる。


「実在するからこそ、その御神体としてきた岩を割ったら一族全員が倒れて救急搬送する羽目になったんじゃないですか。

そこまで力がある存在との関係終了はもっと拗れる事が多いんですが、今回は誰も死なずに終われそうで良かったですね」

病院から退院する頃にはチラホラ運の反転の効果が感じられる様になっているかもだけど。


ただの幻獣だったらどれ程強くても運なんて言う不確かなものを左右できないと思うんだが、神として祀られると新しい権能がいつの間にか身につくらしい。

旱魃時に雨を呼び込んでくれたり、戦で助けてくれるって言うならまだしも、運なんて言う形がないものを与えられていたら・・・それが奪われる時の反動は対処のしようがなさそうで、怖いね。


藤山家と白龍さまの関係ってどうなんだろ?

大槻家みたいに大金持ちになっていないから、加護で享受しているものが違いそうだけど。


それはさておき。


「武はもう大丈夫なんですね?!」

白尾さまとの契約終了の余波に関しては実感が無いのか、大槻さんは息子の事を優先して聞いてきた。


「大丈夫な筈ですが、一応確認の為にもう一度見に行きましょうか」

碧が言った。


そうだね、そこそこ長い間御神体としていた岩を乱暴に投げ壊したのだ。

ちょっと追加で恨まれている可能性もゼロでは無い。


まあ、白龍さまの愛し子である碧が事件解決に為に呼ばれているんだから、変に手を出すことは無いとは思うけど。


「そうですね、お願いします」

大槻さんが頷き、先ほど来た廊下を戻り始めた。

広い上に離れが複数あるから、案内して貰えると助かる。


没落したらこの敷地も切り売りするんかな?

と言うか、折角馬鹿でかいんだから、敷地全部をモールとか工場とか流通センターにでもする為に纏めて売り出す方が高く売れるんじゃないかな?

車所有前提な場所だから、切り売りで家として売るにはちょっと不便で値切りされそう。


余計なお世話な事を考えつつ歩いていたら、見覚えがある部屋に辿り着いた。

ベッドの上の少年はまだ目を覚ましていないが、かなり呼吸が楽になっているし顔色も良くなっているのが素人の目にもわかる。


「武!」

大槻さんがベッド元に駆け寄り、武少年の手を取って声をかける。


流石に涙ぐんでいる母親を押し除ける訳にもいかないのか、碧がベッドの向こう側に回って武君の頭に触れて、あっさり頷いた。


「熱も下がってきてますし、特に体に異常もない様ですから今晩か明日には目が覚めていると思います」

碧が大槻さんに告げる。


白尾さまも武少年に置き土産をしていかなかった様だし、これでこの案件は一件落着ってとこかな?


既に退魔料金は現金が碧ママに押し付けられてあるので、あとであれをこっちに振り込んで貰えば良い。


・・・大槻さんに領収書を出すべきなのかな?

まあ、退魔費用が確定申告の控除項目に当て嵌まるのかはかなり怪しいから、特に無くても良い気がする。


と言うか、どんな職業だったら退魔協会への支払いを正当な費用として課税所得からの控除が認められるんだろ?


柳原さんに聞いたら教えて貰えるのかな?

ちょっと興味がある。



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加護が無くなった反動に気付くのはいつになるのやら
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