怒りっぽい?
「お久しぶり〜!
最近はどう?」
碧が美帆さんに声を掛ける。
諏訪に訪れた私たちは源之助を碧ママに任せ、今日は美帆さん宅へお土産のスイーツを手に温泉用の着替えとタオルを持って訪れた。
今回はプリンと小さなケーキを多めに。
フルーツが沢山載っててサイズも大きい前回のお土産を買ったケーキ屋は・・・久しぶりに値札をしっかり見たら半分ぐらいが一切れ1000円を超えるレベルまで値上げしていたので、今回は違うところで買ったのだ。
カカオの値段が高騰しているので、クリスマスケーキなんかをどこも原価を切り詰めつつも味を落とさない様に苦労して工夫を重ねていると言うのは新聞で記事を見たけど・・・フルーツ系も値上がりしていたらしい。
まあ、全般的にインフレで値上がりは起きているんだろうが・・・以前見た時は600円かそこらだった気がしたのに、随分と上がっていた。
どう考えてもインフレ率より高いけど、今まで値段を上げられなかった分も一気に反映させているんかね?
まあ、海外ではバーガーの値段が倍近く上がったりしている国もあるっぽいから、文句を言っちゃいけないんだろう。お土産は一点豪華主義よりも幾つか小さいのを複数持って行く方が相手の好みに合わなかった時にリカバリーが効くしね。
と言うことで、小さなプリンや小振りなケーキを適当に何種類かずつ買って来た。
これで美帆さんは好きなのを食べ、気に入らないのは旦那の会社の人なり近所の人なりにお裾分けすれば良いでしょう。
「元気よ〜!
樹もガンガン乳を飲んでガンガン泣いて、ちょくちょく寝て元気一杯って感じだし。
私も時々週末に退魔協会の依頼が近場であったら受けてるわ」
美帆さんが碧を軽くハグしながら答えた。
碧ママがハグ魔なせいか、碧の親族って軽くハグをする人が多いよなぁ。
まあ、女性にされるなら構わないけど。
「そう言えば、凛がちょっと実験っぽい感じで新しいお守りもどきを作ったんだけど、機会があったら試してみてくれない?」
霊泉に浸かり、まったりとリラックスした後にお茶と一緒にお土産のスイーツを食べながら碧が美帆さんに新作のお守りの話題を持ち出した。
「あの不眠用とか肩凝り用のお守りってやっぱ符だったのね?
霊気が籠っているし、どう考えても気のせいじゃない効果があると思ってたのよね〜。
今度は何を作ったの?」
美帆さんが興味深げに聞いてきた。
お守りが実質低級魔道具である事はあんまり広めたくないんだけど、新作のテストに協力してもらうのは流石に説明なしには出来ないからねぇ。
しかも赤ちゃんに対して使うんだし。
「一瞬だけ、怒りを散らす効果があるお守りです。
ここを軽くぎゅっと握ると効果が発生する筈なので、樹ちゃんがどうしてもイライラしていて泣き止まない時とか、美帆さんなり恭弥さんがイラって怒りを感じた時とかに試して貰えます?
一度使ったら3時間程度は再利用出来ませんが、3時間ぐらい経てばまた使える筈です。
多分数ヶ月は再利用し続けられると思いますが、その利用期限の確認もテストの一部ですね」
お守りの新作を取り出して美帆さんに渡す。
結局、以前お守りに使った雑草へ魔力を充填するのには2時間ではなく3時間程度掛かることが判明したが、まあ許容範囲内だろうと言うことでそれはそのままにしてある。
怒りをコントロールする為の大人用のお守りとして売るんだったら常時利用可能な状態にしておいて、怒りの感情が溢れた時にそれを散らす形が良かったのだが、赤ちゃん用だったらお腹が空いたとかおむつが濡れたとかに対する怒りは散らさない方が良いだろう。
なので、お守りを握ることで発動させる形にした。
「え、マジ??
夜泣き対策用のお守り?!」
美帆さんがぐいっとお守りを手に取った。
あ、握ったら起動しちゃうよ?!
まあ、現時点では誰も怒っていないから何も起きないとは思うけど。
「寂しくて泣いているとか、どこかが痛くて泣いているなら効き目はありませんが、特に原因が無くイライラして怒っているから泣き叫んでいるなら一瞬怒りを忘れる効果がある・・・筈です。
テストがイマイチ出来てないんで、想定通りに起動するかは確実じゃないんですが」
ちょっとイラっとする程度よりは強めの怒りに反応する魔法陣だから、日常生活ではそうそう利用する様な状況にはならないんだよねぇ。
感情に対応する魔道具ってマジで使用テストが難しいわ。
あとは樹くんがどの位怒りっぽいかにもよるかも?




