微妙な選択肢
「な〜んか、私にも碧のカリスマ祈祷師みたいに世の為になってお金も稼げるバイトみたいのが無いかなぁ〜」
碧も単純に羨望されるだけの立場じゃあ無いけど、やっぱ悪用ばかりが思いつく黒魔術師の適性よりはよっぽど良いと思う。
まあ、白龍さまみたいな存在が居ないと権力者に狙われる危険性が高くて使い勝手はそれ程良く無いかもだが。
「カリスマセラピストとかカリスママッサージ師になってダイエットとかを成功させるとか、どう?
意思誘導でリバウンドとかつまみ食いとかを防げそうじゃ無い?」
碧が提案してきた。
確かに、ダイエットは本人がちゃんと運動して食事制限が出来れば成功する可能性が高いんだから、がっちり意思誘導で誘惑に負けないように短期的にでも洗脳すればダイエットの成功率は高くなりそう。
とは言え。
「カリスマになれる程効果が早く出るとは思えないんだよなぁ。
ガッツリ早く効果が出るような無茶をさせたら体に悪いだろうし」
碧と一緒にやるならそこら辺も管理出来るかもだけど。
碧に頼らない稼ぎ方も欲しい〜。
「凛がその気になれば乙女ゲームの逆ハーヒロインみたいに男達をデレデレにさせて貢がせるのも可能じゃ無い?
金持ちそうなので決まった相手がいないのを狙って面白れー女路線でいくの。深入りしないでプレゼントだけ貰って、それを質屋で売り飛ばす!」
ふざけた感じで笑いながら言った。
「次に生まれ変わって状況が微妙だったらその路線も考えるけど、逆ハー貢がせ女なんて、カルマ値的にダメっしょ」
まあ、前世みたいな貴族社会よりは現代日本の方が金持ちでも政略結婚がガチガチな既定路線じゃ無いから(多分)、今世だったらどっかの金持ち男に擦り寄っても殺されるリスクは低いとは思うが。
とは言え。いくら退魔協会から独立した収入源が欲しくても、貢がせ女は無いな。
飢えてる訳じゃないし、退魔協会だってそこまで悪い組織じゃあ無いだろう。
多分。
前世の王族達との経験のせいで私が微妙に権力側な組織を信頼しきれないってだけなのだ。
少なくとも今現在の状況は自分の尊厳をそこまで犠牲にして代替収入源を探す必要がある程酷くはない。
「残念ながら、新興宗教でも始める気がない限り現代社会で退魔協会経由以外で魔術師が稼ぐのは難しくない?
最近はマジックもあまり流行ってない気がするし」
碧が指摘する。
確かにねぇ。
亜空間収納があるからちょっとしたマジックショーは出来るし、少人数相手だったら認識阻害とかを使って色々出来なくは無い筈だけど、最近はあまりマジックショーってテレビでも見ないし、廃れてるっぽいよね。
ある意味、アメリカとかに生まれてたらカジノに行ってポーカーとかで儲けるのも可能だったんだろうけど・・・でも魔術の存在が知る人ぞ知るな世界だったら、魔術師に対する何らかの対処方法は確立されてそうだよね。
まあ、単純にいつも勝つ人間は出禁にするだけかもだけど。
風系魔術師だったらパチンコとかの弾を微妙に動かせそうだから日本でもそれなりに儲けられそうなんだけどなぁ。
とは言え、パチンコで稼ぐよりは普通に退魔師として報酬を得る方が社会的信用とか自分のプライド的には良いとは思う。
「諦めて、普通に退魔協会の依頼をこなして稼ぐか。
あれだって人様のためになるサービスだしね」
前世の様に王家に仕えさせられてゴブリン転生する程マイナスカルマを積み上げるような生活よりはずっと良い。
ただねぇ。
国の機関だと思うとつい忌避感を感じるんだよねぇ。
選択肢があるなら別のところで収入を得たいって。
まあ、それでも普通の企業で社蓄になろうと思う程に忌避感を感じるわけじゃあないけど。
うっかり普通の企業に就職したら、パワハラ上司やセクハラ親父に意思誘導を使いまくっちゃいそう。そう考えるとモラル的危機を避ける為にも、普通の会社勤めはやらない方がいいと思うんだよねぇ。
「そ〜そ〜、私と一緒に無難な悪霊祓いや呪詛返しを適当にやりつつ、なんか良いサイドビジネスを見つけられないか考えていこう」
碧が言った。
だね〜。
人生長いんだ。
急がなくても、そのうち何か思い付くと期待しよう。




