余罪ざくざく
織絵ちゃんと高階尊の封印を終えてからお守り作りや源之助との遊び、大学の授業やレポートに暫く専念していたら、約1ヶ月後に遠藤氏から電話が掛かってきた。
『高階尊は重罪犯用の刑務所で無期懲役になる事が決まりました』
「あら。
随分と余罪が出てきたみたいね?
交通事故だったら危険運転を自分でしていたとしても、無期懲役にはならないですよね?」
碧が聞き返す。
『どうやら天罰で嘘をつけない状態というのは誤魔化そうと考える意思まで制限するのか、今までの能力の悪事に関して尋ねたところ・・・他にも人の死に繋がる様な事故や虐め及び窃盗等の犯罪を起こさせる意思誘導を面白半分にしていたことをボロボロと自供しました。
直接的な被害者や意思誘導で加担する羽目になった人物達を調査したところ高階尊の自供に間違いが無い事が確認されましたので、それらの件に関して略式起訴が検察の協力の下に退魔協会内で行われ、有罪判決が下されました。
これらの行為が本人の能力について正式に検査で確認されていた状況だったならば未成年であろうと死罪に値しますが、本人が薄々分かっていたとしても正式に能力の効果や所有者の責任に関して教わる前だった事から、一ランク下がって無期懲役となりました』
遠藤氏が言った。
うわぁ。
事故だけじゃなく、虐めとかで人を殺す様にも取り巻きを煽って意思誘導したんか・・・。
最悪だね。
複数っぽい殺人教唆をしていても死刑じゃないのは、周囲の人間が自分に賛同するのが自分の力のせいでそれに対抗するのはほぼ無理だって事を知らなかったら、『取り巻きが自分の言葉に従うのはそう言う事を彼らもやりたいと思っているからだろう』と考えて自分の意思誘導の危険性を意識しなくても不思議はない・・・と言えなくも無いって判断なのかね?
まあ、あんな男の取り巻きになる様な人間なら似たり寄ったりの感性なロクデナシが多いだろう事を考えると、あり得なくは無い考え方なのかもね。
実際のところ意思誘導はその場での効果だけだから、本当に自分のやった事を後悔していたら高階尊から離れるなり、自首するなり出来ただろうからね。
とは言え、ロクデナシだろうと人を死なせちゃう最後の一線を超える様な人間は現代日本ではそこまで多くは無いだろう。
と言うか、一回超えちゃったらハードルがぐっと低くなるから、高階尊は周囲の人間の犯罪者率をかなり押し上げてきたんだろうなぁ。
マジでもっと小さいうちに交通事故か何かで死んでれば良かったのにと言う気もするが、もしかしたら祖父母や父親の甘やかした育て方が良くなかったって言うのもあるのかも。
いや。
あそこまで腐った性根は生まれつきな部分が多いだろう。
別に甘やかされたからって交通事故を起こす様な危険な行為や虐めを誘導する必要は無かったのだ。
加虐性は甘やかしで生まれる傾向ではない。
「・・・被害者や、加害者になってしまって後悔している人なんかに退魔協会からのカウンセリングとか助けはあるんですか?」
意思誘導で皆と一緒に虐めとかに加担して人を死なせてしまったら、そのまま悪の道を突き進む様なのもいるだろうけどトラウマになって下手をしたら自殺とかを考える様になる人間もいるんじゃ無いかね?
一般の精神科医に相談に行っても必ずしも適切な対処をして貰えるとは限らないが・・・危険な黒魔術師の適性持ちの存在を退魔協会が認めるか否かはちょっと微妙なところかも。
『やってしまった行為は原因が分かったとしても無くなりませんし、谷敷さんが高階尊の要求に毎回は屈しなかったように、本当に心の底からやってはいけないと思っている事だったら意思誘導も対抗できます。
我々に出来る事はそれとなく腕のいい精神科医の方へ被害を受けた人間を誘導する程度ですね』
遠藤氏が漠然とした返事を返してきた。
まあ、そうだけどさぁ。
マジでああ言うクソッタレとそいつが振り撒く被害に関して聞くと、前世みたいに全ての子供の適性チェックは必要なのかもと思えてくるね。
とは言え適性チェックが出来る魔道具がないから、現実的には悪霊祓いですら順番待ちな現世ではリソースが足りなくて無理なんだろうけど。
まあ、取り敢えず一人のクソッタレが社会から取り除けられ、政治家になる事も確実に無くなっただけでも成果があったと考えるか。
ちょっと暗い終わり方になっちゃいましたが・・・取り敢えず、ひと段落ついたのでここで一区切りをつけます。
明日は休みますが、また明後日から宜しくお願いします。




