表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/1360

猫付き店舗

青木氏の不動産屋店舗に来た我々は外から猫達を覗き込んでいた。

「外からは一部だけしか見えない様になってるんだぁ。

中々賢い造りだね」

ビルの1階にある店舗の右側に不動産屋でよく見かける部屋の見取り図とか条件を書いた紙が沢山貼り出されたウィンドウがあり、左側の一部は外から覗き込むと子猫が遊んでいる様子が見えるようになっている。

とは言え、部屋の内部は一部しか見えていないので、猫たちは外からの目線が気になったら見られない部分で遊べそうだ。


「もっと見たかったら店の中にどうぞ〜って書いてある」

笑いながら碧が側に貼ってあるお知らせを指差した。


「じゃあ、入ろうか。

一応依頼に行く前に猫達と遊べる様に予約を入れてあるんだよね?」

ダメだったら依頼の帰りにと言う手もあるが、時間が不特定になるから先に遊ぶ方が良い。


「勿論!」

ウキウキとしながら碧が不動産屋の扉に突進した。

あんまり浮気すると源之助に怒られるぞ〜。


・・・そう言えば、子猫達は病気や寄生虫持ちじゃ無いことはちゃんと確認済みなんだよね??

浮気した挙句に源之助に移したりしたら可哀想だぞ?


猫部屋は一部ガラス張りになっていて、かなりの部分が不動産屋側から見えるもののやはり死角があって猫達がプライバシーが欲しければそこに隠れられる様になっていた。

狭いボックスっぽい場所も何箇所かあるからあそこにも隠れられるし、悪くない。

天井にカーテンレールがあるから、時間帯によっては閉めているのかな?


「やあ、いらっしゃい。

どうだい、元気そうでしょう?」

青木氏が席から立ち上がって出迎えてくれた。

相変わらず、フットワークが軽いねぇ。


「ええ、一週間で出来上がったとは思えないぐらい良くデザインされてますね。

中で遊んで良いですか?」

碧がにこやかに対応するが、目は子猫達に釘付けだ。


そんなところを見られたら、源之助に怒られるぞ〜。


まあ、猫はあまり嫉妬しない動物だと言うから気にしないかもだけど。

『子猫達だけじゃなくて母猫からも、現状に何か不満がないか聞いて来て』

クルミに念話で頼む。


『了解にゃ!』

蜂型クルミが隠蔽の術をかけた状態で碧の後を続く。


猫は隠蔽の術を掛けても霊が近づくと分かる事が多い。

今回も、子猫達は一斉にクルミに注目してパシパシ叩き落とそうと飛びかかり始めた。

『待つにゃ!

遊ぶより先に話をするにゃ〜!』

クルミが悲鳴の様な声をあげる。


笑いながら碧が襲い掛かっている子猫にオモチャを振って注意を逸らした。

「私と遊ぼ!」


いや、碧と遊んでいてもクルミの話を聞いてくれないと思うが。

まあ、先に母猫から聞き取りを開始すれば良いかな。

頑張れクルミ。


「そう言えば、寄生虫とか病気とかダニ・ノミに関して確認したんですか?」

クルミの健闘を横目で見ながら青木氏に尋ねる。


普通の飼い猫だったらそこまで気にしなくて良いだろうが、何と言っても多頭飼育崩壊現場だったし、母猫は実質半野良状態だっただろうし、ノミや猫風邪ぐらいは罹患していても不思議ではない。


近親との交配を避けるために雌猫は兄弟猫を嫌うとどっかで読んだけど、ちゃんと管理していなかった密封(多分)空間だったのだ。父親がどのくらい血が近いかなんて分からないんだから、遺伝子異常とかも調べた方が良いんじゃないかね?


碧ってそう言うのが出来るのかな?

先天的異常を見つけられるか、後で聞いてみよう。

生まれつきの遺伝子異常は魔術では治せないが、分かっていれば外科手術とかで早いうちに対応できるかも知れない。

手術で問題点さえ治せれば、手術の傷からの回復は碧がそっと助けられるだろうし。


どうなんだろ?


「ノミとダニ避けの薬は塗ったので大丈夫だし、便は寄生虫のチェックして貰いましたが一応虫下しも飲ませました。

猫HIVやその他よくある病原菌のテストは陰性だったので、元気に育ってくれると・・・いいんですけどね〜」

可愛くて堪らないと言う目線で猫達を見ながら青木氏が答えた。


「引き取り手を一応募集しているとここのサイトには書いてありましたが、居なくなったら寂しくてしょうがないんじゃないですか?」

思わず笑いながらツッコミを入れる。

溺愛しまくっているじゃん。

正しく愛に溺れている感じ。


まあ、子猫のうち2匹は中々美猫だが、1匹はちょっと間抜けな感じにブチ模様なので引き取り手は現れないかな?

とは言え、猫の好みも人それぞれだからなぁ。

私が無地か左右対称な模様の猫が好きだからって、他の人がブサ可愛い系を求めないとは限らない。


「そうなんですよねぇ。

最後の1匹にになったら里親募集を引き下げようかと思ってます」

あっさり青木氏が認めた。


まあ、客引きとしても役に立っているみたいだし、リフォーム代とかの投資も回収しなきゃだしね。

全部の猫は手放さない方が事業的には正解だろう。

本人も猫が好きそうだし。


「そう言えば、奥様は犬派なんですか?」

まあ、一気に4匹も引き取るのは猫派でも断るかもだが。


「そうなんですよ・・・。

家にシュナウザーがいるんですけど、子猫だから大丈夫かと思ったらかなり興奮して吠えまくってしまって。

猫達は慣れるまで別の部屋に隔離しておこうとしたんですけど、やはり日中に留守番させている間に何か間違いが起きたらと思うと心配でついついウェブカメラを見ていたら仕事にならなくてね。

まあ、こちらに動かして色々良かったと思っています」

にこやかに青木氏が答えた。


ペットって子供代わりの家族だと聞くが・・・大丈夫なのかね、青木夫妻は。

まあ、いい年しているんだからそこら辺の意見の違いは割り切って同居しているのかな。


ある意味、青木氏の家庭内の話も興味があるが、比較的すぐにこっちに移ったみたいだから猫達からそっちの情報は得られなそう。

子猫はまだあまりそう言うのはわかって居ないだろうし、母猫は子供達の面倒で忙しかっただろうしなぁ。


まあ、離婚騒動になって大金を慰謝料に毟り取られて不動産屋が潰れると言うので無い限り、私達には関係ないか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ