もしもの時は脅そう
「考えてみたら、適性持ちなのが発覚しても退魔師になるのを拒否したら能力を封じるって話だけど、お金がない人の場合って問答無用で能力封印か、百万円以上かもの借金を負う羽目になるの?」
それってあの募金少女みたいに金になるかも知れない才能持ちに取っては良い迷惑だよね。
能力を収入を得る為に活用していた場合、ある意味一種の恐喝になりかねない。
まあ、考えてみたら電気機器って魔力を通さないと思うからライブじゃないとあの声の特性って多分効果が無い可能性が高いが。
つまり本当に才能がなければ大々的にはヒットしないかもだけど、ライブでガッツリ客を集められるなら十分歌手としてやっていけるだろう。
歌手になりたいならだけど。
政治家は・・・どうだろ?
今時の政治家は沢山の人間を集めて演説するって言うよりはSNSで動画をアップする方が名が売れそうだからなぁ。
特に世襲じゃない新米政治家は目新しさで売る感じだからねぇ。
まあ、これは私の偏見かもだけど。
つうか、マイクを通した声でも人の注意を引くのかは不明だし。
・・・それを言うならライブ重視な歌手もマイク必須だから実はダメ?
オペラ歌手になるなら成功するかもだけど。
前世ではマイクっぽい拡声魔道具は魔力を通す様に作られてたからあの才能は色々と使い道があったんだけど、マイクすらダメだったら現世ではもしかしたら新興宗教の教祖程度しか使い道が無くなるかも??
だとしたら封じた方が良いかもね〜。
それはさておき。
依頼の最中に何かやらかしていて才能があるのが分かったケースはまだしも、単なる通りすがりみたいなケースでも、問答無用に封印なの?
退魔師の存在を知っている人なら良いけど、知らない場合はそんな詐欺師みたいな職業に就く為に借金をしろなんて言われてもふざけんなってところだろう。
実際に力を使ってない場合だったら封じられても構わないだろうし、元素系の才能だったら何かの弾みで暴発したら本人や周囲の人間にとって危険だから、大金を払ってまでしてそれを鍛える気が無いなら封じるのも安全対策としてしょうがないと思う。
だが黒魔術師はねぇ。
人の心の声が聞こえちゃうのが嫌だって思うぐらいな才能がある人だったらその能力を封じる事が出来ると聞いたら喜ぶだろうし、鈴木絵里みたいに悪用しているタイプは問答無用で封じるべきだと思うが、ちょっと人の注意を引く声ってだけだったら封じるのは可哀想な気もする。
とは言え。
あの声と意思誘導を併用したらかなりヤバいだろう。
そう考えると、元素系才能を暴発の危険性を考えて封じるのと同じで、あの子の才能も封じるべきなんだろうなぁ。
あれこれ色々考えていたら、私の質問について考えていた碧がゆっくりと口を開いた。
「まあ、能力ってストレスが掛かった時に意図せずに暴発して周囲に害を及ぼす事があるからねぇ。
そこら辺を説明して、納得してもらうしか無いよね。
確か、保護者が退魔協会の存在を知らない場合は警察の人と一緒に退魔協会の人が親と本人へ説明に行くって話だったと思う。
本人が既に成人している場合はそれが本人だけに話す事になるけど。
あと、祖父母世代で誰か退魔師の事を知っている人がいたらその人にも詐欺じゃないよ説得に協力してもらうらしい」
なるほど。
警官を連れていく事で詐欺じゃないよってアピールするのか。
「でも、最近って劇場型払い込め詐欺とかで警官役の人も出てくるって話だから、家に突然来られた場合は信頼されないんじゃない?」
何と言っても大金を払えって(実質)脅されるんだから、詐欺だと思っても不思議はない。
まあ、能力の封印そのものは退魔師に触れられるのを5分程度我慢すれば良いだけだから、脅されていると感じても終わってみたら拍子抜けってところだろうが。
「最初は家に行って警察手帳を見せるらしいけど、それでも信用されなかったら近くの警察署に来て、受付からそこの退魔協会担当を呼び出して話し合いを再開するよう説得されるらしい。
流石に詐欺だと怯えられ続けてちゃ話が進まないからね」
碧が笑いながら言った。
「ちなみに、あの子が退魔師になるって言ったとして、黒魔術師系の退魔師をちゃんと退魔協会から紹介してもらえるのかな?
以前のゾンビ犬事件で死んじゃった西田ナンチャラみたいに、適性が合わない師匠に押し込まれたら借金だけ積み上がって最終的には能力を封じられるなんて云う踏んだり蹴ったりな結果になりかねないよね?」
流石に私らが見つけちゃった才能持ちがそんな目にあったら良心が痛むぞ。
「まあ、そこはしっかり退魔協会に申しつけておかないとね。
私が良心の痛みで寝込むことになったら白龍さまが怒ると思いますよ〜とでも言っておけばなんとかなるでしょ」
碧がニヤリと笑った、
確かに!




