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出入り口は何処だろうね?

「これって階段の後ろ?

でもこの家って2階建てだよね?

なんで上に行く階段があるん??」

押入れの奥の穴が開いた板が外れて奥に狭いスペースが出来ていた。

上が段になって狭くなっていっているから階段の裏っぽいが・・・この家に三階なんて無いはずだ。

屋根裏部屋があっても階段なんぞ作らないで梯子で登るだろうに。


行く先のない階段なんて不気味過ぎる!


「この部屋の裏に洗濯を干すベランダというかスペースが数段ほど階段を登ったところにあるのを見つけた。

押入れの奥に生命反応があったから板を外してみたらこうなったんだけど、比較的健康そうだから外に出入りできる穴も他にどこか開いているんだろうね」

碧が答える。


確かに、家の中に閉じ込められていたら既に飢えているだろうから、比較的健康なら外で餌をゲット出来ているのだろう。

もしくはまだ見つかっていないドライフードのストックを発見したか。

でも、水も必要だからやはり外に出てるよね。


「つまり。

猫の霊じゃなくって本当の猫が鳴いていただけ?」

『そうみたいにゃ!』

2階を見て回っていたストラップのクルミが戻ってきて鞄の上に着地した。


「そう言えば、公園への案内は問題なく終わった?」

『余裕にゃ!

ありがとうだって』


おや珍しい。

猫は霊になってもお礼なんてほぼ言わないのに。

まあ、私ではなく、クルミに言ったんだろうな。

猫同士だったらお礼を言うようだ。


「ふ〜ん、まあ問題なくって良かった。

この階にいる子たちの霊も案内してあげて?」

『分かったにゃ』

本体が喚んだのか、蜂型分体が突然目の前に現れた。

物理的に分体を召喚すると時間は節約になるけど魔力がそれなりに消費されるんだけどなぁ。

まあ、色々頑張ってくれているから後でボーナスも含めた魔力をあげよう。


「猫を入れる段ボール箱でも青木氏からもらって来ようか」

流石に子猫3匹と親猫を手に持って車まで連れて行くのは難しい。

下手に逃げたらお先はかなり暗いだろう。

野良猫の平均寿命は飼い猫より大幅に短いらしいから、出来れば家猫にクラスチェンジした方が猫にとっても幸せだ。

子猫だから引き取り手も見つかりやすいだろうし。


母猫は分からないけど。

「誰かが子猫と一緒に母猫も引き取ってくれると良いね」

成猫で人気のない母猫に貰い手が居なかったら、碧が母猫を引き取ると言いそうだ。

そうなったら子猫と引き離されて寂しくなった母猫が源之助の面倒を見てくれるかなぁ?

でも、この母猫だってお婆さんがそこまで躾けた訳では無いだろうから、単に飛び跳ねる猫が2匹になるだけな気もするなぁ。


一応最終チェックに2階全部と裏の少し高くなっている物干しスペースを調べてから玄関へ向かう。

結局母猫が使っているであろう出入り口は見つからなかった。

こう言う場合ってちゃんとリフォームで見つけるんかね?

猫が出入りできるんだったら、ネズミやゴキブリも出入りし放題だろう。

・・・嫌すぎる。


「青木さん、猫の霊じゃなくって、子猫3匹と母猫が2階の押入れの後ろに隠れているのを見つけたんですが、保護する団体にでも連れて行くのに入れる箱か何か、あります?」

碧が車の運転席の窓をノックして声を掛けた。


「え??

まだ残っていたんですか?!」

青木氏が目を丸くしながら作業していたタブレットから顔を上げた。


「押入れの後ろに手のひらサイズぐらいの穴が開いていて、裏の物干し場所へ上がる階段の下に繋がっていたんです。

見つけにくい場所だったんで見逃したんでしょうね。

猫たちは元気そうなのでどこかから母猫が外に出ていたんじゃ無いかと思いますよ」

碧が答えた。


家の中は猫屋敷時代の名残かかなり濃厚な臭いがする為はっきりとは分からなかったが、押入れ近辺はそれ程強烈に臭くは無かったから、母猫は餌を取るついでに外でトイレもしていたんじゃないだろうか。


子猫は母親が排泄物を舐め取っていたのかも知れないが、もうそろそろ普通にトイレするぐらいに育ってきていたっぽいから残っていたらリフォームした後に強烈に臭くなっただろう。


それともリフォーム工事を始めたら煩さと人の出入りに辟易として猫たちが引っ越していた可能性も高いかな?


「そうですか。

猫の霊は居なかったんですか?」

運転席から出てきてトランクを開けながら青木氏が尋ねる。


「猫の霊は居ましたが、普通の作業員に声が聞こえるような悪霊化したのは居ませんでしたね。

どうせだからもっと気持ちのいい公園に行ったらどうかと案内しておいたのでこれからも大丈夫だと思います。

ちなみに、お婆さんの霊が1階のリビングっぽい部屋の床に横たわっているので、あちらは地縛霊化する可能性はそれなりに高いと思いますよ」

悪霊になっていない現段階でオーナーが除霊依頼するかは知らないが。


猫の霊も居なくなったし、リフォーム工事でお婆さんが時の流れに気づいて成仏する可能性もある。

下手をするとリフォームに腹を立てて悪霊化するかもだが。


「・・・リフォーム前に神社に鎮魂を頼むよう、オーナーに言っておきます。

この子達は・・・私が引き取りましょう」

2階に上がって子猫たちと母猫を捕まえて段ボール箱に入れながら、青木氏が言った。


おやま。

多頭飼育崩壊で死んだ猫の分の償い?

青木氏が悪かった訳でも無いと思うが、もっと強引に話をして家の中に押し入って猫を救うべきだったと後悔しているのかね?

他人の家の中の事にそうそう干渉出来ないと思うけどね。


しっかし。一気に4匹も猫を増やしたら大変なんじゃない?

ウチなんて源之助1匹でも大騒ぎになっているのに。

奥さんに事前相談しないとヤバいと思うぞ〜。



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