神頼み?
この際どうせヤバい詐欺サイトかも知れないところで符を買うなら、他からも一通り買い漁ろうとネットで調べたところ、『魔術を使えるアイテム』と言うのは意外と沢山あった。
2千円程度から100万円を超えるのまであり、明らかに手品グッズなのを除いても全部買ったら総額数百万円になりそうな様相に、どれを買うか私と凛は頭を悩ませる結果となった。
流石に全部買い漁るつもりは無いが、そこそこの出費をするならせめて一つぐらいは本物に当たりたいと思うから、必死になって本物を見極めようとネットの口コミとかサイトの説明動画とかを調べる羽目になったのだ。
「これってちゃんと必要経費として落とせるよねぇ・・・?」
碧がバタンとソファに倒れ込みながら言った。
「どうだろ?
考えてみたら、使ったら消えちゃう符って領収書があっても微妙に支出として認められにくい気がしないでも無い。
ちなみに税務署って退魔師の確定申告に関してどの位真面目に調べるの?」
頑張る退魔師ならそこそこ儲けているだろうし、ある意味世間知らずで費用計上が許される支出の範囲をちゃんと分かっていない箱入りな退魔師ならとんでもない出費も費用計上しかねない気もする。
そう考えるとそれなりに調査した方が良いかもだが、退魔師の費用なんて税務局が精査したところで正当な費用かどうかなんてイマイチ分からなそうな気も?
「政治家に都合の悪い動きをすると税務調査が入ると言う噂はあるわね〜。
だから、圧力を掛けられた時に折れる気が無いなら、絶対に文句のつけようが無いような確定申告をしておけって言うのが母親のアドバイス」
碧がソファに寝転がったまま教えてくれた。
うわぁ〜、えげつない。
まあ、普通の事業だったら何かの許可とかの申請を遅らせるとか却下すると言った嫌がらせが出来るが、退魔師じゃあそう言うのは殆どないだろうからね。嫌がらせとなると税務調査一択なのかも?
「確かに実際に仕事に使うにしても退魔協会のを買えば良いのにと言う説もあるからねぇ。
一応より良い符を探す為に民間の品物もリサーチしてみたと言えば通る気もするけど、快適生活ラボの場合は圧力を掛けたがる存在が多そうだから、節税は諦めよう。
実際のところ、仕事に使う為の経費とはちょっと違うんだし」
お守りを売り続けても良いかの判断材料になるかも知れないと期待しての出費だけど、お守りの売り上げなんて微々たる金額だからねぇ。
殆ど世話になっている感覚のない国にがっつり税金を取られるのは業腹だが、弱点になるなら絶対に文句の付けようがない節税以外には手を出さない方が良さそうだ。
そんな事を駄弁りながらネットで魔法アイテムを調べ続けていたら、電話が鳴った。
『白龍さまに問題の符を確認して頂いて、どの聖域の素材が使われているか見て頂くことは可能でしょうか?
勿論、氏神さまへの依頼ですので諏訪神社にも相応のお布施を致します』
何やら必死な感じで遠藤氏が言ってきた。
前回はもう少し淡々としていたのに。
どうしたんだろ?
「白龍さまは力が強い分かなり大雑把なので、素材の元を探る様なデリケートな作業には向いていませんよ?
それよりは記録のある聖域を総当たりで調べた方が良いのでは?
いくら八百万神の国とはいえ、実際の聖域の数は退魔協会の従業員より少ない程度でしょうに」
碧が指摘した。
そういえば、一応白龍さまの聖域の素材も渡すって言っていたね。
聖域の素材があればブツと比較して同じ魔力か分かるとはいえ、結界を張られて入れない聖域も多そうだが、そう言うのは藤山家のように人間側の管理者が分かっているのかな?
『日本の聖域は全て記録があるものは調べましたが、どれも該当しなかったのです。
どこの国から流れてきたのかを特定して、危険性の評価をしなければならないと国と協会では考えております』
遠藤氏が言った。
うわぁ。
日本中の聖域を全部確認したんだ??
マジで総当たりで調べているとは思わなかった。
で。
日本ではないから海外から流れてきていると考えて更に青くなっている訳?
単なる詐欺じゃなくって実物が流れ込んでいるとしたら、何の為にそんな潜在的に危険な物を日本に売り込んでいるのか、確かに調べる必要はあるだろうねぇ。
「他国の魔術師連盟なりに確認してみました?
白龍さまにとって国境なんてあってなきが如しですが、他国の聖域の波動まで知っている可能性は日本国内より更に低いと思いますよ?」
碧がちょっと呆れた様に返した。
退魔協会って他国の業界団体とどの程度友好に付き合っているんだろうね?
エクソシストがメインな国だったら相性が悪そう。
と言うか、魔術師とか魔女と、カトリック教会のエクソシストって同じ国の中だったら協力して一つの国内組織に纏まれているんかね?
魔女も魔術師も、教会に狩られて殺された歴史があるだろうに。
教会側だって自分達の過去の行動を正当化する為に、過去の魔術師や魔女の悪行を強調はしなくても詳細にわたって見習いエクソシストへ教えてそうだ。
『欧米の団体と確認したところ、一般人が使える魔法陣が流通していると言う噂はあるそうですがまだ正式に確認できていないそうです』
あっちの方は距離が遠くて売られていないのか、退魔協会が偶然ラッキーで早い段階に見つけたのか、それとも日本がターゲットにされているのか。
ちょっと気になるところだねぇ。
ちなみにアフリカとかアジアの団体には聞かなかったのかね?
「・・・分かりました、取り敢えず一度調べさせて下さい。
あと、結果は保証できないのは了承していると文書に記録して渡して下さいね」
碧がちょっと考えた末に同意した。
まあ、何も分からなくても、これでブツを確認する為にウン十万円もする怪しげな符を買う必要は無くなったね!




