ヤバいかな??
「そう言えば・・・魔道具を起動できる魔道具ってどのくらい霊力がいるのかな?
使い捨てにしたらもしかして私たちの作ってるお守りに入れた聖域の雑草で出来ちゃうレベルだと思う?」
損害賠償責任に関して遠藤氏に送るメールを書いていた碧が、ふと手を止めて聞いてきた。
えっ。
「ウチらが小遣い稼ぎに気軽に作って売ってきたお守りが分解されて悪用されている可能性があるの??」
炬燵の布団の上で丸くなっている源之助の上で動かしていたリボンを止めて、思わず振り返る。
「いや、霊力のない一般人が符を使えるようにする道具にどのくらい霊力の籠った物が必要なのか、私は知らないから。
だから凛はどう思うって聞いてるの!
異世界の魔道具でそう言うのを見知っているんでしょ?」
碧がツッコミを返してきた。
う〜ん、前世のは魔石を使っていた魔道具だからなぁ。
符そのものも一度使ったら燃え尽きる使い捨てなのだ。
符に魔力を流して起動させる部分だけ繰り返し使えるようにした所で一緒に燃えちゃう可能性は高いから、使い捨てだとしたら・・・どの位の魔力が必要になるんだろ?
と言うか。
前世のあの起動用魔道具って誰が作っていたんだろう?
どの魔術師の適性か、イマイチ想像が付かない。
もしかしたら錬金術師が生み出したのかも?
一度実物を見て、自分でも作れるか試してみたら黒魔術師の適性でも作れる物なのか分かるかもだけど、前世では特に意識して見たことが無かったからなぁ。
誰かが使っているのは見た事があるだろうけど、手に取ってじっくり調べた記憶はない。
「う〜ん、私の睡眠導入用の魔法陣とか、碧の微弱な回復効果を出して肩凝りを癒す符は常時極々弱い効果を発し続けるタイプの魔道具と言えるから、その効果の動力源としてあの雑草を使っているんだよねぇ。
魔力を流さないと起動しないタイプの符はもっと大きな魔力を溜め込ませて、その溜め込んだのを勢いよく一気に出す為の起爆剤として魔力を流さなきゃいけないから、雑草で起動させる為には雑草に溜め込まれた魔力を一気に抜き出して使う必要があると思う。
そう言う魔法陣があったら、符の起動に必要な魔力の量によってはあの雑草でも出来ちゃうかも?」
魔道具を動かす魔道具の作り方も仕組みも知らないので、現時点では聖域の雑草で作れるのかは私には分からないが。
ある意味、符や魔道具を使うときに流し込む魔力量は適当だからねぇ。
魔力持ちが側に居てもうっかり自然に漏れている魔力で起動しない程度の量だけど、悪霊相手に戦っている最中でも危険な魔力の浪費にならない程度って感じの量を経験値的に決めているんだろうと思う。
まあ、購入者がカバンに入れて持ち歩いている間に突然発動されるよりは、起動に必要な魔力が多すぎて疲れた!と言われる方がマシだろうから、魔力持ちが怒っている時に魔力をダダ漏れにさせていても発動しない程度には多めにしてある可能性が高いと思うけど。
「退魔協会は私達のお守りと雑草の事を知っているのかな?
取り敢えず、実家に連絡してあのお守りを大量に買いたがられたらヤバいかもだから、売り場にはいつも売り切れ寸前って感じで1個か2個しか置かないようにしておいてって言っておくわ」
碧が携帯を手に取って言った。
確かに。大量に買われたら怪しいけど、『お土産用です』って言われたら売るのを拒否するのも、相手の住所と連絡先がわかる物を求めるのも変だよね。
それこそ私らだって柳原先生に頼まれて大量に売ったことがあるし、また税務関係の繁忙期になって頼まれたら断れないだろう。
その点、売り場に1つか2つしかなければ大量に売らないで済むし、もっと欲しいと言われたら『入荷されたら連絡しますね〜』と言って連絡先をゲット出来るしで一石二鳥だ。
「退魔協会がお守りを売るのをやめてくれって言ってきたら、一時出荷停止する代わりに問題になっている符を見せて貰おうか」
流石にこっちから退魔協会に『私達が作っているお守りに使われている雑草が怪しいですかね?』と聞くのは嫌だ。
技術的には極端に異端な事はやっていない筈だから、バレても問題は無いと思うけど・・・知られたら今回の騒動のついでにウチらの代替収入源を潰されそうな気もしないでも無い。
退魔協会がどの程度藤山家の行動をモニターしているのか、気になる所だよねぇ・・・。




