0、5③ 鮫島勤→水島聖
「いや、ムリだと思うよ。裁きようがない」
「だってまず、実際に身体の関係があったり、浮気現場目撃したワケじゃないんでしょ?
『二人で会ってるとこを見た』とか『プライベートで手を繋いでた』とか」
「加えて双方ともに深く想い合っているワケでもない。そもそも性格自体合わない。」
「それ以前に、指一本触れてない。甘い目配せとかもない。物的証拠以前に、現象としても本当に何もないワケでしょ? それでもまだ何かあるっていうの? いかがわしいコトしてるの?」
「だってあの子がしてるの、ただのテニスだよ? それ以上でもそれ以下でもなくない?ソーシャルディスタンスきっちり守ったダブルス。一競技として成立してるものにケチつけるなんて、下手すればお前の方が裁かれるよ」
「でもまぁ」
「分かるけどね。お前にも見えちゃったんだね。あの二人にしか分からないやりとりが」
「いんじゃない? どうしても長く付き合えば飽きはくる。適度なスパイスは必要だって。おかげでお前はいつまでも夢中でいられる。それとも、自信ナイ? 自分の方が理解できるって自信」
「見たことナイ顔、その人の前でしか見せない顔ってあるもんね。いいじゃん精一杯足掻けば。理解したつもりってのが一番怖いからね」