公園の妖精(童話 27)
ま夜中の公園。
ポプラの木のてっぺんが、とつぜんカサカサ音をたててゆれました。
風のせいではありません。
枝の間から、小さな妖精が顔を出したのです。
妖精はスルスルと地面におりました。
この妖精は遊びが大好き。
スベリ台、ブランコ、ジャングルジムと遊んでまわります。
砂場で遊んでいるときでした。
――あれっ?
赤いサンダルが砂の中から出てきました。
――あの子のものだな。
妖精は夕方のことを思い出しました。はだしで泣いて帰った女の子がいたのです。
と、そのとき。
「おい! そいつをよこすんだ」
大きな犬が砂場にやってきました。
ここらでは一番いじわるなノラ犬です。
妖精はサンダルをかかえ、大いそぎでポプラの木にかけのぼりました。
「こらっ、そいつをよこさないか!」
「ダメだよ。キミのもんじゃないんだからね」
妖精はまけずに言いかえしました。
ノラ犬がとびかかります。
でも、妖精のいる枝まではとどきません。
「くそー、おぼえてろよ」
ノラ犬はあきらめて帰っていきました。
――そうだ!
妖精は枝の先に行って、なにやらごそごそと始めたのでした。
朝になりました。
「あった、あったよー」
公園に子どもの声がひびきます。
サンダルをなくした女の子です。
今日はおかあさんといっしょでした。
「ねえ、とってー」
女の子がポプラの木にかけよります。
一番下の枝の先、そこに赤いサンダルがぶらさがっていたのです。
「だれかがひろって、わざわざ目立つようにしてくれたのね」
おかあさんが枝からサンダルをはずしました。
サンダルがもどって、女の子はとてもうれしそうです。
それを見て、
――よかった、よかった。
妖精もうれしくなったのでした。