地味女子の私が女の子の日にイライラしてたらなぜか百合ハーレムが出来上がっていたのだが?
「私は高校デビューに失敗していない。むしろ成功だ」
登校途中一人でそんなことを呟いている一人の女子がいた。
私こと“百合園 文乃”だ。
私はつい先月高校に入学し、見事なぼっちとなった。
理由はもちろんわかっている。それは見た目だ。
髪の毛は三つ編みにしており茶髪。まあ普通だろう。
そして他人から絶対に見えないような丸メガネをかけているからだ。
それにいつも教室の隅で読書をしているから見事なまでにぼっちになったのだろう。
うんうんと一人で納得しているうちに高校へついた。
下駄箱で上履きに履き替え、自分の教室へと向かった。
ドアを開けると一瞬クラスメイトがこちらを見たが、すぐにこちらを見るのをやめた。
「ふぅ……」
自分の席へ着くと私は腕を枕にし、寝たふりをした。
今日はなんだかだるいし、お腹も痛かったりするからだ。
(これはあれだな……あれの前触れだ……)
まあ……言っちゃえば“女の子の日”の前兆だろう……。
あれだるくてイライラして嫌なんだよなぁ。
「キャハハハ!」
「なにそれ受ける〜」
「マジ〜?」
陽キャどもめ……結構耳に響くんだよ……。
このクラスの中心人物と言っても過言ではない人物、“美澄 華織”。
髪は赤髪でポニーテール。目の色は茶色。いつも明るく、喧嘩強くてカッコいいことから女子からの支持が結構あるらしい。
ま、私はたまにからかわれたりするぐらいだから関わりのない人種だ。
「お前ら席つけー」
先生がきたのでみんなは各々の席へ着き、先生の話を聞いた。
その後は普通に授業が始まり、弁当の時間となった。
(ぐ……腹痛い……。ちょっとトイレ……)
一旦トイレへ駆け込み、痛みが少し治ったら弁当を持って屋上へと向かった。
屋上は本当ならば入れないのだが鍵がぶっ壊れていたのでこっそりと入ることができるのだ。
「さて、いただきます」
屋上のフェンスにもたれかかり、私は弁当を食べ始めた。
「よければこれ差し上げますわ」
「あらいいの?」
「見事ですね」
「むむ?」
何やらしたから声が聞こえたのでのぞいて見ることに。
するとザ・令嬢という集団が庭で弁当を食べていた。
「確かあれは……“海宝 雫”だっけ?」
一番真ん中にいる人物だ。
髪は真っ白で目は宝石のように赤い。いわゆる“アルビノ”というものらしい。
その見た目でかなり人気があり、もらったラブレターの数は数え切れないほど。
しかも超金持ちで家が馬鹿でかかったり、毎日車で登校したりなどなど……。
性格もいいのでついたあだ名は“聖女”。
「あれも私と関わるような人種ではないな」
私は残っている弁当を食べ、そのまま教室へ帰った。
〜〜
「じゃあ気をつけて帰れよー」
やっとだ……やっと授業が全て終わった……。
こちとらめっちゃ腹痛いしだるいし色々と限界だ……。
私はパパッとバッグに教科書を詰め込んで教室を出た。
教室を出ると、違うクラスからで女子が走っていた。その女子はショートボブで、馬鹿みたいにでかい胸の持ち主であった。
確か名前は“東雲 真雪”。
噂で聞いたことがある。この高校一の巨乳が図書委員にいると。
男子どもが“挟まれたい”だの“揉んでみたい”などとほざいていたのを嫌でも聞こえてきたのだ。
(……あの子は図書委員か……)
ワンチャン関わり合いがありそうだが、高校ではぼっちになると決めていたのでやっぱりないな、うん。
私はそのまま家に帰った。
「ただいまー」
「お帰りー、手洗っちゃいなさいよー」
家に帰ると私のお母さんの声が家のなからから聞こえてきた。
私は言われた通り手を洗い、そのまま自分の部屋へ戻りベッドに転がった。
「あー……。今日は勉強いいかなぁ……だるいし……」
私はそんなことを呟きながら目を閉じて、そのまま意識を手放した。
晩御飯前にはお母さんに起こされ、ご飯を食べ、風呂に入ってそのまま再び眠った。
〜〜
「起きなさーい!」
「ううう……うるさい……」
朝、無理やりお母さんに起こされた。
昨日の予想が的中し、女の子の日である。
結構寝たと思うがかなり眠いし、起き上がるのもやっとなほど体がだるい。
(髪の毛は……めんどくさいから今日はいいや……)
いつもは三つ編みにしてるが、今日はそのままの髪型て行くことにした。
制服のリボンが紛失したのでつけないことに。そして少し蒸し暑かったからスカートも少しだけまくりあげた。
「行ってきまーす……」
重い体の状態で私は学校へ向かった。
「………あ、メガネ」
学校へ向かっている途中、いつもつけているメガネがないことに気づいた。
視界が少しぼやけるが目を細めれば問題ないだろうと思い、そのまま学校へ向かった。
学校につき、自分の教室のドアを開けた。
今までガヤガヤとしていたのだが、私が教室に入った瞬間シーンと静寂が訪れた。
そして一同がこう言葉を放った。
「「「「「誰……?」」」」」
なんなんだこいつらは。みんな揃ってドッキリしようってか?
構うのも面倒なので自分の席につき体勢を崩して仮眠をとることにした。
「な……なぁ…」
「……」
声をかけられたが顔を上げるのが面倒なので無視することにした。
「おいってば!」
「チッ……何」
私は嫌々顔を上げ、声をかけてきた男子の方に向いた。
「お前ってもしかして百合園……?」
「は?何言ってんの。もしかしても何もそうに決まってんでしょ」
なんなんだ一体。
あれか?私を無理やり起こしてイライラさせようという魂胆か?
私がこの男子に答えたら教室が再びザワザワとしだした。
「私、今眠いから。もう起こすなよ」
ギロッと睨み、そのまま再びふて寝をした。
「何あいつ、感じ悪ー」
「華織さんわからせちゃえば?」
「それ賛成!」
先生が来るまではずっと動かず、腹が痛くならない良い体制をキープしていた。
先生が来たら流石に寝るのはまずいので起き上がることにした。
〜〜
四時間目も終わり、弁当の時間になったので私のベストポジ(屋上)へ向かった。
ちょっかいをかけられると思ったのだが、流石にみんなが弁当を食べている最中に喧嘩が始まるのはよくないとでも思ったのだろうか、ちょっかいをかけられなかった。
そしてとうとう放課後。
予想通り陽キャたちが私の道を阻んで来た。
「ねぇ、あんた今日生意気すぎない?」
「いつもみたいに本だけ読んでなさいよ」
「あんたはぼっちがお似合いなのよ」
はーーー………だっっっる。
そう思った私はバッグを持ち、そのまま無視して帰ろうとしていた。
「ちょっと、無視すんじゃないわよ」
この陽キャグループのリーダー、美澄 華織に腕を掴まれた。
「あんたいい加減にしなさいよ……」
んー……。なんでメガネ忘れて髪を結ばなかっただけで絡まれなきゃいけないんだろう…?
効くかわからないけど、やってみるか……。
「あんた聞いて———うわっ!?」
私はこいつのの手を振りほどき、近くの壁まで追い詰めて思い切りこいつの顔の真横に手を当てた。
いわゆる壁ドンの状態になっていた。
「ちょ、ちょっとあんた……」
「いい?私は今イライラしてんの」
今左手を壁につけているので、右手でこいつの顎をクイッとこちらに向けた。
そして私の口をこいつの耳に近づけて呟いた。
「次やったら……沈めるから」
「ひゃ、ひゃい」
脅しすぎたのか、その場に座り込んでしまった。
クラスメイトも見ていたので私はそそくさと退散した。
〜〜
「華織!大丈夫!?」
「………」
クラスメイトが華織に話しかけていたが返事はない。
「華織……?」
「………明日……百合園さんって呼んでみる!!」
「「「「「………は?」」」」」
華織は頰を赤らめ、目がハートマークになっていた。
第一の被害者である。
〜〜
あの陽キャリーダーを撃退し、下駄箱まで向かうために廊下を歩いていた。
向かう途中、大量の荷物を持っている女子が目に入った。
その女子が———
「おっと……とと、わぁっ!!」
荷物を全て落とし、さらにずっこけていた。
私はイライラしていた。だが今のを見たことでさらにそれが上がった。
「ねぇ……そこのあなた」
「あっ、ご、ごめんない……すぐに片付けますから———」
「違う」
私はその転んでいる女の子に近づき、散らばっているものを拾い始めた。
そう、見ていてすごくイラついた。なぜ一人にこんな大変なことを押し付けたのか。
この子に頼んだ野郎を見てみたいわ。
内心、ずっとイライラしていたがすべて拾い終わり、立ち上がった。
「ほらあんたも立ちなよ。どこ運ぶの」
「え!?でもすごい量あるからわざわざ手伝わなくても……」
「だったら尚更。なんで一人で運ぼうとしたの?周りを頼れ、馬鹿」
「あぅ」
片手でその大量の荷物を持ちながらこの女の子にデコピンをした。
そして図書室まで運ぶと言っていたのでそのまま一緒に向かった。
〜〜
「あ、あの本当にありがとう!」
図書委員会らしく、そのままここに残らなければならないというので私は退散することにした。
「今度から誰か頼ること、一人で全部こなそうだなんて考えないこと。いつか身を滅ぼすわよ」
この子は背が小さいので頭をポンポンとしながら話しかけていた。
「う、うん……」
なんだか顔が赤くなっている気がするが、俯いているのてよく見えなかった。
「じゃ、私はもう帰るから」
後ろは振り向かずに一直線に下駄箱へ向かった。
〜〜
下駄箱で靴に履き替え、私は家に帰っていた。
だがどうやら今日は面倒ごとに巻き込まれる日だったようだ。
「なぁ、ちょっと俺らと遊んでかね?」
「君可愛いねー、どこ住んでんの?」
「俺らが楽しいこと教えるからさぁ」
私ではない。
私の目の前にいる白髪の可愛い女子がナンパにあっていたのだ。
そしてよく見るとそれは聖女様こと、海宝 雫だとわかった。
SPがいつもいた気がしたのだが今はいないようだ。
あー……ほんと、今日は絶賛女の子の日でイライラしてるっていうのになんでさらにストレスが溜まることが起きる……。
ん……?まてよ、ストレス発散……。
私はいいことを思いつき、そいつらに近づき、聖女様を引き離してこちらに抱き寄せた。
「おたくら……この子が嫌がってんのが目に入ってないの……?」
そのまま男ども三人を睨みつけた。
「は?なんだこいつ」
「お、でもなかなか君も可愛いじゃんか」
「どお?君も一緒に」
「ふん、お前らみたいなクソ野郎どもについて行くわけないでしょ。気持ち悪い」
私がそう言うと気持ち悪い笑みをやめ、ムッとした表情でこちらを見てきた。
「お、おいおい……そんなこと言われたらお兄さんたちキレちゃうぞ〜」
「女二人じゃどうもできねぇだろうがよぉ」
「ちょっくら脅すか?」
はぁ……めんどいなぁ。だけど、あと少しかな……。
「あんたらみたいな無駄な場所にだけ筋肉つけて女子にモテモテになろうとする奴らなんかに負けるわけないじゃん?」
私は前髪を手でかきあげ、バカにするような目で見ながらそう言った。
さぁどうくる。
「こんの……ちょっと顔がいいからって調子乗りやがってェェ!」
「危ないっ!!」
男の一人が私めがけて走り出してきた。
そしてそのまま顔を殴ろうとしてきていた。
女子相手に顔面を殴ろうとするとはどうなんだか……。
私は腰を低くし、左手でパシッと手を弾き、右手の指を指の付け根に置くように折りたたんで相手の顎に向かって殴った。
「ガッ……」
だいぶ勢いよく殴りかかってきていたから反動がすごかったようで、そのまま地面に倒れこんだ。
「テメッ……よくも!」
もう二人が私に向かって殴りかかってきた。どうやら男女平等パンチ保持者らしい。
だがすべて避けたり手で弾いたりして全く当たらなかった。
「な、なんで当たらねぇ!」
「どうなってんだ!」
「空手有段者なんで」
二人の動きが遅くなってきたのを確認し、まず一人仕留めようと思った。
ヘロヘロのパンチを軽く避け、そのまま相手の襟を掴んで背負い投げをした。
「う、うわぁっ!?」
そしてそのまま足を高く上げ、かかと落としをしようとしていた。
「こ……紺色———」
「ふんっ!!」
少し強めにしてこの男の腹めがけてかかと落としをした。
私のパンツ見やがって……もう一発行くか?いや、やめとくか。
「あ、相棒!」
「さて、あとはお前だけだ」
私は最後の一人に向かって一歩ずつ近づいた。
「や、やめろ……やめてくれ……!」
「スーー………ふんっ!」
男めがけて駆け出し、そのままみぞおちを殴った。
「ガッ……あ、あ……こ、のヤロゥ……」
まだ元気そうだったので、その場でクルッと回転して脇腹向かって回し蹴りも追加した。
「おぇ……て、テメェ覚えてろぉ……。お前ら、行くぞ……」
気絶していない者が床に転がっているやつらを引きずりながら立ち去った。
よしっ、少しストレス発散できた。
空手の先生からはあまり外で使うなって言われてたけど人助けなら仕方ないよね。
しかもあれ正当防衛だったし。
「あ、あの……ありがとうございます!」
「ん?ああ、どーいたしまして」
汗掻いたから風呂入りたいなぁ。早く帰ろう。
「じゃあ私はもう帰るから」
「ま、待ってください!お礼させて欲しいのですか……」
「いいや、私がただストレス発散……じゃなくて好きでやったことだしいらない」
私はそのままダッシュして帰った。
〜〜
「お嬢様!大丈夫ですか!?」
百合園が走って帰ったすぐ後、スーツを着てサングラスをかけたSP達がやってきた。
「見つけましたわ……」
「み、見つけたとは……?まさか……!」
「ええ、私の殿方が……!」
SPはスッと胸ポケットからスマホを取り出し、電話をしていた。
「もしもし、シェフ。今日の晩ご飯は赤飯でお願いします。えぇ、めでたいことがあったのです」
〜〜
「へっくしっ!!ズズッ……風邪……?」
下校途中、なぜかいきなりくしゃみが出た。
早くあったかいシャワー浴びよう……。
「ただいま」
「お帰りー」
家へ帰ったら一直線に風呂場へ向かい、シャワーを浴びた。
シャワーを浴びる前にトイレに入ったが……。まあ……今日はトマトスープは食べたくないと思った。
その後は何もなく就寝した。
〜〜
朝、カーテンの隙間から太陽の光が差し込んできている。
鳥の囀りも聞こえる……。
実に清々しい朝———
「じゃなぁぁああい!!やっちまったぁああああ!!」
うーわ、やっちまったよ。
クラス一の陽キャに壁ダァン☆からの顎クイ、そして耳元で囁く?少女漫画かよぉ……。
仮に少女漫画だとしても私主人公ポジじゃねぇじゃん。
あと図書委の子にも偉そうな口で言っちゃったし……。
迷惑だったかなぁ……。
最後は令嬢様に舐めた口聞いちゃってたし……。
金と権力で潰されない?大丈夫?
「はぁ……とりあえずいつも通りでいこう……」
だるさは少し残っているけれどだいぶマシになった。
今日はちゃんと髪を結び、メガネをつけて制服もちゃんと着た。
「行ってきまぁす……」
重い足取りで学校まで向かった。
〜〜
教室のすぐ目の前まできた。
大丈夫だろうか……。机に落書きとかされてないかな……。
えぇい!女も度胸!行くぞ!!
教室のドアをガラッと開けるとクラスメイトが一斉にこちらを見てきた。
「うわっ……」
やっぱり昨日目立ちすぎた……。反省だな。慎むべし、慎むべし。
私は自分の席に座ろうとしたのだが、自分の机が他とは全く違うことに気がついた。
なんと……机の上がピカピカだったのだ……!
もう……ピッカピカ!鏡か?ってくらい反射してる。
「な、なんだこれ……新手のいじめ……?」
私が自分の机の前で突っ立っていると、陽キャリーダーこと美澄 華織がいつのまにか近くに立っていた。
「な、何かご用ですか……」
「すー………」
私が問うと、何も答えずに息を吸っていた。
「お……お……」
「お……?」
な、なんだ……?“お前のせいだ”的な?やめて、お姉さん許して。
「お友達になってくれませんか!?」
「———………は?」
何故に?だって私昨日あんなことしちゃってたし。
逆にいじめられるかと思っていたのに……。
「な、何故?」
「ほ、ほら!“まずはお友達から”とか言うじゃないですか!」
「まず……?しかもなんで敬語?」
友達になるかならないかの答えは“ならない”がいい。だって高校ではぼっちを満喫するつもりだったしなぁ。
だが……。
「ダメ……ですか……?」
「うっ……そんな潤んだ目で見ないで……」
こいつ本当にあの華織か……?偽物じゃないのかってほど性格が豹変しているのだが……。
さて、どうしたものか。とりあえず嘘はついていないことはわかる。そういうのを見破るのは得意だからだ。
見破ってもどうするかが問題なんだよ。なんの解決にもなってないよ……。
だがここで断ったら周りからの猛バッシングを受けそうだからなっておくか……。
「まぁ……構わないけれど……」
「本当ですか!?やったぁぁ!!」
私が答えるとガッツポーズをしていた。まあ適当に受け答えしておけばいいだろうと思っていた。
「じゃあなんて呼べばいいでしょうか……百合園さんとかはダメですか!?」
「えぇ……さん付けじゃなくて普通に文乃でいいよ」
「そんな……まだ早すぎるので姉貴と呼ばせてもらいます!!」
姉貴?!な、なんか嫌だ……。だけどめっちゃキラキラした目で見つめてる……。
「はぁ……まあいいや、承諾……」
私はため息をつきながらピッカピカの机がある席へ座った。
まあまだこの子だけだから私の安寧の学園生活は守られ———
「すみません、このクラスに茶髪で琥珀色の目をした超かっこいい女子の方はいらっしゃいますか?」
聖女様こと海宝 雫がいた。
『さようなら、僕はここでおさらばするよ』
『ま、待ってくれ!私の平和な学園生活ぅぅ!!』
やばい……今度こそはやばい。華織は丸く収まったけれどお次はご令嬢様だ。そう上手くはいかないはず……。
いや待てよ……?昨日の私は髪結んでなかったしメガネかけてなかった……。いけるのでは!?
「「「「「じー………」」」」」
クラスメイトが私の方をジッと見つめていた。
完全に忘れていた。昨日クラスメイトにめちゃめちゃ見られていたことを……。
どうする私!どうする!?
そ、そうだ!華織ということにできないか!?
いやこいつ赤髪だったぁぁぁ!!赤髪なら私に麦わら帽子でも授けてくれぇ!そして髪の毛の色を隠させてくれぇ!!
そんなことを考えているうちに聖女様が私のすぐ真横まで来ていた。
「あ、あの……えーっと……人違いではナイデスカナ?」
少し声を高くしてバレないようにした。
クラスメイトがこっちを見ようが本人が否定すればいけるはず!
「ああ、やっぱり!昨日のお人ですね!?」
なんでわかんねん。
だがバレてしまっているのならば仕方がない……謝るか、消されるか……ッ!!
「あの、昨日は本当にすみま———」
「昨日は本当にありがとうございました!旦那様♡」
「「「「「旦那様!?」」」」」
突如聖女様に手を握られ、そんなこと言った。
いや、どゆこと?
「ちょ、待て待て!怒ってないの!?っていうか旦那様でもない!私は女だ!!」
「ふふふ、性別なんて関係ありませんよ?百合園 文乃さん」
「な、なんで私の名前を……」
さらに私の手を握る力が強くなり、顔もずいっと近づけてきた。
「おい、離れろ女狐」
華織が聖女様を私から引き離した。
助かったぁ……。と、思ったのもつかの間。
「あら、なんですの?わたくしと百合園様との時間を邪魔しないでくれます?」
「あんたこそ、あたしと姉貴との時間邪魔されたくないんだけど」
私から離れたはいいものの、二人とも睨み合ってバチバチと火花を散らしていた。
あるぅぇー?どーしてこーなった。
だ、誰か助けてぇ!
「昨日何があったんだ!?」
「華織さんだけでなく聖女様まで……」
「なんなんだあいつは……」
「昨日は別人だったな……」
クラスのみんなからも希有な存在として見れられている気がする!
だめだ!誰も味方がいない!!
私が頭を抱えながら悩んでいると、またも教室の扉が開く音が聞こえた。
「あ、あの!このクラスに茶髪で琥珀色の目をした昨日助けてくれた女の子はいますか!?」
そちらに目を向けると東雲 真雪がいた。
私に追い打ち……いや、オーバーキルをするつもりなのか……?
私がそちらに目を向けないようにしていたのだがなぜかこちらへ近づいて来ていた。
「もしかして昨日の……」
「ヒトチガイダヨ」
「やっぱりそうだ!!」
だからなんでやねん(二回目)。
「昨日は本当に助かったの!だからお礼を言いたかったし……」
気に障っていないようだった。よかったぁ。だが何かもじもじとしていた。
「ぼ、僕とお友達になってくれないかな!!」
僕っ娘……だと……!?属性詰めすぎじゃあないか?
まあいいさ。
「別にいいよ、私は百合園 文乃」
「ぼ、僕は東雲 真雪!」
私たちは握手してお友達となったのであった。先ほどの二人はまだギャアギャアと口論しあっていた。
〜〜
とりあえず授業が始まるので二人には帰ってもらった。
そしてやってきて弁当のお時間。
「姉貴!弁当食いましょう!」
「百合園様お弁当を食べましょう」
「フミちゃんお弁当食べよ!」
三人に言われたので私はいつも弁当を食べいる場所、屋上へ向かうことにした。
「っつーか、なんか一人増えてね?」
「あら、本当ですわ」
二人が真雪ちゃんのことをジィーっと見つめていた。
「僕とフミちゃんはお友達です!」
真雪ちゃんがニヤッと笑うと、私の右腕に抱きつきながらそう言っていた。
そして私の腕が真雪ちゃんの胸に沈んでいた。
まあ羨ましいとは思わない。別に胸が平らってことでもないし、体洗うとき結構めんどくさいからだ。
この悩みは男子にはわからないだろう。
「姉貴!あたしこいつ嫌いです!!」
華織は見事なまな板だった……。
嗚呼、南無阿弥陀……。
そんなこんなで屋上に到着。
私たちはフェンスにもたれかかった。
配置は私が真ん中、右が真雪ちゃん、左が華織、目の前に海宝さんが正座で座っていた。
海宝さんはタオルを持っていたようなのでそれを敷いて座っていた。
「っていうかちょっと蒸し暑い……」
春も終盤で気温が上がってきているので少々蒸し暑かった。
私は結んでいる髪をほどき、昨日のような髪型にした。
「「「お、おお……」」」
「???」
するとなぜか三人がちょっと嬉しそうに驚いていた。
よくわからないが、とりあえず弁当を食べることにした。
「百合園様、はい、あーんです」
「いや……私自分のあるか———もごっ」
海宝さんに無理やり卵焼きを食べさせられた。普通に美味しかった。
「てめぇ……姉貴!あたしのも!!」
「ふ、二人ともずるい!フミちゃん、僕のもあげる!!」
「だから私自分のあるって……」
みんなが弁当の具を渡してこようとしているがそんなにお腹空いていないからいらないのだ。
っていうかみんな卵焼きをばっかり渡すじゃん……。
〜〜
「ふー……ご馳走さま」
みんな自分の弁当を食べ終え、屋上でゆったりとしていた。
「そういえばお二人はどのようにして百合園様と出会ったのですか?」
海宝さんが私以外の二人に質問をしていた。
「あたしは昨日壁ドンされて、顎クイもされて……それに耳元で愛を囁かれた(嘘)のだ!!キャァァ!!」
おい、嘘が混じっていなかったか?
華織は体をくねくねとさせていた。
「なっ……羨ましい……!」
「僕そんなこと言われてない……」
羨ましいとか思うんじゃない……。私は女だ。
「ぼ、僕も昨日出会ったんだよ!一人で荷物を運んでいるときに颯爽と駆けつけてくれてそれで図書室であんなこと(本の整理)とかこんなこと(本の整頓)をしたんだよ!」
「あ、あんなことやこんなことにそんなことだとぉぉ!?」
「そんなことはしてないよ」
真雪ちゃん……嘘はついてないけど語弊が生まれてしまうよ……。
真雪ちゃんの言葉に華織が反応していたが、いちいち説明するの面倒だからいいや。
「ふふふ、皆さんそれだけなのですか?」
「んだと?」
「……?」
海宝さんが口元を手で隠しながら笑っていた。
「わたくしは野蛮な方々に囲まれている最中、腕を引かれて抱き寄せられてしまいましたの。それから一網打尽にしていましたわ」
「「お、おお!!」」
「姉貴そんなに強いんですか!?」
華織が興奮した様子で私に話しかけてきた。
「まあ、一応有段者ではあるよ」
「フミちゃんはなんで強くなったの?ご両親とかがやれって言ったの?」
別に隠したいわけでもないし言うかぁ。
「“なんで強くなったの”……か。それはねぇ、私が傍観者になりたくなかったからだね」
「「「傍観者?」」」
三人は同時に首を傾げていた。
「そ、例えば目の前で犯罪が起きていたとして、自分にすごい勇気があったとする。でも勇気だけあっても救えないものもある。だから私は力をつけようと思ったの」
「いざっていう時に動ける人になりたいんだよね。まあ一言で言うと……“かっこいい未来の自分を作る為”……みたいな?」
私はかけていた眼鏡を外し、ニヤッと笑いながらそう言った。
「か、か……カッケェェ!!姉貴かっこよすぎます!!」
華織は私の腕に抱きついて頰をスリスリと擦り付けていた。
「フミちゃん十分カッコいい……!惚れ直した」
真雪ちゃんは私の手をにぎにぎとしていた。
「ふふふ………」
海宝さんは……。
「なんで婚姻届が胸ポケットに入ってんの!?しかも私の名前書かれてあるし!!」
なぜか私の目の前に婚姻届を差し出してジッとこちらを見つめていた。
いや書かなないし、結婚できないから。アイアムガール、オーケー?
「姉貴、一生ついて行きます!!」
「ぼ、僕も……フミちゃんと一緒がいいな……」
「ささ、旦那様、こちらに印鑑を……」
どうしてこうなった……。
女の子の日にイライラしてたらなぜ女子たちが集まってきたんだぁぁ!!
読んでくれてありがとうございます!
「続き出して欲しい!」ってコメントもらったら考えるかもしれない?
【追記】
連載することにしました!
こちらが連載版のURLです
↓
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