表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夕立ちをやり過ごしたあと

作者: 朝焼 悠

夏の終わり 突然の夕立ち

駅ビルの中から出られなくなる人たち

その中に僕もいて


仕事の話をしているスーツ姿の人や

友達同士ではしゃぐ学生たち

子ども連れの家族とか

ここにいる人たちは皆

輝いて見えて

その眩しさに押しやられる様に

勝手に負い目を感じて

隅の方で小さくなっている

泥人形みたいにくすんだ色をした僕


カフェやブランドショップに食堂とか

どこもかしこも騒がしくて

行くアテを無くした僕は

静かな本屋へと逃げ込んだ

そういえば昔はここが好きだったな

久し振りに思い出す

ここに来ればいつだって新しい冒険に出会えたから


でも今じゃ俯向いて何かを探す振りをしながら

こんな所へ逃げ込んだのは間違いだったと

今更になって舌打ちをしているんだ


ここに並べられている本は

ところ狭しと並べられている数え切れない本は

その分の作者が苦しんで積み重ねたものが

評価をされて形になった

正に汗と涙の結晶だから

少なくても自分のこれまでを

こんな形にできなかった僕は

本屋で妬みや嫉妬に駆られるくらい

落ちぶれているのだと思い知らされるから


ハッピーエンドが好きだった

そうじゃなきゃ意味が無いとさえ思っていた

ただ自分の人生はどうやら

そうではないらしいとの見通しが立ち始めてしまった今

自身の相変わらずの薄っぺらさに

乾いた笑みさえ浮かんで


どうにか夕立ちをやり過ごした僕は

それでも誰もいない部屋へと帰路へ着く

これ以外の道は無かったと そうじゃなきゃ生きられなかったと

今日もペンを握るため

誰にも届かない

何にも響かない

言葉を

それでも綴るため

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ