夕立ちをやり過ごしたあと
夏の終わり 突然の夕立ち
駅ビルの中から出られなくなる人たち
その中に僕もいて
仕事の話をしているスーツ姿の人や
友達同士ではしゃぐ学生たち
子ども連れの家族とか
ここにいる人たちは皆
輝いて見えて
その眩しさに押しやられる様に
勝手に負い目を感じて
隅の方で小さくなっている
泥人形みたいにくすんだ色をした僕
カフェやブランドショップに食堂とか
どこもかしこも騒がしくて
行くアテを無くした僕は
静かな本屋へと逃げ込んだ
そういえば昔はここが好きだったな
久し振りに思い出す
ここに来ればいつだって新しい冒険に出会えたから
でも今じゃ俯向いて何かを探す振りをしながら
こんな所へ逃げ込んだのは間違いだったと
今更になって舌打ちをしているんだ
ここに並べられている本は
ところ狭しと並べられている数え切れない本は
その分の作者が苦しんで積み重ねたものが
評価をされて形になった
正に汗と涙の結晶だから
少なくても自分のこれまでを
こんな形にできなかった僕は
本屋で妬みや嫉妬に駆られるくらい
落ちぶれているのだと思い知らされるから
ハッピーエンドが好きだった
そうじゃなきゃ意味が無いとさえ思っていた
ただ自分の人生はどうやら
そうではないらしいとの見通しが立ち始めてしまった今
自身の相変わらずの薄っぺらさに
乾いた笑みさえ浮かんで
どうにか夕立ちをやり過ごした僕は
それでも誰もいない部屋へと帰路へ着く
これ以外の道は無かったと そうじゃなきゃ生きられなかったと
今日もペンを握るため
誰にも届かない
何にも響かない
言葉を
それでも綴るため