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Face ~どいつもこいつも顔ばっかかよ!!~  作者: 葵 しずく
3章 遅れてきた最後のヒロイン
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episode 17 お悩み相談

「てことがあったんだし。コトはどう思う――ナイス!」

『うーん、まんまラノベ的展開?』

「だよねー。まさかセンセが友達の兄貴とかラノベかって感じだよねぇ……はぁ」


 夕弦の家にお泊りした翌日の夜。いつものFPSにログインして同じようにログインしてたフレンドのコトに夕弦んチで発覚した事をザックリと話した。

 こんな事リアルの知り合いには話せないけど、顔も知らないコトになら話す事ができた。というより、誰かに聞いて欲しかったんだ。


『でもさ、Kokoroちゃんって好きな人いたんだね。――あ、ミスった! そっち行ったよ』

「は? いや、誰も好きとは言ってないし! ただカテキョにバイト仲間の人が友達の兄貴とか、色々と困るじゃん!――おけ! 問題ないし!」

『Kokoroちゃんがお兄さんの事好きとかじゃないんなら、別に困る事なくない?』


 う……確かに。センセの事をただのセンセとかバイト先のパイセンとしか思ってなかったら、友達の兄貴だったとしても別に問題なんてないかも。


『好きじゃないんだよね?――ナイス!』


 コトって基本的に話を聞く側が多い子なんだけど、時々こうして突っ込んでくる時がある。別にそれが気に入らないわけじゃないけど、まるでアーシの心を見透かしてるみたいに感じる事があって慌てさせられる時があんだよね。


「す……」

『え? なに? 聞こえないよ? 電波のせいじゃないよね?――ウゲッ! そんなとこから撃ってくるなぁ!』


 くっ! 今日のコトは何だか声色にワクワク感を感じるのは気のせい!?


「……す、好きだし! そうだし! 好きだし! なんか文句あんの!?――うおっ! あっぶね!」

『あっはっは! 変な日本語ー』

「う、うっさいし!――あ、このスコープ狙いやすいね」


 誰かの事が好きだって言うのって慣れない。いや、正確には初めてなんだけど、夕弦にカマかけられた時も死ぬほど恥ずかしかった。


『そのセンセさんとお友達さんは仲いいの?――でしょでしょ! 何故か人気ないスコープなんだけど、これ神ってると思うんだよね!』

「うん、滅茶苦茶仲いいし。センセなんて完全にシスコン全開って感じなんだよ。――アーシもこれからこれ使うわ」

『へー、それは凄いね。私達みたいな人間にはご馳走じゃん――あれ? 1人落ちてない?』

「達ってなんなん? 達って! アーシはただのゲーマーってだけなんだから一緒にすんなし!――あー負けそうになったら落ちる雑魚っているよなぁ」


  アーシ達はあくまでゲーム仲間ってだけで、他の趣味も同じってわけじゃない。聞いた話だとコトはかなりのラノベ読者みたいだけど、アーシは……ちょっと電子書籍で読む程度だし。


「話逸れたし。でも友達の方は違うと思う」

『違うって……まさか』


 その溜めの作り方なんなん? ホントラノベ読みすぎじゃね?


「本人に確認したわけじゃないけど、友達の兄貴がセンセだって知る前から兄貴の話はよく聞いててさ。そんで、その話をする時の友達って兄貴を自慢するって感じじゃなくて……その――もうちょい!」

『異性として大好きな男の話をしてるみたいだった、と?――、まかせい!』

「まぁ、そんな感じ」

『なるほどねぇ。もしKokoroちゃんの想像通りだったとしたら、それは厄介な事態だね』

「や、やっぱそうなる!? アーシ達友達じゃなくなる!?」

『Kokoroちゃんはセンセさんの事が好きだけど、友達さんとも仲良しでいたいの?』

 

 そうだ。夕弦の気持ちがセンセにあると気付いてから悩んでる理由が、まさにそれだ。

 センセの事は生徒としてとか友達としてじゃなくて、オトコとして好きなんだと思う。

 でも、センセの義妹の夕弦はアーシにとって恩人みたいなオンナで、すっごく大事な友達だ。これからもできればずっと仲良くして欲しいと思ってるのも本音。


「いたい。ずっと友達でいて欲しいって思ってる」

『私も対人関係で悩んで引きこもってきた人間だから偉そうな事は言えないんだけど、それってそれだけ大切な友達と好きな人を奪い合うって事になるんだよ?』


 夕弦とセンセを奪い合う、か。全然ピンとこないし。

 アーシの気持ちを知ってる夕弦はどう思ってんだろ。あれから一緒に朝ごはん食べた時もアーシ達が帰る時も特段変わった様子はなかったけど。


「ねぇ、友達は今どんな気持ちなんだろ」

『それこそ、私にはわかんないよ』

「だよ、ね。アーシさ、もしそうなったら諦めようと思う」

『それ本気で言ってる?』

「……え?」

『Kokoroちゃんがリアルの話してくれたからお返しに私もちょっと話すけど、実は私も友達が好きな人を好きになってライバル関係になってるの』


 これは驚きだ。だって自分で言ってた事だけど、コトは人が苦手で引き籠がちになってこうしてゲームを始めたって言ってたから、絶対にそんな経験ないって思ってた。


「それってどうなったん!? やっぱり絶交とかしたん!?」

『んーん。その友達がね「負けないよ」ってライバル宣言してきたんだけど、それからも変わらず仲良くしてもらってるんだ』

「…………は?――あ、しまった!」


 いやいや! 好きなオトコを取り合う関係なんっしょ!? そんな関係になっても友達して仲良くするなんて有り得んの!?

 信じられんくて思わず死んじゃったじゃん。


『私の目標はね、ししょ……その友達みたいに素敵な女性になる事。でないと好きな人に振り向いて貰えないと思うから――近くにいるからちょい待ち!』


 そんな事ないって言おうとしたけど、よく考えたら顔も知らない関係のアーシがそんな事言っても一ミリの説得力がないから言葉を飲み込んだ。


「そう思えちゃうほど、その友達は格好良くて可愛い人なんだ。私が男なら絶対に放っておかないくらいにね。だから負けないって言われた時嬉しかったんだ」

「嬉しかった? どゆこと? 普通はギスギスすんじゃないん?――サンキュ! 助かったし」


 何度も聞いたことがある言葉。

 女の友情は成立しないって。特にオトコが絡んだら秒で壊れるって。


『そんな事にならないよ。だって、あんなの素敵な人にライバルだって認めて貰えたんだよ? 女としてすごく嬉しかったし、改めてその器の大きさみたいなのが分かって、そんな人の友達やってる自分が誇らしく思えたんだ――どんまい、巻き返すよ!』

「なん? そのオンナ。ヤバくね?」

『ふふ、ヤバいでしょ。でもねKokoroちゃんの話聞いて、その友達もヤバいと思った』


 夕弦がヤバいっていい意味で言ってる事は分かる。分かるけど、アーシの話だけで夕弦の何が分かんのとも思った。


「どうヤバいん?」

『Kokoroちゃんの気持ちを知ってて心中複雑だったはずなのに、一切態度に出さなかったんだよね? それってKokoroちゃんとかもう一人の友達とかじゃなくて、何よりも自分の気持ちをセンセさんに知られたくなかったからだと思うんだよね。まだ高校生だってのに大したもんだよ』

「なんでそこまでして隠す必要があんの?」

『そんなの決まってるじゃん! 友達とセンセさんは既に家族やってるんだよ? 一つ屋根の下に住んでる人に気持ちが伝わったら気まずいなんてもんじゃないでしょ』


 そうだ、そうだった。センセと夕弦の関係を知った時は正直羨ましいって思った。だってセンセと一緒に住んでるとかアーシにすれば毎日がご褒美みたいなもんだし。

 でも、それはあくまで義兄妹としてであって家族の一員としてなんだから、当然センセは夕弦を可愛い義妹としてしか見てない。それって夕弦にとって必ずしも嬉しい事ばかりじゃないはずだ。

 完全な赤の他人なら気持ちを伝えて白黒つければいい事も、義妹として生活している夕弦にとってそんな簡単なものじゃない。


「妹……妹か」

『そんな思いをしてる女の子の相手がKokoroちゃんの相手ってわけだ――うっし! 追い込んだ!』


 コトが言いたいことが分かってきた。

 つまりそれだけの思いを抱えながら恋愛してる夕弦が事情は違うけど、気を許した友達と同じ相手を取り合う事になった友達と被るとこがあるんだ。

 その友達がライバル宣言はしたけど変わらず仲良くしてるのは、きっとコトが遠慮して身を引かなかったから。

 常識的にはそんな関係なんて有り得ないと思うけど、それ以上にお互いがお互いの事を認めてるから成り立ってるんだとしたら、それはきっと友情以上の感情を抱きあってるってこと。


「……つまりそれがコトの思う親友ってわけ?」

『ふふ、どうなんだろうね。Kokoroちゃんはよく知ってる事だけど、私ってボッチになる前にも本当の友達っていなかったんだって知る事はできたんだ』

「それだけその友達との出会いはコトにとっておっきなモンだったんだ」

『うん! だってその人は私にとって師匠みたいな人だから』

 

 友達を師匠と呼ぶのはちょっと理解できないけど、それだけコトの中で大きな変化をもたらせた人だという事なんだろ。

 

 アーシと夕弦はどうなんだろ。

 勿論アーシにとって夕弦は恩人であり、失いたくない気を使わないで本音を話せる友達だと思ってる。

 だけど、それはお互いがお互いの好きな人が誰なのか知る前の話……ううん、違う。少なくともアーシは今だって夕弦の事を同じように思ってる。

 だったら気を使って身を引くなんて、夕弦に失礼だって事になる、のか。


「ん、そだね。アーシが間違ってた。諦めるのは友達の為とか思ってたけど、結局アーシの保身の為だったし」

『うん、Kokoroちゃんなら分かってくれると思ってた。思い切ってリアルの話してよかったよ』


 お互い顔も知らない同士の関係で、勿論何をしてるのかも知らない。今までリアルに触れるような話をしてこなかった。

 それがネット仲間のマナーだから。

だけど、コトには初めてリアルで会ってみたいって思った。


「ね! 話聞いてもらったからかもだけど、コトとリアルで会ってみたいって思った」

『あっはは! 実は私も前から思ってたんだよね』


 そっか、そうだよね。

 顔も知らないただのゲーム仲間にこんだけ踏み込んだ話を聞いてもらいたいって思った時点で、アーシはコトの事をゲームだけの割り切った関係とは見てなかったんだ。

 そして、それはコトも同じだってわけだ。


『でもね? これからわざとらしく会わなくても、自然と会える気がするんだよね』

「なんそれ。ホントラノベの読みすぎじゃね?」

『あっはは、そうかもね! でも可能性はゼロじゃないでしょ?』


 確かに可能性は0じゃないかもしらんけど、いくら狭い島国だっていってもどれだけの人間が住んでるんだって話だし。


(……でも、そういうのアーシも嫌いじゃない)


「宝くじ大当たりするような確率だけど、そういうのいいかもしんない」

『でっしょー! というわけで極小の可能性を掴む為に、今はとどめを刺そうか!』

「おっけ! もらったし!」

『よっしゃー! 勝ったー! 今の相手のアカウント見覚えあって調べたんだけど、結構有名は配信者でこれ生配信してたんだよ』

「え? マジ!? それって――」

『そ! 赤っ恥ってやつ!』

「あははは! マジか! ま、アーシとコトが組めばその程度の相手なんて敵じゃないってね!

『ふふ、そうだね。多分私達のアカウントブロされるんじゃない?』

「それな!」


 オチがついたところで2人して大笑いした。


 そうだ。FPSの対戦一試合する程度で解決するくらいアーシの悩みなんてちっぽけなもんだったんだ。

 でも、アーシが夕弦の事をどう思ってるのかが知れた。そしてそれが自分にとってどれだけ大事な事だってことも、ね。


「ありがと、コト」

『んー? お礼言われる事してないよ。私は女子らしく恋バナしながら敵を撃ってただけだし』

「それでも、だよ。おかげでモヤモヤが晴れたし」

『そ? ならよかったよ』


 やっぱり夕弦と同じくらいアーシにとって大きなウエイトを占めてるコトって子が気になるけど、無理に会ったりしないで極小の可能性の先でホントに出会える事に期待しようと思う。

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