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Face ~どいつもこいつも顔ばっかかよ!!~  作者: 葵 しずく
3章 遅れてきた最後のヒロイン
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episode 15 ラノベじゃないんだから!

 夜中にシャワーを浴びてさっさと寝て、何時もより早起きして夕弦や友達に美味い朝飯を振る舞うつもりだった。

 つまり夕弦の友達と顔を合わせるのは朝皆が起きてきた時だと思ってたんだ。

 

 なのに……なんでこうなった?


 今の俺の現状を説明しようか。

 シャワーを浴び終えて日頃から夕弦に止められているパンイチスタイルで脱衣所から廊下に出たんだけど、それは決して夕弦の言いつけを破ったわけではくて、皆もう寝ているのを確認していたからちょっと羽目を外しただけなんだ。

 だけど、そのちょっとがとんでもない事態を引き起こしてしまった。

 パンイチで出た廊下の先にあるトイレから出てきた女の子とばったり遭遇してしまったのだ。この出くわした女の子が夕弦や紫音さんならまだ良かった。だけどその願いも空しく鉢合わせた女の子はどうやら夕弦の友達だったみたい。

 パンイチスタイルの俺を目の当たりにして大きな悲鳴を上げる女の子。目の前にいきなり半裸の男がいたんだから当然と言えば当然の反応だ。

 そしてその悲鳴にいち早く反応したのが夕弦だ。

 夕弦は稲妻のような速さでリビングのドアを蹴破る勢いで開けたかと思うと、友達と半裸の俺の姿を見て肩を震わせた。きっと約束を破ったうえによりにもよって友達に身内の醜態を晒してしまった事に怒りを覚えたんだろう。

 これまでの事を考えると怒りに震える気持ちも分かるけど、これは誤解……ってわけでもないな、うん。

 だけどこれは事故だと説明しないととんでもない誤解に発展しかねない。

 だが、すかさずこの場の説明をしようとした瞬間、夕弦がとんでもない速さで俺との距離を詰めてきた。

 咄嗟の事であったのと、突っ込んでくる夕弦の目つきがまるで暗殺者のそれに、恐怖で体が動かなくなってしまった。

 手前で夕弦の体がふわりと宙に浮いたかと思うと、次の瞬間4連続で同方向から激しい衝撃が走り、俺は思わず後方に倒れこんだ。

 人って連続で衝撃を受けると無意識に「あべし!」とか言っちゃうんだな、初めて知ったよ。

 更に愛する妹から変態と罵られて激しいショックを受けて立ち上がれなくなった俺に、友達の女の子が心配して声をかけてくれた。

 こんな情けない男に優しい子だなと気丈に振る舞いながら立ち上がった所で、俺の思考が瞬時に停止した。

 それは女の子も同じだったみたいで、停止した思考の中絞り出した言葉が……。


「…………心、か?」

「…………セン、セ?」


 目の前にいる俺のパンイチスタイルを晒してしまった女の子は、よく知る人物――西宮心だった。

 他人の空似を期待したいところだが、女の子も俺の事をセンセと呼んだ時点でその可能性は消滅した。


 なんで生徒である心がウチにいるのか、固まってしまった思考では答えを導く事が出来ない。


「……何で心がここにいんだよ」

「何でって、花火一緒に見ようって夕弦に誘われたからだし。センセこそ何でここにいんの?」

「何でって、ここ俺んちだから」

「「……………………は?」」


 ちょっと待て。夕弦に誘われたって事は夕弦の口からよく出てくる友達の中の1人が心って事か?


 はっはっは! いやいや、そんなラノベみたいな展開現実にあるわけないだろ。世間は狭いってレベルじゃない。


「え? なに? 雅君って心と知り合いなの!?」


 そこに割って入ってきた夕弦の口から心の名が出てきたって事はだ――つまり。


「「えー-------っ!?!?」」


 つまり、だ。夕弦の友達が俺の家庭教師をしている生徒って事になるわけ、だ……。え? それなんてラノベ?


「と、とにかく何時までそんな汚いもの心に見せるつもり!? 早く服着てきて! 心もそんなの見てたら目が腐るから部屋に戻るよ!」

「え? ちょ夕弦!? あ、アーシはセンセのなら汚くなんて……痛い痛い! 分かったから戻るから引っ張んなし!」


 夕弦は顔を真っ赤にして心を無理やり部屋に引っ張っていく。ていうか、汚いものなんて酷くないですかね? 一応シャワー浴びたてだから臭くはないと思うんだけど!?


 因みに他の家族は部屋から出てこなかった。 

 元々防音がしっかりしてる部屋で皆酒飲んでたから眠りが深かったんだろう。紫苑さんは単純に面倒臭がっただけっぽいけど。


「はぁ、やっちまった。朝2人にどんな顔して会えばいいんだよ」


 自業自得とはいえ、やっぱり理不尽さを感じられずにはいられなくて、服を着て部屋に戻った俺は大きなため息と共に誰に聞かせるわけでもなく愚痴を零した。


 まさか心が夕弦の友達だったなんて想像した事もなかったけど、言われてみれば同じ制服を着てた時もあったしフラグはあちこちに立っていたようにも思う。

 別に夕弦と心が繋がっていたからって問題があるわけじゃない。それどころか2人が繋がっている事が分かれば、これからのコミュニケーションを図りやすくなるまである。

 だけど、夕弦が俺と友達を関わらせたくないみたいだったから、実は知り合いでしたって展開は面白くないんじゃないかって心配がある。


 とはいえ、だ。


「……俺にどうしろってんだよ」


☆★


 まさかセンセが夕弦のお兄ちゃんだったなんて、驚いたなんてもんじゃない。こんな事って現実にホントにあるんだって感じだし。

 ホントはすぐにでもセンセの部屋に行って色々と話したいとこなんだけど、さっきから夕弦の機嫌がすこぶる悪い。

 アーシとセンセが繋がっている事に驚くのは分かるんだけど、なんで機嫌が悪くなるのかが分かんない。


「ねぇ、夕弦。なんで怒ってるん?」

「別に怒ってない」

「いや、完全に怒ってるじゃん。アーシがセンセと知り合いだったっての隠してたんなら分かんだけど、ホントに知らなかったんだし」

「だから怒ってないってば! もう夜中なんだから寝るよ。おやすみ!」

「う、うん。おやすみ」


 言って夕弦はすぐにベッドに潜り込んでしまったけど、元々眠れなかったのにセンセが同じ屋根の下で寝てると思ったら……。


(……ますます寝れなくなったんだけど)


 とはいえまた部屋を抜けだしたら今度はアーシが夕弦に怒られそうだから布団に入ってぼんやりと天井を眺めて、何で夕弦が怒ってたのか考えてみる事にした。


 そういえば夕弦からお兄ちゃんの話はよく聞かされてた。

 やれ現役でK大に合格したとか、やれ料理がプロ級で何を食べても美味しいとか、凄く優しくて何時でも私の味方になってくれるとか、センセの事となるとアーシが止めるまでマシンガンみたいに話してたっけ。

 だからさっきセンセの事を蹴ったり酷い事を言うなんて想像もした事なかった。ホントに仲のいい兄妹って感じで一人っ子のアーシには羨ましい関係なんだと思ってたから、さっきはホントに驚いた。


(……ってあれ? ちょっと待って)


 夕弦んチに着いた時気になった事がある。

 意識してたわけじゃないからしっかりとは見てなかったけど、この家の表札って2枚なかった?

 確認したいとこだけど今は無理だし。


 でもアーシの見間違いじゃなかったとしたら……もしかして夕弦の親って再婚だったりする? だから夕弦がウチのガッコに転校してきた――うん、それなら今までの理屈が通る。

 再婚なんて今時珍しくもない事だけど、それは当人の価値観であって子供には当てはまらない事なんだと思う。気にしない子供もいれば、拒否反応を示す子供だっているはずだ。

 この家族を見る限り夕弦が後者だったとは思えないけど、それでも周りにはあまり知られたくないと思っていても不思議じゃない。

 

 (なるほど、だから夕弦はセンセ以外の家族の話をあんまりしてくんなかったのか)


 アーシとは違う意味で家族の話をしたがらなかった理由にあたりを付ける事が出来たところで、それならと別の疑問がアーシの頭の中で浮上した。

 家族の事はあまり話したがらない夕弦だけど、お兄ちゃんであるセンセの事はホントに嬉しそうに話してた。

 何時だったかセンセから妹がいるって話になって、その妹の事が可愛くて仕方がないんだって聞いた事がある。その時はシスコンって馬鹿にしたんだけど、センセと夕弦って苗字が違うから兄妹っていっても血の繋がらない関係という事になる。

 その事を踏まえてお兄ちゃんの話をしてる夕弦を思い返してみると、とても兄を慕っている妹の顔には見えなかった。

 そのうえ、夕弦にはカテキョのセンセの事が気になってる事がバレちゃってる。


 それらを総合的に考えて、なんで夕弦が怒ってたのか考えてみたら一つの解が浮かび上がったのと同時に、アーシは勢いよく状態を起こして背を向けて寝ている夕弦を見た。


「……夕弦がアーシに嫉妬した?」

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