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Face ~どいつもこいつも顔ばっかかよ!!~  作者: 葵 しずく
3章 遅れてきた最後のヒロイン
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episode 12 セレブの豪遊!?

「ここが特等席で花火が見れるらしいバルコニーだよ」

「おぉ! ここはリビングで見た景色より何というか「はは! 人がゴミのようだ」って言いたくなるね」

「……おい」


 ああ……言っちゃったかその台詞。まぁ初めて見た時誰もない事を確認してから、私も言っちゃったけどさ。


「ていうか、『らしい』ってなんだし」

「だって、ここに引っ越してきて1年経ってないから、花火見るの初めてなんだもん」

「……そっか。そういえばそうだったし」

「心?」

「いや、夕弦とこうしてつるむようになって、まだ大して経ってなかったんだなって思って。アーシ的にはずっと前から友達やってたみたいな感覚があって、さ」

「…………」

「なんだし」

「どうしちゃったの!? 今日の心変だよ!? いつもならそんな恥ずかしい事絶対に言わないのに!」

「う、うっさいし! もう絶対に言わねー!」


 思った事を口にしてしまって、どうやら心を怒らせてしまったらしい。でも、ホントに怒ったわけじゃなくて照れ隠しだって分かってるから、全然怖くなんだけどね。


「あっはっは! コントか! にしてもホント広いねぇ」


 私達のコント?を可笑しそうに笑う美咲が改めて我が家のテラスを見渡して、ちょっと呆れ気味の息を零す。

 それには私も同感で、雅君がこのバルコニーの広さと引っ越す前の自分の部屋と同じ広さだって言ってたほどの広さがあるんだから。


 いつもはウッドデッキと小さなテーブルだけだったテラスに、今は人数分の椅子と大きめのテーブル。それに炭火用のBBQコンロにガス式の鉄板コンロが設置してある。これらは朝から太一さんが1人で準備してくれたものだ。

 ここでBBQなんてしていいのかと思ったけれど、お母さんがオーナーに確認していて問題ないそうだ。

 流石高級タワマン、なんでもありみたいだ。


 あと一時間くらいしたらここで大迫力の花火を見ながらBBQで美味しいお肉やお祭りらしくたこ焼きとか食べる。なにそれ、どこのセレブの豪遊ですか!?

 そんな場所で大切な友達と楽しくお喋りしながら花火を見る。絶対に楽しい時間になる……のは分かってるんだけど。


(この場に雅君がいないと思うと、やっぱり寂しいな。遅れても間に合わせるって約束してくれたけど、大丈夫かな……)


 花火が打ちあがる30分前になって太一さんがコンロの炭に火を入れて、熱された網に次々とお肉や食材を乗せていく。

 暫くしてジューといういい音と共に美味しそうな匂いが鼻孔を擽り、お腹が鳴り始めた。

 それは心と美咲も同じ見たいで、さっきまで外の景色を眺めていた2人も今は網で焼かれてる食材から目が離せないみたいだ。


「そろそろ始まるからその前に皆グラス持って」


 焼き終えた食材をそれぞれのお皿に盛りつけて、お母さんが用意した飲み物が入ったグラスを手に持って皆立ち上がると、太一さんが咳払い一つ。


「えー、心ちゃんに美咲ちゃん、今日はよく来てくれたね。食べ物と飲み物は沢山用意したからお腹いっぱい食べて、これから打ち上る花火を楽しんでくれたら嬉しい。それじゃ、かんぱーい!」

「「「「かんぱーい!!」」」」


 太一さん達は喉を鳴らしてビールを美味しそうに飲んで、私達はジュースで喉を潤してから早速お肉にお箸を向けた。


「美味しーい! 口に入れたら秒で溶けたー!」

「うん、美味いし」

「ヤバい! 美味しすぎて食べ過ぎちゃう気しかしないよ!」


 ホントに美味しい! 上等なお肉だからっていうのもあるけど、お外ご飯ってシチュエーションが美味しさを増幅させてるのもあるんだろう。兎に角美味しすぎてお箸が暫く止まりそうにない。


 囲んだテーブルに次々と焼かれた食材が運ばれてくるんだけど、そんな食材達がお皿の上に滞在してる時間なんて一瞬の事で、すぐさま皆のお腹の中に消えていく。

 そんな食欲全開の私達の周囲がまるで昼間のような明るさに包まれたかと思うと、頭の上から…ううん、足元が揺れるような大音量が降り注いできた。

 さっきから止まる気配がなかったお箸をピタリと止めて空を見上げると、目の前にはド迫力の大輪の花が夜空を大いに焦がしていた。

 

 ちかっ! ホントに打ち上げられて色とりどりに弾ける花火との距離が近く感じた。なんなら花火が弾けた瞬間の爆風を見上げている顔にかかった気がするほどだ。

 あまりの衝撃的な景色に私と同様に心と美咲も驚きの色を隠さずに口をポカンと開けたまま固まっている。

 それは特等席で見られると豪語していた太一さん達も例外ではなく、呆気にとられた顔で目の前に広がる非現実的な光景をただ黙ったまま見上げていた。


「……な、なんじゃこりゃー! 私が知ってる花火じゃないんだけど!」

「…………」

「…………」


 何発が打ち上った後ようやく美咲が驚きの声を上げたけど、私と心はまだ意識を花火に奪われたままで何も反応ができなかった。


 色とりどりに咲き乱れる花火は様々に形を変えて、見ている私達の目を楽しませてくれている。そこまでの物なら見た事がある。

 だけど今見上げている物は別物といっていい物だった。

 だって、火薬が爆発して火薬を詰めていた殻が弾け飛ぶのが見える程に距離が近いんだもん。

 

 圧巻という言葉は今使うものだと思う。

 それだけ、今見ている花火は特殊で特別なものだった。


★☆


「くっそー! 何なんだよ、今日は!」


 バイトが終わって店を飛び出した俺は全力で駅に向かって走っている。

 当初の予定ではシフト時間より早めに上げてもらうつもりだった。店に着いてからすぐに人見さんに相談したらフォローしてくれると言ってくれて、予定通りの時間に帰れるはずだった。

 だというのに、バイトがもうすぐ終わる時間になって店に入ってきた客達がどういうわけか俺を指名してきたのだ。

 勿論、そんなサービスは行っていないと同じシフトだった人見さんが断ってくれたんだけど、客は似たようなタイミングで居合わせた他の客達と徒党を組んで抗議してきた。

 これはヤバいと思ったけど俺の勤務時間はすでに過ぎていて、一刻も早く帰りたい気持ちの方が強くて人見さんには悪いけどこのまま帰ってしまうとした時、あまりの我儘ぶりの客達についに人見さんがキレてしまったみたいで荒げた声が店内に響いた。

 慌てて仲裁に入ろうとするマスターの背中を見たらどうしてもこのまま帰る事が出来なくなって、俺もマスターの後を追って2人で仲裁に入ったんだ。


 俺とマスターが何とか仲裁して大事にならないように納めようとしたら、客達に当初の要望通り俺が対応してくれたら許すと言われてしまった。

 こうなれば想像つくだろうけど、マスターにも懸命に頼まれて(時給1.5倍)で結局ラストまで働く羽目になってしまったのだ。

 時給はおいしかったけど、他は全くうまくない。

 責任を感じた人見さんに何度も謝られたけど、そもそも俺が無理を頼んだんだから謝れる筋合いはないのだけど、これで花火に間に合わないのは確実になってしまった。

 

 俺はぷんすかと怒ってる夕弦の顔を想像して背中に冷たい汗を感じつつ、電車を降りてから全力疾走でマンションを目指した。

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[一言] いよいよ出会うのか( ˘ω˘ )
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