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Face ~どいつもこいつも顔ばっかかよ!!~  作者: 葵 しずく
3章 遅れてきた最後のヒロイン
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episode 3 同志であり、良き仲間

「ただいまーって誰もいないんだけど、ふふ」


 今日は楽しい一日だったな。

 師匠と秋葉に行って前々から狙っていたグラボ買って、その後師匠に服を見繕ってもらった。

 お互い想い人が同じだから、こういう場合当然断るのが普通だと思う。

 だけど師匠は当たり前のように真剣に買い物に付き合ってくれて、器の大きさと気持ちの優しさが心に沁みた一日だったんだ。

 本来なら私には不釣り合いなお友達だと思う。

 師匠はとても格好良くて、でも時折見せる仕草や行動がとても可愛くて、私が男なら絶対に放っておかないと言い切れる格好可愛い女性だ。

 そんな人とこうして休日に一日一緒にいれたのはとても凄い事で、最近は2人でモンドールに行くだけだったからあまり意識しなくなってたけど、やっぱり師匠は私にとって特別な人だ。


 師匠と同等の女にならないと月城さんに振り向いてもらえないのは分かってる。だってあんなに素敵な人なんだもん。

 だけど、どうやったら自分がそうなれるのかが分からなかったんだけど……。


「髪……髪型かぁ」


 高校の時クラスメイト達に言われた『気持ち悪い』という言葉。言われた瞬間目の前が真っ暗になって、気が付けば自分の顔が恥ずかしくなって顔を隠せるように髪を伸ばしていた。

 だけど、月城さんも師匠も可愛いって言ってくれた。

 その言葉がお世辞じゃないとしたら、今までの私は何をしていたのだろうか。

 自分の顔が嫌いだと言っていた月城さんの気持ちは分からない。

 だけど、私が自分の顔が嫌いだと思っている理由と違うという事だけは分かってる。

 自分の顔を嫌悪している人が他人の顔を評価する時、思ってもないような事を言ったりしないはずだ。少なくとも私は絶対に言わない。師匠だっていい加減な事を言う人じゃないのは私が一番知ってるつもりだ。

 であれば、こんな私が変われる方法があるとすれば思いっきり髪を切って、自分の顔を周りからよく見えるようにする事なんだと思う。


「そういえば師匠が言ってたお薦めの美容院ってどこにあるんだっけ」


 服を一通り買い揃えた所で師匠がお薦めの美容院を教えてくれた。忘れないようにってトークアプリにショップのURLを送ってくれたっけ。


「あった、これだ――うん、よし! 今度ここに行って思いっきりイメチェンしてみよう!」


 そうだ。何か行動を起こさないと何も変わらないんだ。

 そんな女に月城さんが興味をもってくれるはずがない。


「いい女に私はなる!」


 髪を切るだけで一大決心なんて大袈裟だけど、私は誰もいない部屋で握り拳を作って誓いを立てた。


「その前に、今日GETしたグラボをゲム子ちゃんに組んであげないとね」


 イメチェンも大切な事だけど、それと同じ位に大切にしている事。それがこの自作のゲーミングPCを使ってゲームをする時間だ。

 私は結構なゲーマ―と自覚している。友達すら碌にいない寂しい人間がハマる王道の1つだろう。

 この趣味を恥た事はないけれど、親が必要な分は遠慮なく使えと渡されたクレカの使い道を考えると、申し訳ない気持ちはある。

 だけど、好きになってしまったものは仕方がない。


 私は主にFPSを中心に遊んでいるゲーマーでガジェットもFPSに特化した物を買い集めて、日々世界の強者と撃ち合っている。


「あ! Kokoroちゃんログインしてるじゃん。確かバイト始めるから忙しくなるって言ってたけど、今日は遊べる日なんだね。んじゃ早速メッセージ送って一緒に遊ぼうっと」


 フレンド欄にあるアイコンを開いてメッセージを送ると、お目当てのプレイヤーの声がヘッドホンから聞こえてきた。


「久しぶりだし、コト」

「うん。久しぶりだね、Kokoroちゃん」


 因みに私のハンドルネームは琴美の『コト』と名乗っている。安直かもだけど、割と気に入ってる。


「バイトはどう?」

「んー、まぁボチボチかなぁ。でも慣れない事やってるからストレス溜まるし」

「なるほど。それでここで撃ちまくってストレス発散しようってわけだ」

「ん、そんなとこだし。というわけで付き合ってよね」

「うん! 勿論だよ! あ、私今日とうとうあのグラボ買ったんだよね」

「マジ!? で、どう! やっぱヌルヌル!?」

「まだログインしたばっかりで撃ってないから分かんないから、私の方こそテストバトル付き合ってもらうよ」

「おけ! んじゃ始めようか!」


 Kokoroちゃんとはこのゲームで偶々知り合った。半年くらい前に規模の小さい大会に出場して決勝の相手がKokoroちゃんだったんだ。

 Kokoroちゃんはまだ高校生だというのにかなりレベルの高いプレイヤーで、この規模の大会なら楽勝だと思っていた私をギリギリまで追いつめたプレイヤーだ。

 最終的には何とか勝つ事が出来たけど、ホントに紙一重の勝負だった。

 それからフリープレイで遊んでいる時に偶々Kokoroちゃんを見かけて声をかけたのをきっかけに、今ではこうしてボイチャで話す仲になった。

 Kokoroちゃんは話し方からモロギャルなのはすぐに分かったんだけど、私みたいな人間を見下すような事なんてしないとてもいい子なんだ。


「ふう、ちょいブランクがあったから何回かシクったし」

「あはは、FPSは感覚が空くと思ったように動かせなくなるよねぇ」

「ほんとそれ! 夏休みにみっちりやり込みたいとこなんだけどね」

「バイト始めたもんね。それに家庭教師雇って勉強頑張ってるんでしょ?」

「まーね。親が煩くてさぁ」

「まぁ、どこの親も子供に期待してるんだよ」


 実際に会った事なんてない。というか顔も知らない女の子だけど、遊び歩いているイメージしかないギャルが真面目に勉強に取り組んでる姿を想像すると凄まじいギャップがある。

 だけど、そのギャップがKokoroちゃんの魅力だと思ってる。


「ふあぁ……」

「ふふ、もう眠くなっちゃった?」

「うーん。今日もバイトだったかんね。コトと久しぶりに会えたしガッツリやりたかったけど、そろそろ落ちるわ」

「うん、その方がいいよ。また今度あそぼ」

「ういー。マジごめんねぇ、おやすみコト」

「うん。おやすみ、Kokoroちゃん」


 顔もどこに住んでいるのかも知らない女の子。

 師匠とはまた違うけど、私が唯一遠慮なく接する事が出来る大切な仲間。

 話し方から関東方面の子なのは間違いないだろうから、いつかオフで会うような関係になれたらと密かに思っていたりする。


「kokoroちゃんかぁ。実際に会ったらどんな女の子なんだろう」


 オフで会った時のことを想像して、月城さんに気に入られる為とは別に、彼女に幻滅されない為にも、師匠の言うトータルコーディネートを頑張ろうと、今夜も世界の強者達と銃撃戦を繰り返す私なのであった。


 そんな私の大切な友達というか仲間というか同志みたいな関係のKokoroちゃんが【あの人】と繋がっているなんて、今の私は微塵も想像していなかったんだ。

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