episode・22 モデルチェンジ
梨田さんと別れてK駅前に到着した。
腕時計を見ると丁度18時を指していたけど、駅前周辺を見渡してみても心はまだ来ていないようだった。
大学前の駅だから、学生の姿が多く目に付く。
中高生と違って制服を着てるわけではないけれど、同じ大学生だからか学生とそうでないのは見分けがつく。
そんな学生ばかりの駅前広場に、6人程の男だけの集団が出来ている事に気付く。
男達のニヤける顔を見てナンパでもしてる事は分かった。集団の中心に目を凝らすとやはり7人目の人影があり、もしかしてと目を凝らすと、中心に少し落とした茶色の髪を揺らせている清純派の雰囲気を纏った女の子がいた。
俺が待っている女の子は真逆のタイプだったから、心がナンパされているわけじゃなくてホッとした。
それにしても自分から呼び出して遅刻するとか、わがままお嬢様には困ったものだ。
今日会おうと聞かなかったから沙耶さんに連絡して晩飯作るの代わってもらったってのに、これじゃあ迷惑かけてまで時間を作った俺がバカみたいじゃんか。
はぁと大きな溜息をつきながら、辺りを見渡してみても心の姿は見当たらなくて、未だにナンパ中の集団がいるだけだった。
それにしてもしつこいナンパだなと呆れていると、男を強引に押しのけようとしたのか、集団の間に出来た僅かな隙間からひょっこりと女の子が顔を出した。
てっきり大学生だと思っていたんだけど、見る限りそうは見えなかった。多分、高校生だと思う。
って!高校生相手にあの人数で強引なナンパしてたって事か!?
みっともないなと呆れていると、顔を出した女子高生とバッチリ目が合ってしまった。俺は思わず目を逸らして面倒事に巻き込まれないようにしようとしたんだけど、その子は俺を見るなりムスッとした顔を見せて、隙間から飛び出してズンズンとこちらに向かってくる。
突然の行動だったからだろうか、集団から抜け出した女の子に対してポカンと動きが止まっている男共が物凄く間抜けに見えた。
やがて高校生と思われる女の子が俺の目の前に立ち、睨みつけながら首を傾げるから釣られて俺も首を傾げていると、高校生の女の子がちょいちょいと手で招く。
こっちに来いと言ってるかと思ったけど、もう目の前にいるのにこれ以上近づく事は出来ない。それならこの手の動きは手招きじゃなく、屈めって事なんだろうか。
俺は言われるがまま少し前屈みになると、その女の子は徐に右手で俺の前髪を掻き上げりと、反対の手の指を眼鏡にかけて少しズラした。
その状態の俺の顔を見た女の子は「やっぱセンセじゃん!」と呟いたかと思うと、髪と眼鏡を元に戻して人差し指を俺の胸元に突き刺す。
「ちょっと! アーシが困ってるってのに、何で呑気に遠めで眺めてんだし!」
「……は?」
「は? じゃないし! 普通知り合いがあんな事になってたら、助けに入るっしょ! 普通!」
よく解らんが、何だか物凄くご立腹みたいだぞ? この女子高生は。
「えっと……誰だ?」
言ったとほぼ同時に足の脛に激痛が走り、足元を見ると高校生のつま先が脛にヒットしていた。
「ってぇ!!」
「何すっ惚けてんの!? マジムカつくんだけど!」
「……その汚い言葉使い……もしかして……心……か?」
言うと再び脛に激痛が走った。
「ったぁ!!」
「アーシに決まってんじゃん! あほっ!」
「いや! だってどっから見ても別人だろうが!」
「はぁ!? 髪の色とメイクを変えろってセンセが言ったんじゃんか!」
そういえば言いましたね。
そうか。モンドールの面接って明後日だったっけ。面接の前に俺にチェックさせようとしたんだな。
それにしても、パーマをとってストレートにしたからか、本当に別人にしか見えない。
女の子ってそれだけで、もはや変身したみたいな変わりように唖然とするもの分かって欲しいもんだ。
「おい! その子お前の知り合いか?」
激変した心に意識をもっていかれていると、不意にそう声をかけられて見るとそこにはさっきの集団がいた。
「まぁそうみたいですね」
「とにかく、こっちの話がまだ済んでないから、引っ込んでてもらえねぇかな」
うん。この状況の変化にもナンパ続行するのか。呆れるのを通り越して感心してしまっていると、いつの間にか心が俺の後ろに隠れてしまっていた。
何とかしろって事ですか……はぁ。
「さっきから見てたけど、無理って分かんないんですか?」
「はぁ!? んな事ねぇよ! なぁ!」
男は後ろに隠れている心にそう言うと、心は顔だけヒョコっと出して大きくい息を吸い込む音が聞こえた。
「無理に決まってんじゃん! このがり勉デブ眼鏡!」
ブフッ!!
何てこと言いやがるんだ。思わず堪えきれずに吹き出してしまったじゃないか!
ほらっ!そんな事言うから男共が滅茶苦茶睨んでんじゃん!
「なんだと!? 俺ら天下のK大生なんだぞ!? もう勝ち組決定してんだぞ! それにこいつだって似たようなもんだろ!」
ふむ、確かにそうかもな。こいつががり勉デブ眼鏡なら、俺は根暗眼鏡のツバメの巣ってとこか? え? なにそれ、泣きそうなんだけど……。
「センセもK大だし! それと外見はお前らと別物だし!」
ん? そういえば髪も上げてなくて眼鏡もかけてるのに、何で心は俺だって分かったんだ?




