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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
192/293

傷 192


 ダモクレス・ドルドレッドと名乗った魔族は、ロミオの花弁よって焼かれた顔面に自身の右手を添える。すると、皮膚がただれて紫色の血肉が見えていた顔面は何事もなかったかのように元の姿を取り戻した。


「……無傷に見えるだけ、って事はないわよね?」


 決闘場ランキング五位であるロミオが命を危険に晒してまで与えたダメージ。それが一瞬で消えてしまった光景にアムリテが言葉を漏らす。


ダモクレスはその言葉に反応することなく上空から真下へと急速に降下し、超低空飛行でシャンシャンへと接近する。その両手には失ったはずの二本の長剣が握られていた。


 シャンシャンは魔族に向けて手を鳴らす。すると、魔族の腹部から爆発が起こり、魔族の滑空は少しだけ揺らぐ。だが、魔族は止まることなくシャンシャンへと接近し、両手にした長剣で両肩を切り落とす勢いで振り下ろした。


「アルト・スフィア!」


 シャンシャンの後方にいるアムリテが杖を掲げて魔法を行使する。だが、アムリテの水球が現れるよりも先にシャンシャンは後方へ飛びのき、魔族の長剣から逃れる。


 シャンシャンがいた空間では水球がダモクレスに切り裂かれ、ダモクレスは後方に引いたシャンシャンへと追撃しようと羽を広げる。


 だが、ダモクレスは右側から迫りくる羽を狙った三本の矢の存在に気付き、身を屈めた。


 三本の矢はダモクレスの羽に触れることなく真っ白な壁に突き刺さる。ダモクレスは三本の矢が飛んできた方向に視線を向けると、少し離れた場所から弓を構えているリーナがいた。


 リーナはダモクレスが目線を向けた瞬間に再び三本の矢を放つ。矢を放った直後。次の矢を放つことも、短剣を抜くことも出来ないと判断したダモクレスはリーナへ標的を変更し、右手に握っていた長剣を投げつけた。


 二者によって放たれた三本の矢と一本の長剣。二つの存在は触れ合うことなくすれ違い、それぞれの顔面へと一直線に向かう。


 一度目の矢を避けるために身を屈めていたダモクレスは後方に回避しようと、体を傾ける。だが、体を後方へ傾けた瞬間、背中で爆発が起こり、ダモクレスの体は矢の直線状へと戻される。


 ダモクレスは回避を諦め、顔面の前に右腕を構える。


「っぐ!」


 三本の矢はダモクレスが構えた右腕に深く刺さり、その腕からは紫色をした血液が流れた。


 一方、高速でリーナへと放たれた長剣。矢を放った直後のリーナは回避行動が遅れ、こちらも顔面の前に右腕を構える。右腕を襲う強烈な痛み。それを覚悟していたリーナだったが、それが訪れることはなく、代わりにお尻を床に強打した。


「痛たた……」


 予想だにしない痛み。それはリーナの右足に縛られていた水縄が右足を引っ張ったために訪れた痛みだった。リーナは打ち付けたお尻をさすって立ち上がる。


「感謝しなさい!腕の代わりなら安いでしょ?」


「うん!助かったよ!」


 視線で水縄を辿って行くと、アムリテの足元にたどり着いた。そして、その数秒後にダモクレスが放った長剣は音を立てて真っ白な壁に突き刺さった。


「この矢、いや……。どちらにせよ、腹部より先に腕だな」 


 ダモクレスは右腕に刺さった三本の矢を乱暴に引き抜くと、左手を負傷した箇所に当てる。すると、ダモクレスが全身から放っていた紫色の光は左手へと集まり、再び全身に戻ると右腕の傷は消えていた。


「リーナ、こっちに来るアル」


 シャンシャンはダモクレスから目線を逸らすことなく、展開していたリーナを呼び戻す。


「その矢、何か特別な素材で出来ているアル?」


「ううん、メルモの武器屋で買った普通のだよ」


 リーナの言葉を聞いたシャンシャンは少しだけ考えるような素振りを見せる。


「…目はもう慣れたアル?」


「うん。一対一は追い付けないけど、二対一なら何とかなりそう、かな」


「なら、お願いするネ。アムリテもその調子でお願いアル」


「出し惜しみしても、だしね。全力でサポートするから任せなさい!」


 リーナは鞘から短剣を取り出し、アムリテは自身の周囲に大きな水球を二つ作り出した。


「……その剣。やはりか」


 ダモクレスの言葉は三人に届くことなく、リーナとシャンシャンはダモクレスへと駆け出した。


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