出発 19
「お待たせ!」
リーナは支度を済ませた後、すぐにギルドに戻った。支度と言っても前に買った毒消し草などがそのまま残っていたので、武器や防具の点検だけだ。
「早いね。うちの子はまだ眠ったままだよ」
ミサキは笑いながら、頭の上に乗っているネルの頭を軽く叩いた。
「ミサキさんは重くないの?ネルちゃんがいくら小さいからって…」
普通の子どもくらいの大きさと言っても、数十キロはあるはずだ。それを頭の上に乗せ続づけるというのは想像しただけでも肩がこる、とリーナは思った。
「もう慣れたかな?あと、ミサキでいいよ。ネルのほうも呼び捨てが良いと思うよ」
ミサキは笑いながら、頭を左右に揺さぶる。それでもネルはピタリとも動かず、眠り続けている。
「さて、クエストの話でもしようか。まずは何から話そうかな」
ミサキは淡々とクエスト内容を話し始めた。護衛対象は十人にも及び、移動は馬車。それぞれの役割はネルが御者の隣で、ミサキは一番後ろの馬車。リーナはネルと同じ馬車で対象と一緒に居て欲しいとのこと
だった。
「何かわからないとこはある?」
「あ、クエストとは違うかもだけど、帰りはどうするの?」
「あぁ、帰りも同じ馬車が出るからそれも護衛しながらだね」
確かに、帰りに襲われ馬車などが盗難にあえば大惨事だ。それなら、行き帰りも護衛の中に含めば安心となる。
「他には大丈夫?」
「うん!大丈夫だよ!」
「そっか、なら早速出発しよう!」
ギルドを出た三人は依頼主の団体と合流したのち、馬車に乗って出発した。