同行 出発 181
ヒイロ救出のため、準備を整えにヒイロの控室へと足を運ぶシャンシャンとロミオ。二人が無言のまま控室の扉を開けると、リーナとアムリテが真剣なまなざしで二人を見つめた。
「……これからヒイロのところに行くんだよね?」
シャンシャンはリーナの問いかけに答えることなく、押し黙った。第三者への情報共有が禁止されているわけではないが、真実を話せば、その後の二人の行動が目に見えていたからだ。
「そうだよ。君達も見ていたと思うが、あの魔族のところだ。君達も一緒に行くかい?」
「な、何を言っているアル!?」
ロミオの誘いに驚いたのはシャンシャンだけでなく、リーナとアムリテもだった。
二人は元から断られることを承知で聞いてきたのだろう。
「今回のは遊びじゃないアル!必ずあの魔族かこっちの誰か、あるいは全員が死ぬネ!そんなところに関係な子供を連れて行くなんて────」
「───シャンシャン、僕たちはその子供に負けたんだ。力は十分に証明されている」
「そう言う問題じゃないアル!第一、あれは殺害が禁止されていた……」
「シャンシャンさん、お願いします!私達も連れて行って下さい!」
二人の同行に難色を示すシャンシャン。だが、シャンシャンはその二人が頭を下げる光景に言葉を失った。
「……どうして、命まで賭けるアル?リーナ達にとって、ヒイロはただの友達ネ」
「だからですよ。ヒイロが友達だから助けたい。シャンシャンさん、シャンシャンもそうでしょ?」
リーナの言葉にシャンシャンは再び言葉を失う。
決闘場で最も多くの命を奪ってきたシャンシャン。それは彼女にとって、何らおかしなことではなく、人の命を尊いものだと思ったことはなかった。
しかし、目の前にいる自分の命よりも他人を優先する少女。その少女に、自分も同じだと言われたシャンシャン。それは自分では思ってもいないことだった。
「私、は、ヒイロを……」
自分の中で自分の気持ちを確かめる。それは本能の赴くままに、観客に求められるままに生きてきた彼女にとって初めての事だ。
「シャンシャン、私はヒイロを助けたい。それだけの理由でついて行っちゃだめかな?」
「……命の保証はできないアル。だから、必要になるまでは絶対に戦わないことネ」
それはシャンシャンが二人の同行を許すということだった。
「ありがとうシャンシャン!ロミオさんもよろしくお願いしますね!」
「こちらこそだよ。特に、アムリテ君には期待している。今回のメンバーで唯一、水魔法が使えるからね。バックアップを頼んだよ」
「えぇ。十分に休んだし、魔力も十分だわ。なんなら、あたし一人でもいけそうなくらいに」
その後、四人は支度を整え、オーナーのもとに向かった。
そこでオーナーにリーナとアムリテの事を伝えると、ヨイラの後ろでという条件付きで同行が許され、一同はヒイロのもとへと動き出した。