和解 179
ロミオが魔族の追跡を拒んだ理由をシャンシャンが知ったそのしばらく後に、ロミオがオーナーの私室へと入室してきた。
「遅れてすみません。まだ話は終わってませんか?」
「ちょうど今話そうとしていたんだ。ジュリエット選手の様子は?」
オーナーの問いかけにロミオは一瞬、顔を曇らせるがすぐにオーナーの目を見つめ返す。
「分からない、としか言いようがないですね。こんな状況になったのも初めてで…。ですが、起き上がるのが難しいほどには苦しんでいるので、時間はあまりないかと」
「……そうか。シャンシャン、言うなら今しかないがどうする?」
オーナーに声をかけられたシャンシャンはロミオの前まで歩いて行く。
そして、シャンシャンはロミオの正面で頭を下げた。
ロミオはそんなシャンシャンを不思議だと言った表情で見つめる。
「悪かったアル。ヒイロの事で気が焦ってたのもあって、ジュリエットの事も知らないで一方的に責めたネ。ヒイロの事は任せて、お前はジュリエットの横にいて上げるネ」
ロミオはシャンシャンの謝罪に驚き、目を見開いた。だが、すぐに状況を把握して、口を開いた。
「オーナーから聞いたんだね。……謝罪をするなら僕も同じさ。あの時は僕もジュリエットの事だけしか考えられず、君の気持を考える余裕がなかった。すまない」
ロミオはシャンシャンと同じように謝罪を述べると、続けて言葉を発する。
「それと、ヒイロの救出には僕も同行しよう」
「な、どうしてアル!?人形の事を気にしてるならもちろん、一緒に持って帰ってくるネ!確かに魔族は強かったけど、これだけの人数で行けば……!」
シャンシャンの言葉を遮るようにして、ロミオは首を横に振った。
「これは僕の私怨だよ。大切な人を傷つけられた。それだけで僕はあの魔族に怒っているんだ。案外根に持つタイプだからね、僕の見ていないところで殺されても僕が納得いかないんだ」
「なら、ジュリエットは誰が面倒を見るネ!?」
「それはカルッベラと決闘場のジャッジ数人に頼むよ。カルッベラ、引き受けてくれるね?」
さわやかな、しかし拒否を決して許さない笑みを向けられたカルッベラは舌打ちをした。
「…戦力外かよ。俺だって、ランキング上位勢の一人だぞ?」
「君の強さは知っているさ。だけど、君にとっては状況が悪すぎる。頼まれてくれるね?」
「…あぁ。分かったよ」
カルッベラが返事を返すと同時に床にあおむけで倒れていたオウジンが体を起こした。
「オーナー、そろそろ始めろ。じゃねぇと、俺だけで向かうぞ」
「そうだね。時間も押しているし、本題に入ろう」