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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
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リーナ対ライトクレイル 151


 突如、リーナの耳に入りこんできた声は男性の物であり、その声音はひどく落ち着いていた。だが、その声にリーナは底知れぬ嫌悪感を抱いた。


「ライトクレイル、僕の言葉を信じられなくなったね?こんなこと今まではなかったのに。この試合だけで二回もだ。帰ったらお仕置きが必要かな?」


 リーナの耳に届く声はライトクレイルにも聞こえているようで、ライトクレイルの表情がみるみるうちに青ざめて行く。


 一方、ジャッジと観客たちには男の声が聞こえていないようで、ジャッジはリーナの足に噛みつくライトクレイルをただ見つめているだけだった。


「ほへんなはい!はへほ、ほくはまは…!」


「そうだよね。君はまだ戦えるよね?なら、さっさとその足から口を外して槍を拾いに行きなさい。槍術も教えたはずだよ?覚えているね?」


 ライトクレイルは即座にリーナの足から口を外して、何度も頷いた。そして、ライトクレイルは警戒もせずに一目散に槍を拾い上げに行った。


「さて、魔女よ。うちの可愛い息子をたぶらかすのはやめていただきたいのだが、どうだろうか?」


「……私がいつライトクレイルをたぶらかしたのは分かりませんが、降参をしていただけるならもうライトクレイルに傷をつけることはしません」


「ははは。それはできない相談だね。なぜなら、ライトクレイルは君に負ける要素など一つしかないのだから」


 槍を拾うために離れたライトクレイルにもその声は届いているようで、男が喋るたびにライトクレイルの瞳に闘志が宿って行く。


「精神攻撃で勝つのはあんまりじゃないかな?このトーナメントは出場者の武の力で優劣が決まるべきだ。それをそんな汚い攻撃で終わらせるのは許せないな」


「……どうでもいいですけど、一つだけ聞かせて下さい。あなたはライトクレイルが血を流すたびにあげる悲鳴、こぼれ落ちる涙を見てどうとも思わないんですか?」


「…胸が張り裂けそうになるよ。まるで自分が傷つけられているみたいにね。だからこそ、彼が勝利するたびに僕は自分の事のように喜ぶんだ」


 男の声を聞いたライトクレイルの口角が少しだけ上がり、ニヤける顔を抑えている。


 そのライトクレイルとは対照的にリーナの心は冷え切っていた。


「……そうですか。話は終わりです。これ以上私に話しかけるようなら、ルール違反でライトクレイルを失格にしてもらいますからね?」


「もちろんさ。このまま邪魔をするなんて汚いことはしない。君のような魔女とは違うからね。最後にライトクレイル」


 名前を呼ばれたライトクレイルは肩を震わせて、恐らく男がいるであろう観客席を見つめた。


「頑張るんだよ。何としてでもずる賢い魔女に勝って、優勝するんだ。そうすれば誰もが君を蔑まず、痛めつけられなくなる。これまでの努力が報われるらね」


「う、うん!俺、魔女に勝つ!もう絶対に騙されない!もう誰も信用しない!父さん!俺を見ててくれ!」


 その言葉を最後に、プツンと言う音が鳴って男からの声が聞こえることはなくなった。


「ライトクレイル、私からかける言葉も最後だから一つだけ教えてね?あの人と一緒にいて心の底から笑えたことはあった?嬉しくて楽しくて、自然と笑顔になったことを覚えてる?」


「俺がどっかの大会で優勝したときは笑ってくれた!俺がどっかの犯罪者を捕まえた時も笑ってくれた!おれはその笑顔で笑えた!俺が頑張れば笑ってくれる!だから、お前に勝つ!」


 それ以上話すことはない、そう言うかのようにしてライトクレイルが槍を構えてリーナへと走り出した。


「……答えられちゃうんだ。そっか…」


 ライトクレイルの瞳を見て、ライトクレイルの言葉を聞いたリーナは何かを諦めたかのように小さく息を吐くと、長剣を最小限の力で構える。ライトクレイルはそんなリーナを見て、走りながら槍を突き出した。


 槍を持っていながらもライトクレイルの速度は健在であり、その速度で槍が体に刺されば致命傷は間違いないだろう。


 しかし、リーナはその襲い来る槍先に剣先を当てて、軌道を逸らそうとする。だが、ライトクレイルは槍に更なる力を加えて、無理矢理にリーナの胸を突き刺そうと逸れる槍先を修正した。


 そんな槍の力を感じたリーナは、逸らすことを諦め、剣先を槍の上に乗せると、そのまま跳躍して槍の遠心力に体を乗せた。


「何!?」


 ライトクレイルはリーナの身軽さに驚き、慌てて槍を制止する。そこでリーナはライトクレイルが持つ槍を足裏で蹴り飛ばし、ライトクレイルの首に目かけて長剣の柄を思い切り叩きつけた。


 その長剣が放つ打撃を首に受けたライトクレイルは硬直したまま、痙攣を始めた。


「ジャッジさん、これは私の勝ちになりますか?それとも、この状態から横にしないとダメですか?」


「選手の意識がなくなった場合は、三秒のカウントを取らせていただきます。そこでも反応が無ければ、

リーナ選手の勝ちとなります。三」


「二」


「一」



「それでは、この勝負をリーナ選手の勝利とさせていただきます!」


 リーナの勝利に観客席から大きな歓声が沸き上がるが、リーナはその歓声を気にすることはなく、控室にいるシャンシャンを手招きした。


 リーナに呼ばれたシャンシャンはすぐさま、戦闘場に降り立った。


「すみませんが、ライトクレイルをお願いします」


「それはいいアルけど、リーナはどうするネ?」


「私は少しだけ用事ができたので。それではお願いしますね」



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