他愛ない会話 15
リーナは支度を済ませた後、約束の五分くらい前にギルドの前に着いた。すると、そこには立ちながら本を読んでいるパーツの姿があった。
「早いねー!待たせないようにって思ってきたんだけど」
「いえ、待つことには慣れているので大丈夫ですよ。それより、何が食べたいですか?」
パーツはリーナの方を向くと、しおりを挟み、本を閉じた。
「ガッツリ系で!あ、でもお肉は最近食べたからなぁ…」
「ガッツリ…。なら、ラーメンなどはどうでしょう?」
ラーメンという言葉にリーナは首をひねる。魔界とここの食文化は全く異なる進歩をしているようだ。
「パスタならわかりますか?」
「うん!よく、故郷の方でも食べたよ!」
「簡単に言えば、あの麺を熱いスープと一緒に食べるものです」
「なんだかおいしそうだね!そこに行こう!」
「では、案内しますね」
リーナは昔、ゼペットに教えてもらった鼻歌を口ずさみ、パーツのうしろを歩く。ホーンラビットの時のような緊張感はなく、むしろ新しい料理を食べられるという好奇心に心が踊っている。
「着きました。ここが王国で一番人気のラーメン屋です」
一番人気というだけあって、店の前には行列が作られていた。リーナは王国に来てから、初めてこんなに
人が並んでいるのを見た。
「すごい人だね…」
「他の店に行きますか?ここ以外にもラーメン屋はありますが」
「ううん、ここにしよう!これだけ並んでるなら、絶対美味しいよ!」
そう言ってリーナとパーツは列の最後尾に並んだ。店の中から何人も入っては出て行ってるので、回転はしているようだ。
「そういえば、パーツ君が冒険者になった理由、私はすごくカッコいいと思ったよ」
「え?」
急な話題にパーツは気の抜けた声を出す。
「すべてを知りたいってことは人の意見や偏見に流されたくないってことでしょ?それって何かを決めるにはとても重要だと思うから」
「は、はぁ…」
リーナは自分の目的と重なるとこがあるからか、言葉に熱意がこもった。
「すべてを知るってことは全てを決められるってことなんだよ!」
「全てを決める…。意味はよく分かりませんが、ありがとうございます」
パーツの口元が微かに緩む。リーナは初めて見たパーツの笑顔にうれしくなり、自分も笑う。
「リーナさんは、不思議な人ですね。こんな僕にここまで優しくしてくれるなんて」
「そうかな?そう思うのはきっと、パーツ君が優しい人だからだよ」
他愛ない会話をしているうちに、二人は店の席に座り初めてのラーメンを堪能して店を後にした。