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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
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Aグループ準決勝(アムリテ対オウジン)138


 Aグループ準決勝、アムリテ対オウジンの決闘が行われる戦闘場は昨日にオウジンが破壊した壁の崩壊が治っていた。オウジンの大量の血液が付着していた床も綺麗になっており、リーナとアムリテは復旧の速さに驚いた。


「決闘場の壁や床は砕かれた魔石が埋め込まれているので、魔力を流せば元の形に戻るんですよ。汚れは水魔法を得意とする方が担当してますね」


 驚くリーナとアムリテに説明をするヒイロ。その服装はこれまでのラフな様子とは違い、髪の赤色が映える白い衣装で統一されていた。


 その姿を朝に見たリーナは特に気にすることも無く、似合ってると言って褒めるだけだった。その反応にヒイロは少しだけ呆気に取られていた。


「アムリテ、頑張ってね」


 トーナメントの本選が決まってから幾度となく声援を送ってきたリーナは、準決勝という大事な局面に挑むアムリテに端的な言葉を送った。


 それはリーナがアムリテを信頼し、信用しているからこそだった。しかし、それとは関係なく、リーナは不安を感じていた。


「…無茶はしないわ。ありがとね」


「うん」


 そんなリーナの心境を察してからアムリテはリーナの小刻み震えていた手をぎゅっと握り締めて、その重なった手を自身のおでこへとくっつける。


 リーナも同じようにしてその手の甲におでこを当てた。


「それじゃあね、行ってくるわ」


 数秒間という時間にしてみればわずかな時間だったが、二人の中から不安は消え去り、覚悟を決めることができたアムリテは戦闘場に続く通路へと歩き出した。


 その背中を見送るリーナの背後にいたヒイロがゆっくりと歩み寄ってきた。


「ごめんねヒイロ。私だけ応援しちゃって」


「そんな、私もアムリテさんは勝ってくれると思ってますので」


 アムリテが通路の角を曲がり、二人の視界から消えるのを見届けた二人は戦闘場を見下ろすことのできる控室へと足を進めた。




 アムリテとオウジンの決闘を今か今かと待ちわびる戦闘場はあいにくの曇り模様だが、そんなことを感じさせないほどに観客の熱気は高まっていた。


「えー、皆さま大変長らくお待たせいたしました!それでは、Aグループ準決勝、アムリテ選手対オウジン選手の決闘を開始いたします!」


 ジャッジの宣言が上がると、アムリテとオウジンが戦闘場の両端からほぼ同時に登場した。アムリテが手にしている武器はこの大会で一番多く扱った分銅鎖であり、対するオウジンは彼の小指サイズに見えてしまう短剣だった。


 ジャッジは二人の解説をしようと息を吸いこむが、アムリテとオウジンはそんなジャッジを気にすることなく、正面に近づいて向かい合った。


「……お前、姉がいるな?」


「そんなことあんたに関係ないでしょ。さっさと始めるわよ?」


 身長が倍はあろうかというほど大きなオウジンと対面してもアムリテに怯む様子は見られない。


「で、では、早速開始してください!」


 二人の間に立たされたジャッジは実況を諦め、早々に開始を告げる。


 アムリテは持っていた分銅鎖の魔石が装飾されている分銅部分を握り締め、即座に二つの水球を作り上げた。そして、アムリテは流れるように魔石へと魔力を流し込むと、二つの水球をオウジンの胸板めがけ撃ち放った。


 近距離から放たれた水球をオウジンは回避することができず、仁王立ちの状態で水球を受けた。しかし、オウジンはその衝撃を受け止め、右の拳で二つの水球を貫く。


 貫かれた水球は白い煙を上げて、宙へと消えて行ってしまった。


「あんたも魔法が使えるのね。あたしの水球が蒸発したのを見ると、火の系統かしら?」


「………」


 オウジンがアムリテに言葉を返すことはなく、アムリテへと一歩を踏み出した。


 アムリテはすぐさまオウジンから距離を取る。その最中もオウジンに背を向けることはなく、小さな水球をいくつも飛ばしている。


 しかし、どの水球も効果を発揮することはなく、オウジンの胸板当たっては消えていく。


「…本気でやれ。でなければ殺すぞ?」


「なら、お望み通り本気で殺してあげるわよ!」


 アムリテは分銅を握り締め、魔力を流し込む。握り締める手の間から光が漏れだすほどの魔力が魔石に注がれると、次の瞬間、アムリテの背後にオウジンを飲む込むほどの大きな水球が現れた。


「溺死しなさい!」


 アムリテは分銅を握り締めている右腕を振り上げると、ゆっくりとオウジンに向かって振り下ろした。


「これが本気なら拍子抜けも良いとこだ」


 オウジンは吐き捨てるように言葉を放つと、手にしていた短剣で自分の指先を切り裂いた。その指先から血液があふれ出すと、オウジンはその血液を短剣に塗り、水球へと投げつけた。


 小さな短剣が水球の中に入る。誰もが無駄な行為だと思ったそれは、直後、大きな音を立てて水球を蒸発させたのだ。


「そんな!?あの量の水をあんな小さな短剣で!?」


 驚愕しているアムリテの正面ではオウジンが腕を赤く光らせ、待機していた。


「まっ────」


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