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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
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タネ明かし 137


 Aグループ準々決勝、アムリテ対ミレア、オウジン対デルタの決闘が終わり、集まった観客は席を立って帰宅していく。


 夜も深いためか決闘場に残る者はおらず、最後の観客が決闘場から出て行くと、戦闘場を照らしていた魔石の光が消えた。


 そんな中、戦闘場から見える一部屋にはいまだ明かりが灯っていた。ヒイロたちがいる控室だ。

「つまり、デルタ選手は初めから複数の仲間を戦闘場に忍び込ませていたんだね?だからこそ、絶えることなくあの練度の分身が作れたわけだ」


 違和感の多かった決闘と超が付く高級料理を終えたヒイロたちは、シャンシャンの入れたお茶を口にしていた。


「そういう事ですね。完璧に近い分身を作り出すには誰であっても多少の時間は必要とします。ですが、それが複数人いるならば、一人が動かしている間に時間を稼げます」


「タネが分かればシンプルなイカサマネ。今までも何人かやっていたけど、どうして今回は誰も気づかなかったアル?」


 今まで行われてきたトーナメントでも同じ戦法を使おうと企んだものは複数いた。しかし、そのすべてはランキング上位勢や魔法の察知に長けたジャッジが看破できていたのだ。


 だが、今回の決闘では誰一人として気付くことなく、オウジンが勝利していなければただのすごい魔法、で終わっていたことだろう。


「おそらくですが、夜が関係しているんだと思います」


「夜?」


 ヒイロの言葉に控室にいる全ての者が頸をかしげた。


「はい。デルタ選手もそうでしたが、あの人たちは陰に紛れやすい黒い服装でした。もちろん、それだけでは見つかるのは時間の問題です。しかし、あの人たちが見つからなかったのはもう二つほど」


 ヒイロは右手の人差し指と中指を立てる。その指にロミオたちの視線が集まる。


「一つは人数にあります。いくら練度の高い分身を作り続けると言っても、七人という人数は多すぎます。おそらくですが、四人が分身を作り出し、あとの三人が他の人たちを隠蔽することに専念していたんだと思います。そうなれば、気付かれる可能性は低くなります」


「…隠蔽魔法だけに専念、か。確かに魔法を得意とする者がそれだけに全力を注げば、見つけるのは容易ではないだろう」


 これまで複数で戦おうとしていた者たちは一人が正面から戦い、他の人間は隠蔽を使いながら背後から魔法や物理攻撃をしていた。二つの魔法を同時に扱う。それはもちろん容易なことではなく、二流がそれに挑めばそこにはもちろん綻びが生まれる。


 そのため、ランキング上位勢や魔法を看破できるものがその場にいれば、すぐに暴くことができたのだ。


 しかし、今回の決闘では自分と他者を隠蔽する。それだけに専念すれば二流でも一流が扱う隠蔽魔法と大差が生まれなくなるのだ。


「さらにもう一つ。オウジン選手への攻撃方法にもバレない要素が含まれています」


 ヒイロは立てていた二本の指の一本を折り曲げた。


「彼らは自身が直接魔法や武器を持って攻撃するのではなく、分身を作りったうえでその分身にのみ攻撃をさせていました。そのため、攻撃方向は分身が行う一点のみになり、誰も周囲に目を向けなくなったんです」


「なるほど、通りで気付けなかったわけだ。完璧な隠蔽魔法を流し見で見破れる人なんてそうそういない。僕らが気付けなかったのも無理のない話だったんだね。ところで、ヒイロ、もう一つだけ聞いてもいいかな?」


 ロミオの更なる質問を聞くためにヒイロはロミオの目を見つめた。


「どうして、デルタ選手が命の危機に晒されてもても助けると言っていたのに、オウジン選手に殺された彼らを助けなかったのかな?」


「……だって、彼らはここの選手でもなければ、単なる被害者って訳でもないので」


 そう言い放ったヒイロの目は何の感情も抱いておらず、ただ当たり前のことを話しているようだった。


 こうして無限に復活するデルタの謎が解かれ、疑問が解決したヒイロ達も観客と同じようにその場を去って行った。




 翌朝、固まったままのミレアを休憩室に運んだジャッジが休憩室に訪れると、そこにミレアの姿はなく、決闘の時間になってもミレアが姿を現すことはなかった。


 その結果、アムリテは不戦勝という形になり、次の決闘はアムリテ対オウジンという事が決定した。


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