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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
136/293

Aグループ準々決勝(オウジン,決着) 136 


「その顔は何か分かったという様子だね?説明をお願いできるかな?」

 疑問が解けたことで気が緩んだのか、ヒイロの表情が変化したことに気付いたロミオはヒイロに説明を要求した。


「デルタ選手はどうして、あそこまで殺されておきながら感覚を開けることなく攻撃できるのか。それは幻覚によるものなのか、分身なのか。それとも僕がまだ知らない魔法があるのかな?」


 ヒイロは首を横に振り、少しだけ笑みを受かべる。


「ロミオさんもよく知る魔法ですよ。知識としては知らない人の方が少ないほどです」


「……やはり、幻覚か分身なんだね?なら、どうやってこれほど高精度なものを…」

「それは見ていればわかりますよ。オウジン選手も気づいたと思いますので、この決闘はオウジンさんの勝利で終わります」


 未だ続くオウジンとデルタの決闘を見つめるヒイロが浮かべる笑顔を見たロミオは、その笑顔がなぜか嬉しそうに見えた。




 腕の風圧のみで死に追いやられたデルタは再びオウジンの頭頂部に現れる。

しかし、それを予知していたかのようにオウジンは現れると同時に、デルタの頭部を握り拳をぶつけることで亡き者へと変えた。


「グルアアアア!」


 オウジンは頭の上で崩れる死体の服を掴み取ると、何もない決闘場の壁へと投げつけた。


「ぎゃ────」


 すると、死体と壁がぶつかるタイミングに再びデルタの声とは全く異なった女性の声がその場から発せられた。


 オウジンが死体を投げつけた周囲にいた観客もその謎の声を聞いた様子で、ざわざわと近くで観戦する者に話しかけている。


「今の声は!?いえ、それよりもオウジン選手の身体能力が飛躍的に上がっております!何やら素肌も黒く変色しており、心なしか体も大きくなったように見えます!」


 戦闘場から退出する通路に避難しているジャッジは、思い出したかのようにマイクを口にして現状を観客へ伝える。


 その実況が終わると同時くらいに戦闘場の壁が生み出す影からデルタがぬるりと現れた。


「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 一方のオウジンはそのデルタを見つけると、大きな咆哮を上げた。そして、オウジンはそのまま誰もいない真横の壁に向かって走り出した。


「おおっと!?オウジン選手、どうしたのでしょうか!?デルタ選手がいる方向とは明後日の方向に走り出しました!」


 オウジンはそのまま壁に腕ごと差し込むと、戦闘場の壁をえぐりながら戦闘場を取り囲むようにして走り出した。


 そのオウジンにデルタは反応することなく棒立ちしたままで、迫るオウジンの腕に飲み込まれてしまった。


オウジンが戦闘場をえぐりながら一周するまでにかかった時間は数十秒ほどだったが、その間にデルタが現れることはなかった。それはこの決闘が始まって以来、初めての事だった。


 壁をえぐられた戦闘場にはオウジンがただ一人立っているだけであり、デルタの姿はない。その状況が数分続いたところで、ジャッジが声を上げた。


「…えー、どうやらデルタ選手の姿が確認できませんので、これより十秒のカウントを取らせていただきます。その間にデルタ選手が現れなければ、オウジン選手の勝利となります」


 そのジャッジの声はオウジンに届いていないのか、オウジンはただ一点、戦闘場の中央をじっと見つめている。その手は自身の血液を保有していた。


「十、九、八、七、ろ────」


「────待った」


 ジャッジが六秒目のカウントを取ろうとしたところで、どこからともなくデルタの声が発せられた。次に、デルタの姿が陽炎のように揺れながら戦闘場中央に出現した。


「きさ────」


「────グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 オウジンにしゃべりかけようとデルタが口を開いた瞬間、オウジンは手にしていた血液を揺れ動くデルタへと投げつけた。


 その血液は分裂することなくデルタに直撃すると、強い閃光と爆音をならして大きな爆発を上げた。


 その光と音が落ち着いたころに観客とジャッジが目を開けると、そこには驚愕の光景が広がっていた。


「こ、これは…!何という事でしょうか!今までオウジン選手とデルタ選手が戦っていた戦闘場に複数の人間が倒れています!」


 爆発が収まった戦闘場には複数の男女が倒れており、その一人一人がデルタの着ていた服と同じ服を身にまとっていた。


「これは、一体…」


「君、マイクを渡してくれないかな?」


 状況が理解できていないジャッジに声をかけたのは決闘場のオーナーだった。


「ど、どうぞ!」


 オーナーを見たジャッジはすぐにマイクを引き渡し、戦闘場の端へと走って行く。


「お集まりの皆様も混乱されていることでしょう!私、決闘場オーナがジャッジに代わり状況をご説明させていただきます」


 オーナーの言葉に観客が耳を傾ける中、オウジンは倒れている集団を一瞥すると、戦闘場の通路へと向かって歩き出した。


「まずは今回の決闘の勝敗につきまして。勝者はオウジン選手となります!」


 その言葉に観客席からまばらな拍手が送られる。


「今回の決闘は非常にイレギュラーな事態が起こりましたが、簡単に説明させていただきますと、デルタ選手は仲間を戦闘場に待機させ、仲間と協力してオウジン選手と戦っていたことになります。しかし、オウジン選手はそれを正面から打ち破り、見事勝利したのです!」


 そこまで説明されたことで観客の大部分は大まかに事態を理解することができた様子で声を漏らした。


「詳しい解説は翌日にさせていただきますが、もう一度、不正を正面から打ち破ったオウジン選手に大きな拍手を!」


 オウジンに向けられた拍手はその日一番の拍手であったが、オウジンは反応することなく通路の奥へと消えて行った。


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