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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
126/293

第三試合(アムリテ)開幕 126


「Aグループ準々決勝、最初の決闘はこれまで凄まじいほどの魔法を見せつけ、ロミオ選手、チャギアン選手を突破してきましたアムリテ選手対華麗なる身のこなしで決闘場を舞うかのようにして戦ってきましたランキング十位、ミレア選手です!」


 ジャッジの合図で戦闘場の端から同時に現れた二人に観客が大きな歓声を上げる。


 現れたアムリテが手にしている武器はリーナの得意とする短剣であった。


「これは運が良いね。短剣は槍や鎌みたいに持つことに体力を使わない」


「そうですね!相手のミレアさんは…」


 リーナは控室からミレアへと目を走らせ、ミレアが手にする武器を見つめた。


「あ!ミレアさん、弓を持ってます!ここで得意な武器を引くなんて…」


 ミレアが手にしていた武器はミレアが得意としている弓であり、その背には大量の矢が筒に入って背負われていた。


「まずいね…。彼女の決闘は一度見ただけだが、軽やかな身のこなしで相手の攻撃を避けながら、確実に急所に当てるほどの腕前だ。一瞬の油断が命取りになるだろう…」




 アムリテは戦闘場に上がると、不思議と落ち着いた感情で自分の中で流れる魔力を感じ取れていた。それは、魔力量を確認すると共に、今すぐにでも魔法を使えるようになるほど正確な物だった。


「相手は弓…。初動で観客のジュースやら飲み物をかっさらえば、中に入ってる氷で十分防げる」


 アムリテは興奮することなく、決闘が始まってからの動きを考え始めた。


「えー、それでは、決闘を始める前に一つ。聞いてはいると思いますが、観客の皆様のために。アムリテ選手、観客の皆様が持っているお飲み物を魔法で操るのは禁止となりますので、ご注意ください」


「……はぁ!?」


予想外の言葉にアムリテは声を上げた。最初から練っていた作戦が使えなくなったのだ。


 アムリテの声に続くようにして、一部の観客からブーイングが起こる。見れば、ブーイングを起こしている観客の横には大きな器がいくつも用意されており、その中には水が表面張力を起こすほど入れられていた。


「ちょ、そんなの聞いてないけど!?」




「あ、言い忘れてた!」


 ジャッジの言葉を聞いたリーナはオーナーから頼まれた伝言を思い出し、声を上げた。


「そういえば…。私もすっかり忘れていました。アムリテさん、起きた後、すぐに行ってしまったので…」


「まぁ、もう過ぎたことは仕方ない。アムリテ君には悪いけどね」




「え?第二試合が終わった直後にオーナーが伝えたはずですが…。とにかく、観客の皆様の持ち物を無断で使用するのはおやめください」


 ジャッジは厳しくアムリテの顔の前で人差し指を立てる。その断固な様子にアムリテは飲み物を操作することを諦めた。


「残念でしたねぇ。私もできれば本気のあなたと戦いたかったのですがぁ…」


 ミレアは顔に手を当てて、困ったような表情を浮かべた。


「これは決定事項ですので。それでは、開始いたしますのでお二人とも準備をお願いします」


「準備って…。いつでもどうぞ」


「私もいけますぅ。始めてくださいぃ」


 二人がある程度の距離を取ったのを確認したジャッジは高らかに腕を空へと向けた。


「それではAグループ準々決勝、アムリテ選手対ミレア選手、決闘を開始いたします!」


 ジャッジが高らかにあげる宣言と共に腕が振り降ろされる。


 アムリテは短剣に装飾されている魔石に魔力を流し、ミレア三本の矢を弓に構えた。


「あらぁ?水の球や水の矢は出さないんですかぁ?」


 ミレアは一戦目、二戦目とは違うアムリテの様子に疑問を抱いた。


 一戦目、二戦目ではアムリテは開幕と共に水を周囲に浮遊させ、それをメインとして戦っていた。しかし、今回の決闘ではアムリテは魔石を光らせるだけで、水を一滴たりとも出していないのだ。


「もしかして、魔力切れですかぁ?残念ですぅ」


「さっきから残念、残念うるさいわね。言葉のレパートリーが残念なんじゃないの?」


「そんなぁ、ひどいですぅ。傷ついたので少しだけ痛い目を見てくださいぃ」


 ミレアは三本の矢がセットされている弓の弦を力いっぱいに引いて、アムリテへと放った。放たれた矢の速度は想像以上に早く、アムリテが回避行動をとる前に、アムリテの両肩と左足の太ももへと直撃した。


「っぐ!」


 アムリテは声を押し殺し、痛みに耐える。しかし、服の下から血が滲みだし、アムリテが立つ床は真っ赤な血液が数滴ついていた。


「あらぁ?本当に魔力切れのご様子ですねぇ?そのまま膝をつけばこれ以上痛い思いをせずに済みまょ?」


「っは!冗談!魔力切れなら開始の合図で降参してるわよ」


 アムリテは自身の肩に深々と刺さる三本の矢を引き抜き、床へと投げ捨てた。


 その際に大量の血があふれ出し、アムリテの足元には小さく、真っ赤な水たまりができていた。


「……策在り、なんですねぇ。なら、安心して戦えますぅ」


「相手に策があるのに安心するなんて、とんだ変態ね。串刺しにしてあげるから、むせび泣きなさい!」


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