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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
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本選第一試合 アムリテ対ロミオ 117


 シャンシャンとジュリエットが戦っていた時間は十分にも満たないものだったが、観客の興奮は相当なものとなっていた。


「シャンシャンさんって、やっぱり強いんだね。私って相当運良かったんだ…」


「今回の決闘はランキングに影響がないので、ジュリエットさんは奥の手を隠してましたね。そうなれば、シャンシャンに分がありました」


 シャンシャンが今回の決闘やリーナとの予選で見せた技は全て音の振動を利用したもので、ジュリエットは人形の綿や人形本体を動かしていた。


 つまり、ジュリエットは多くの技を幅広く使えるということだ。それをしなかったのは、勝ったところで得るものが少ないと言う理由だろう。


「それでもリーナさんがシャンシャンに勝ったのは事実です!ランキング上位勢とも十分に戦えるので、胸を張ってくださいね!」


「そうだね。シャンシャンさんにも優勝、って言われたからね!」


 リーナは拳を握り締めて気を引き締めた。


 すると、リーナ達が入っている部屋の扉が数回ノックされた。


「失礼します。アムリテ選手、Aグループの選手は控室までお願いします。Bグループの方はおそらく翌日となりますので、ゆっくりご鑑賞ください」


「分かった。すぐに行くわ」


 アムリテはコップに入った一杯の水を飲み干すと、椅子から立ち上がった。


「さて、まずは初戦を突破しないとね!二人とも応援しててよ?」


「うん!勝ったら野宿とおさらばだからね!でも、危なくなったら降参だよ!」


「アムリテさん、頑張ってください!あ、あと魔力が通るのは杖だけじゃない、って覚えててください!」


 ヒイロの言葉にアムリテが聞き返そうとすると、迎えに来たジャッジがアムリテを呼ぶ。


「アムリテ選手、案内いたしますのでお早めにお願いします」


「えぇ。それじゃ、行ってくるわね!」


 アムリテはヒイロに聞き返すことができず、手短に別れを告げた。


「ヒイロ、アムリテに言ってたのって?」


「昔、トーナメントで魔法を使っていた人が言ってたことなんですけど…。それに気付ければアムリテさんの優勝も夢じゃありません」



 

 アムリテが部屋を離れてから数試合が行われ、一時間ほどしたころにジャッジからアムリテの名前が呼ばれた。


「続いてはアムリテ選手対ロミオ選手です!ロミオ選手は言わずと知れたランキング五位の選手!妻であられるジュリエット選手は惜しくも敗北しましたが、その無念を晴らすのでしょうか!?」


 ジャッジの説明と共にロミオが戦闘場に上がると、観客席にいる女性から大きな歓声が上がる。


「ランキング五位!?いきなりそんな人に当たるなんて、大丈夫かなアムリテ…?」


「どうでしょう…?ロミオさんは剣術の使い手ですが、引いた武器はレイピアの様ですね」


 戦闘場に立つロミオの手にはアッシュが使っていたようなレイピアが握られていた。


「アムリテさんが杖を引くか、言葉の意味に気付けばチャンスはあるかと…」


 チャンスはある、そう言うヒイロの表情は明るい物ではなく、アムリテの苦戦する姿が目に見えているようだった。


「対するアムリテ選手は冒険者であり、予選を無傷で突破したとの情報が入っています。戦闘スタイルは見てからのお楽しみで!」


 ジャッジがロミオの出てきた通路とは反対方向にある通路に腕をまわすと、その奥からアムリテがゆっくりと歩いてきた。


 その手にはアムリテの身長を超す槍が握られており、アムリテは槍の先を引きずっていた。


「よりによって槍なんて…。斧とかハンマーよりはましだけど…!」


 リーナから見えるアムリテは半ば勝負を諦めているかのように見えた。


「くじ引きの結果は両選手を見てもらえばわかる通り、槍とレイピアとなっております。さぁ、どのような決闘を見せてくれるのでしょうか!?それでは、開始!」


 ジャッジの合図と同時にアムリテは槍を投げ捨てて、自身の上空に二つの水球を生み出した。水球の一つはロミオの頭部を飲み込めるほどの。もう一つは小さな手の平に収まるほどの小さな水球だ。


「それが君の魔法かい?ずいぶんとシンプルだね」


 レイピアを片手に持つロミオは余裕の笑みを浮かべて、アムリテに話しかける。


「はん!魔法は変にいじるよりも五大魔法が一番強いのよ!その中でも水は一番手強いから油断しないことね!」


 アムリテは腕を振ることで、小さな水球をロミオの元へと飛ばした。その速度は水矢よりも早く、ハタアラシなどの動物なら仕留められる威力を秘めていた。


「確かに水は切れないし、防いでも危険性はあるだろう。だけど、見えてるのなら避ければ良いだけさ」


 ロミオは高速で向かってくる水球の上を高く飛び跳ねることで回避した。


「甘いわよ!」


 アムリテはロミオを素通りした水球に魔力を送り、水球の進行方向を過ぎ去ったロミオの元へと向かわせる。


 ロミオは高く飛び跳ねたことにより、まだ宙に足が浮いている。その状態では水球を避けることは不可能だ。


「甘いのはジュリエットが作るお菓子だけでいいっよ」


 突如、ロミオは水球が戻ってくるのを知っていたかのように体を捻らせた。そして、ロミオは手にしたレイピアを振り降ろすことで水球を二つに引き裂いた。


「水は柔らかいからね。剣じゃなくても対処しやすいのさ」


 ロミオはそのまま体を回転させて地面へと着地する。その蝶のような動きに観客の女性達から大きな声援が上がった。


「かっこつけてる暇があったらせめて水球か対戦相手を見ときなさい!」


 アムリテは二つに裂かれた水球に魔力を送り、二つの半球が地面に落ちるのを止めた。そして、半球は重なり合うことで再び一つの水球となった。


 アムリテは休むことなく、その水球に更なる魔力を送ることでロミオへの追撃を計る。


 しかし、その追撃もロミオは読んでいたかのように体を逸らすことで水球を避けると、自身の前を過ぎ去ろうとする水球を今度は四等分に切り裂いた。


「僕の視界はいつだってジュリエットしか映らない。あとは僕たちを引き立てるだけの演出だよ」


 ロミオはレイピアに付いた水滴を払うと、鋭い目線でアムリテを睨みつけた。


 その視線にあてられたアムリテは自身の頬を伝う冷や汗に気付いていなかった。



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