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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
114/293

三戦目(アムリテ) 114


「「「ウオォォォオ!」」」


 ジャッジが決闘の勝敗を告げると、ノノの後ろにいた男たちが一斉に声を上げた。


「みんな、ごめんね…。私、実は戦ったことなくて…」


「最高にかっこよかったよ!俺、ノノちゃんのこと本気で好きになった!」


「ノノちゃん!過去最高に輝いてたよ!」


「ノノたそ、今回の決闘からノノたその訓練内容を考えましたのでぜひぜひ!」


 決闘を終えたノノを待ち構えていたのは、本人が想像していたような失望の眼差しではなく、尊敬や憧れ、これからのノノへの期待に溢れたものだった。


「……みんな」


 ノノは声を震わせて、目に涙を浮かべる。


「私はよくわからないけど、応援してくれる人たちはノノさんの笑顔が見たいんじゃないかなって」


「…ですね」


 ノノは大きく深呼吸をして呼吸を整える。その顔から涙は消え、眩しいほどの笑顔が咲いていた。


「今回は負けちゃったけど、次があったら絶対勝からね!歌と踊り、それに加えて決闘も頑張るからこれからも応援よろしくー!」


「「「ウオォォォオ!」」」


 ノノは笑顔で戦闘場を降りると、男たちはノノを取り囲むようにして移動を始めた。


「あ、リーナさん。ううん、リーナちゃん、色々ありがとう!トーナメント応援してるね!」


「うん!ノノちゃんも頑張ってね!」


 ノノはリーナに別れの挨拶をすると、男たちを引き連れてそのまま決闘場の外へと出て行った。


「あれ、何だったの…?」


 ノノを見届けたリーナが戦闘場から降りると、アムリテがノノたちが消えていったの方角を見ていた。


「分からないけど、ノノちゃんはすごくかわいかったし、かっこよかったよね!?」


「そ、そうね…。何はともあれ、本選出場おめでとう」


「ありがと。次はアムリテだね。少しくらい無理してよ?」


「普通は無理するな、でしょうが…。まぁ、ミネトラに怒られるくらいには頑張るわ」


 アムリテは手の平を振って戦闘場へと上がって行く。


「次、あたしよね?さっさとくじ引いていいかしら?」


「くじは相手選手が上がってからにしてください。すぐに呼びますのでお待ちを」


 ジャッジは手にしたマイクから声を出して対戦相手の名を呼んだ。


「リブロー選手、対戦場に上がってください」


 ジャッジが対戦相手の名を呼ぶと、決闘場の床がドスンドスンという重い音が聞こえてきた。


「はいはい。もう私の番なのかい?ったく、階段が小さくて上がるのも一苦労だよ」


 地ならしを起こしながら戦闘場へと上がってきたのは、アムリテの三倍、いや四倍はあろうかというほど体格の良い人間だった。


「いや、体格がいいって言うか太ってるのもありそうだけど…」


「ああん!?」


 アムリテの小さな独り言をリブローは聞き取ったのか、アムリテへと顔を近づけた。


「こんな子供が私の対戦相手かい?っは!こりゃあ、一回戦は余裕だね!」


「っは!贅肉は武器扱いされなかったのね!どうせならそぎ落として来ればよかったのに!」


 アムリテはリブローに怯むことなく、皮肉を口にする。


「それではくじを引いてください。アムリテ選手も分銅鎖は使わないと言うことでよろしいですか?」


「えぇ。悪いけど私から引かせてもらうわよ。待ってたんだから譲りなさい」


「好きにするといいね!それで大外れを引いて泣いてな!」


 アムリテはリブローの言葉を意に介さず、速足でくじに近づいて手早く一枚を引いた。


「入り口が小さいね!指先しか入らないじゃないか!」


 アムリテがくじを引いた後にリブローも続けて引こうとするが、リブローの手はくじよりも圧倒的に大きく、小指だけをくじの中に入れていた。


「では指定された武器を取ってきてください」


 アムリテは紙に書かれた武器を取るために戦闘場を降りる。すると、アムリテの方を心配そうに見つめているリーナに気が付いた。


 アムリテはリーナを安心させるように右の親指を突き立てる。その様子にリーナは表情を明るくした。


「ここにきて杖が渡されるなんてね。できれば一戦目で欲しかったわ」


 アムリテが引いたくじには杖、と書かれていた。それは魔法使いであるアムリテが最も得意とする武器だった。


 アムリテは数本ある杖に魔力を流し、気に入った杖と手にして戦闘場へと戻る。


「おいジャッジ!なんだいこの武器はまるでおもちゃじゃないか!」


 同じく戦闘場に戻ってきたリブローが手にしていた武器は大きな鉈だったが、リブローが持つと、それは子供のおもちゃのように小さく見えた。


「こんなのでどう戦えと言うんだよ!?」


「選手の体格差を埋めるためにも武器の大きさは決められています。武器を使わずに、素手で戦うこともできますので臨機応変に対応してください」


 リブローの抗議はジャッジに一蹴されて終わった。


「それではアムリテ選手対リブローの選手の決闘を始めます。なお、アムリテ選手はこれが三戦目となりますので、勝てば本選出場です。それでは、始め!」


「うおおおおお!」


 決闘が始まると同時にリブローは鉈を放り投げて、アムリテへと直進してきた。


「あたしに杖がなかったらやばかったかもね。だけど、これさえあれば何の問題もないのよ!」


 アムリテは杖に魔力を流し始める。魔力の流れる杖は淡い水色に輝き、周囲の気温を少しずつ下げていく。


「アルト・スフィア!」


 杖に魔力を流し終えたアムリテは水色に発光する杖をリブローへと振りかざした。


「うおおお…、ごぼごぼごぼごぼ!?」


 突如、リブローの頭部全てを覆いつくすほどの大きな水球が現れ、リブローの頭は水球に飲み込まれてしまった。


「ごぼごぼごぼごぼ!?」


 リブローは水球から逃れようと、何度も水球に爪を立てるが、水球の形が崩れることない。


 次第にリブローの動きは小さくなっていき、とうとう膝をついた。


「勝者、アムリテ選手!」


 ジャッジが勝敗を告げる。それを聞いたアムリテはすぐさま水球を解除した。


 水球から逃れ、息のできるようになったリブローは荒い呼吸を繰り返して、目を真っ赤にしていた。


「ハァ、ハァ……殺してやる!」


 リブローは決闘が終わったにも関わらず、アムリテへと向かって直進を始めた。


「はぁ…。何度やっても────」


 アムリテがため息をついて、再び水球を作り出そうとすると戦闘場に小さな人影が飛んできた。


 その人影は直進するリブローの頬へと飛び蹴りを当てる。見た目からは到底効果のあるように思えなかったが、飛び蹴りを受けたリブローは盛大に吹き飛び、床に激突して気を失っていた。


「ありがとねヒイロ」


「いえいえ。アムリテさんもリーナさんも本選出場、おめでとうございます!」


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