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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
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似たもの同士 111


 決闘を終えたリーナとシャンシャンは戦闘場から降り、改めて顔を合わせていた。


「ほんっとうにすまなかったアル!いつも、興奮状態にならないようにしてたけど、決闘場のルールに慣れ過ぎて緩んでたアル!」


 シャンシャンは手を頭の上で叩いて、リーナに謝罪する。リーナはシャンシャンとの決闘を思い出し、その音にびくりと体を震わせた。


「シャンシャンさんも悪気があったわけじゃないみたいですし、顔を上げてください」


「多分だけど、その時の私は殺意しか無かったアルよ?」


「………と、とにかく!誰も死ななかったのでいいじゃないですか!」


 リーナの後ろで決闘を観ていた者も医者によると、数週間で聞こえるレベルには回復するとのことだ。興奮状態になったシャンシャンが盛大にならした音も、ひどい症状が嘔吐だけだったので大事にはなっていなかった。


「ところで、私の耳と矢、それに矢を爆発させたのって風って言うか、空気を操る魔法ってことで合ってますか?」


 リーナは決闘中、何度も窮地に立たされた謎の爆発について、自分の考えを話す。


「んー。近いアル。正確には空気の振動アルネ」


「空気の振動、ですか?」


 聞きなれない言葉にリーナは首をかしげる。


「手を叩くときに生まれる振動を増幅させたりして、目標にぶつける。そうすることで相手を傷つける魔法アル。だから、私が手を叩く速度以上には連発できないネ」


 実際、シャンシャンの魔法が高速で使えるものならば、リーナが手を叩くよりも先にシャンシャンの魔法が発動していただろう。


「あ、あと、シャンシャンさんって決闘場の選手だったんですか?ヒイロとも知り合いみたいですし」


「あれ、ヒイロ、話してないアル?実はヒイロと私は────」


 リーナの問いに答えようとしたシャンシャンの口を、ヒイロは背後から手で抑えつけた。


「シャンシャンは決闘場ランキングで四位なんですよ!つまり、シャンシャンに勝ったリーナさんは決闘場で四番目に強いことになりますね!」


「詳しくは知らないけど、決闘場って普段のルールだと相手を殺してもいいんだよね?なら、シャンシャンさんより私の方が強いとは言えないかな。」


「そうアル!だけど、私に勝ったのも事実アル!だから、私に恥をかかせないためにもリーナは頑張って優勝するアル!」


 ヒイロの拘束から逃れたシャンシャンは、名もない冒険者に負けたというレッテルを治すためにリーナに優勝を要求する。そうすれば、シャンシャンが負けたのも仕方ない、となる考えだった。


「まぁ、そのためにはヒイロを────」


「あ、リーナさん!アムリテさんの試合が始まりますよ!私は少ししてから行くので、先に行ってて下さい!」


 ヒイロが指さす方向ではアムリテとその対戦相手であろう女性が戦闘場に上がっていた。


「うん!先に行ってるね!シャンシャンさんも、ありがとうございました!」


 リーナはアムリテを応援すべく、シャンシャンに短い礼を告げてその場から立ち去った。


「ヒイロ、どうして王者だってこと、隠すアル?リーナは良い子アル。教えても驚くだけアルよ?」


「そんなこと分かってますよ。けど、どうせ驚くなら最高の場面で驚いて欲しいんです」


 そう話すヒイロには笑みが宿っていた。


「小さいくせに意外とSっ気が強いアルネ…。ま、私はヒイロが戦うのを楽しみにしてるアル。あ、でもBETはリーナにするネ」


「まぁ、私に賭けても知れてますしね。あと、Sっ気って何ですか?」


「喉が渇いたから何か買ってくるアル。じゃあネ」


「あ、ちょっと…。Sっ気…?癖毛みたいな…?いや、違いますね…」



「アムリテー!頑張ってー!」


 戦闘場に上がったアムリテに応援を飛ばしたのは、右の耳を庇うようにして巻かれた包帯をしたリーナだった。どうやら、戦いの傷は思っていたよりも軽傷のようだ。


「それではくじを引いてください」


 ジャッジが出すくじを引こうとアムリテは一歩前に出てくじに手を伸ばす。すると、相手選手も同じように手を伸ばしたため。くじの入り口で二人の手がぶつかる。


「………」


「………」


 お互いはくじを引くのを譲ろうとせずに無理矢理、中に手を入れる。


 すると、くじの入り口が広がり、二人の手がくじの中へと同時に入った。二人はくじの中にある無数の紙の中から一枚を決めて、手を抜こうとする。


 しかし、そのタイミングも重なり、二人の手は再びつっかえてしまった。


「ぐぬぬぬぬ…!」


「ううううう…!」


 二人は強引に腕を引いてくじから紙を引き抜こうとする。すると、入れた時と同様にくじは口を少し広げた。


「「抜けた!」」


 二人がくじから抜いた手は、同じ一枚の紙を掴んでいた。


「どちらのくじといたしましょうか?運営としてはどちらでも構いません」


 ジャッジは二人の光景に呆れたのか、興味なさげな声で判断を催促した。


 二人は互いを睨み合うと、紙の端を両手で持ち、引っ張り合いを始めた。


「ぐぬぬぬぬ…!」


「ううううう…!」


 二方向に引っ張られる紙はその力に耐えきることができずに、紙はちぎれてしまった。


 二人は引いていた反動で戦闘場の床にしりもちをついた。


「では、紙の武器はアクラ選手の物となります」


「なんでよ!?私も紙は持ってるじゃない!ほ、ら…」


 アムリテはジャッジの判断に異議を申し立てようとしたが、自身の手の中にある紙を見て言葉を失っていった。


 手の中にある紙はあまりにも小さかったのだ。それは長方形をした紙ではなく、三角形をした風が吹けば飛んで行きそうなほどの紙屑だった。


「アムリテ選手、引き直しいたしますか?」


「いいわよ!一回戦で使ったのが使えるんでしょ!?あれを使うわ!」


「ふふん。おこちゃま」


 アクラは勝ち誇ったような笑みを浮かべてアムリテを見下した。アムリテはその顔を見て、はらわたが煮えくり返るの意味を知った。


「絶対に勝ってやるわ!三回戦の事も本選の事も知ったこっちゃない!」


 アムリテは決闘の開始前から魔力を高めて、勝利を心の中に決める。


「大丈夫かなアムリテ…。冷静になってくれればいいんだけど…」



話数がゾロ目!!

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